![]() | きつねのおきゃくさま (創作えほん) あまん きみこ 二俣 英五郎 サンリード 1984-08-20 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
絵本に出て来る擬人化された動物たちの多くは、
自然界のセオリーを無視した行動をとる。
年少向けの絵本では、あっけらかんと
肉食動物が本来獲物であるはずの小動物と仲良く暮らす様子が描かれる。
それが、だんだんと対象年齢が上がり、作品の内容が複雑化するにつれ、
「この物語はフィクションです。」の免罪符のもとに、
あえてその生物学上のタブーを逆手にとったドラマが好んで描かれる。
捕食者と被食者が奇跡の友情を育んだり、
たまさかの疑似家族、果ては禁断の疑似恋愛・・なんでもござれだ。
それがぱっと見には絵的に無理が無いように見えてしまうのは
所謂擬人化マジックのなせる技なのだろうが、
私はむしろ、人間こそがこういった弱肉強食のルールには
シビアな生き物だと思っている所為か、
基本的にこのあざとさに生理的な気持ち悪さを感じてしまう。
この件については
過去のエントリーで散々述べたので詳細は割愛するが、
これら自然界の法則をガン無視もしくは妄用する絵本の中にも
なぜか私が妙に気に入ってしまう作品があり、
今日はその一冊を紹介しようと思う。
今日の絵本、「きつねのおきゃくさま」は
小学校低学年向けの国語の教科書にも採り上げられる、
いわばお上のお墨付きの日本の名作童話である。
時間の無い人の為にそのストーリーを雑に説明すると
「獲物にするはずの小動物におだてられていい気になったキツネが
調子に乗って彼らを守る為に狼と闘って死んでしまい、
残された者達が墓に手を合わせ涙を流す」
という素晴らしく分かり易い悲劇である。
まさに正当派御涙頂戴物語ともいえそうなこの作品に、
私としたことが、まんまと一読で号泣させられてしまった。
なんだか悔しくなってその理由を探ろうと
険しい顔で最初から順番にページをめくり直していくと、
とあるページであっけなく私の涙腺は再び決壊した。
そのばん。
きつねは、はずかしそうに わらって しんだ。
・・・・・
カ、カッコつけたまま死んでんじゃねーよ!
ううう、こんなお約束展開にまんまと泣かされるなんて。
バカヤロー、おまえのせいだー!!
しかしここで私は、気付いたのである。
私がこの作品に心を鷲掴みされた理由を。
この物語は、決して、ファンタジーの世界にしかいない
現実離れした心優しいきつねの物語ではない。
むしろこのきつねは、私やあなたと同様、
弱くてずるくて自信の無い、器の小さい奴だ。
そいつが、恐らく生まれて初めて、
赤の他人に手放しで褒められ、
無条件に信頼され、
その思いがけない快感にハマってしまったのだ。
それまでの半生で散々周囲に疎まれ嫌われて
孤独に生きて来た彼にとって、
それはきっと、普通の食事で食欲を満たす以上の
麻薬並みに中毒性のある快感だったのだろう。
そして、その快感の絶頂で、彼は死んだ。
遠のく意識の中、身体中の痛みを遥かに超える
エンドルフィンの多幸感に包まれながら、
依存性の高い麻薬に負けて、
ついには本能まで差し出した
愚かな自分に恥じ入りながら・・。
とまあ、相変わらず個人的な経験に基づく
妄想の色眼鏡越しにこの作品を鑑賞してしまった私は
ただただ、どうしようもなく、
この馬鹿丸出しのきつねが愛おしく思えたのだった。
でもって、こんなことをドヤ顔で書いちゃってる
自分が猛烈に恥ずかしくなってきたので
今日のブログはこれにて終わりっ。
とっぴんぱらりの ぷう。
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