2014年09月25日

死に至る幸福感

きつねのおきゃくさま (創作えほん)きつねのおきゃくさま (創作えほん)
あまん きみこ 二俣 英五郎

サンリード 1984-08-20

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絵本に出て来る擬人化された動物たちの多くは、
自然界のセオリーを無視した行動をとる。
年少向けの絵本では、あっけらかんと
肉食動物が本来獲物であるはずの小動物と仲良く暮らす様子が描かれる。
それが、だんだんと対象年齢が上がり、作品の内容が複雑化するにつれ、
「この物語はフィクションです。」の免罪符のもとに、
あえてその生物学上のタブーを逆手にとったドラマが好んで描かれる。
捕食者と被食者が奇跡の友情を育んだり、
たまさかの疑似家族、果ては禁断の疑似恋愛・・なんでもござれだ。

それがぱっと見には絵的に無理が無いように見えてしまうのは
所謂擬人化マジックのなせる技なのだろうが、
私はむしろ、人間こそがこういった弱肉強食のルールには
シビアな生き物だと思っている所為か、
基本的にこのあざとさに生理的な気持ち悪さを感じてしまう。
この件については
過去のエントリー
で散々述べたので詳細は割愛するが、
これら自然界の法則をガン無視もしくは妄用する絵本の中にも
なぜか私が妙に気に入ってしまう作品があり、
今日はその一冊を紹介しようと思う。


今日の絵本、「きつねのおきゃくさま」は
小学校低学年向けの国語の教科書にも採り上げられる、
いわばお上のお墨付きの日本の名作童話である。
時間の無い人の為にそのストーリーを雑に説明すると

「獲物にするはずの小動物におだてられていい気になったキツネが
調子に乗って彼らを守る為に狼と闘って死んでしまい、
残された者達が墓に手を合わせ涙を流す」


という素晴らしく分かり易い悲劇である。

まさに正当派御涙頂戴物語ともいえそうなこの作品に、
私としたことが、まんまと一読で号泣させられてしまった。
なんだか悔しくなってその理由を探ろうと
険しい顔で最初から順番にページをめくり直していくと、
とあるページであっけなく私の涙腺は再び決壊した。

そのばん。
きつねは、はずかしそうに わらって しんだ。


・・・・・

カ、カッコつけたまま死んでんじゃねーよ!

ううう、こんなお約束展開にまんまと泣かされるなんて。
バカヤロー、おまえのせいだー!!

しかしここで私は、気付いたのである。
私がこの作品に心を鷲掴みされた理由を。

この物語は、決して、ファンタジーの世界にしかいない
現実離れした心優しいきつねの物語ではない。
むしろこのきつねは、私やあなたと同様、
弱くてずるくて自信の無い、器の小さい奴だ。
そいつが、恐らく生まれて初めて、
赤の他人に手放しで褒められ、
無条件に信頼され、
その思いがけない快感にハマってしまったのだ。

それまでの半生で散々周囲に疎まれ嫌われて
孤独に生きて来た彼にとって、
それはきっと、普通の食事で食欲を満たす以上の
麻薬並みに中毒性のある快感だったのだろう。
そして、その快感の絶頂で、彼は死んだ。
遠のく意識の中、身体中の痛みを遥かに超える
エンドルフィンの多幸感に包まれながら、
依存性の高い麻薬に負けて、
ついには本能まで差し出した
愚かな自分に恥じ入りながら・・。

とまあ、相変わらず個人的な経験に基づく
妄想の色眼鏡越しにこの作品を鑑賞してしまった私は
ただただ、どうしようもなく、
この馬鹿丸出しのきつねが愛おしく思えたのだった。

でもって、こんなことをドヤ顔で書いちゃってる
自分が猛烈に恥ずかしくなってきたので
今日のブログはこれにて終わりっ。
とっぴんぱらりの ぷう。

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posted by えほんうるふ at 08:14 | Comment(2) | TrackBack(0) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月17日

その愛の先にあるもの

あくたれラルフあくたれラルフ
ジャック・ガントス作 ニコール・ルーベル絵
いしい ももこ訳

童話館出版 1995-01

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時々、ネットの掲示板などで
「こんな彼氏とは別れた方がいいでしょうか・・?」という相談を見かける。
詳しい内容を読むと、相手の男はきまって金や女にだらしなかったり、
高確率で兼ね備える要素がモラハラだのDVだのストーカーじみた束縛だの、
別れる別れないを悩む以前に「いったいこの男のどこが良いんだ?」と思えてならない
どうしようもないダメンズだったりする。
当然ながら、相談者に対する読者からのコメントは一様に「別れろ」であり、
そのまま「そもそもどこがいいんだ?」といった疑問を投げかける人も少なくない。

そしてまた、これに対する相談者の返答がまた、一様に
「でもいいところもある」「でもやさしい人なんです」と相手の男を庇うのである。
「○○の問題さえなければ、とてもいい人なんです」というのもよくあるパターン。
たとえその○○が人の道を外れることだとしても、その矛盾に彼女は気付かない。
そして、どんなに親身なアドバイスをもらっても、結局なかなか別れない。

私は冷たい人なので、こういうイバラの道が趣味の女性は、
好きなだけ悲劇のヒロインになりきって浸っていただき、
気が済むまでとことん地獄を味わえばいいんじゃないかと思う。
(ただし、その女性に子どもがいる場合は、共依存の親の下で育つ面倒を知っているだけに、
ダメモトで全力で別れをお勧めするが・・。)

その一方で私は、ダメンズを愛して自らボロボロになっていく女性たちの、
「愛こそが人生」とでもいうような、愛と情に流されまくりの生き様に
一種の憧れが捨てきれずにいる。
つい浮かんでくる、
「ここまで人を愛する才能のある者だけが到達できる、凄まじく甘美な世界があるのでは?!」
といったしょーもない妄想は、この歳になっても、いや、年を重ねるほどに止まらない。


てなわけで、今日の絵本は「だめんずラルフ」もとい「あくたれラルフ」。
不惑の私の妄想を募らせる、地味にヤバイ絵本である。

主人公のラルフは、飼い主のセイラに溺愛されている飼い猫である。
人のペットの趣味に文句を付ける気はないが、セイラの趣味は相当変わっている。
そもそも彼女の愛猫ラルフは見た目からして全然可愛くない。

最近「ブス可愛い」という表現がペットや女性アイドルに用いられることがあるが、
「ブス可愛いさ」を売りにする場合、やはり「見た目の残念感を凌駕する可愛げ」
という要素が不可欠であるように思える。
ところがこちらのラルフの場合、見た目以上に行動に難がありすぎで、
ベストオブ可愛げのない猫絵本というランキングがあれば、間違いなく一位になれそうだ。

そんなラルフのひどい悪戯に日々振り回される憐れなセイラ。
どんなにひどい目にあってもラルフを許し愛し続けるセイラはまさしく天使のようだが、
実は私はこの絵本を読む度に、ラルフよりセイラの懲りない言動にイラッとしてしまう。
「お前がそーやって甘やかすからこのバカ猫は平気で他人に迷惑かけ続けるんだろーが!」
と大人げなく絵本にツッコミをいれてしまったことも一度や二度ではない。

ところが後半、ラルフはセイラと離ればなれになって痛い目に遭うのである。
この絵本を初めて読んだ小学生の頃から、このラルフの転落シーンをちょっと憐れに思う反面、
密かに胸のすくような思いに心を躍らせていた腹黒い子どもだった私は、
後に「カタルシス」という言葉を知ったとき、真っ先にこの絵本のことを思い出したのだった。

そしてラストで再び私はイラッとさせられる。
ここで屈託無くクスッと笑える人は、きっと素晴らしく人間が出来ているか、
愛情深い家庭で人を信じる気持ちを健全に育んでもらった人なのだろうと想像している。

ちなみに私は「だからオメーはよー!!」と、ここでももれなく心の中で毒づくのである。

にも関わらず、私がこの絵本と未だ訣別できない理由はやはり、
それでもラルフへの愛が揺らがないセイラの強さと、その先にあるはずの
強い絆で結ばれた至上の愛の世界に憧れる気持ちが捨てきれずにいるからに違いない。

お気に召しましたら・・
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posted by えほんうるふ at 14:52 | Comment(3) | TrackBack(0) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月27日

究極の選択

ねえ、どれがいい? (評論社の児童図書館・絵本の部屋)ねえ、どれがいい? (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
ジョン・バーニンガム作 まつかわ まゆみ訳

評論社 2010-02

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人はその生涯で何回ぐらい究極の選択を迫られるのだろうか。
いや、実際に究極の選択というドラマを我が身で経験できる人がどれほどいるのだろうか。

かくいう私も、恐らくとっくに人生折り返し地点を通過しているはずだろうに、
未だかつてそのような重大な選択にリアルに頭を悩ませた覚えがないのだ。続きを読む
posted by えほんうるふ at 02:02 | Comment(0) | TrackBack(1) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月21日

苦しい言い訳

あつさのせい? (日本傑作絵本シリーズ)あつさのせい? (日本傑作絵本シリーズ)
スズキ コージ

福音館書店 1994-09
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梅雨明けから1週間。東京は今日も朝から晩までハンパなく暑かった。
こう暑いとどうもイライラしてケンカが増える。
近頃私と息子の親子バトルが一触即発状態なのも、
普段は気にしない夫との些細な価値観の相違が許せないのも、
みんなみんな暑さの所為なのだろうか?!

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posted by えほんうるふ at 00:23 | Comment(6) | TrackBack(0) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月14日

ヒーロー稼業の悲哀

あんぱんまんあんぱんまん
やなせ たかし

フレーベル館 1976-05
おすすめ平均

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かなり久々の更新である。読者数も初期値にリセットされたことであろう。
転居から2ヶ月、ようやく新居での日常生活のリズムが定まってきた。
下の子が保育園から幼稚園に転園し、懐かしの「園ママ生活」に復帰。
よって私の苦手な「降園後の親子ぐるみのおつきあい」もめでたく復活。
そして何組かの親子と家を行き来するうちに気が付いたのは、親(私)の興味の偏りがそのまま育児に反映する我が家の怪しさである。
なにしろ息子の友達が持っているようなオモチャが我が家には無い。
ポケモンカードも、ムシキングも、プレステもDSもなければ、音や光の出る戦いごっこの武器もない。
ナゼ無いのかと言えば、それらは私の趣味ではないからだ。
要するに私は自分の趣味を幼い我が子に押しつける鬼母なのだ(爆)。
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posted by えほんうるふ at 00:30 | Comment(20) | TrackBack(0) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月09日

罪深きイノセントガール

あらしのよるに ちいさな絵童話 りとるあらしのよるに ちいさな絵童話 りとる
きむらゆういち / あべ 弘士

講談社 1994-10

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マルラゲットとオオカミマルラゲットとオオカミ
マリイ コルモン Marie Colmont Gerda Muller

パロル舎 2004-02

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学生時代の女友達でアイドル並みに可愛い娘がいた。見た目の可愛さもさることながら、甘え上手であぶなっかしい雰囲気に「ほっとけない!」と寄ってくる男が後を絶たなかった。寄ってこられた彼女(仮にY美としておこう)の方はごく素直に男達の好意を受けるのでタクシー代やら食事代なぞ払ったことがないという。一方私の男友達にも何人か彼女に好意を寄せる者がいて、なんとかY美をおとそうと日々奮闘していたのだった。
さてこういうサンプルが身近にいると、下手な恋愛論を読むよりもよほど分かりやすく男女関係の法則を学べる。面白いことに、男性の多くはあまりにもスキがありすぎる女の子を前にすると征服欲よりも庇護欲が勝るらしく、「それ絶対チャンスでしょ!!」って時にも手が出せないものらしい。
ある日、飲み会で遅くなったY美を私の男友達Nが家まで送っていった。千鳥足の彼女を抱きかかえて部屋に入り、ソファに座らせるともう寝息を立てている。無防備そのものの彼女を前に、Nはほとんど理性を失いかけたが…ふと正気に返ったY美に「あれ、Nくん送ってくれたの?ごめんねぇ〜!でもありがとう…あ、今、お茶入れるね♪」とニッコリと微笑まれ、「ああ、こんな良い娘を一瞬でも襲おうと思った俺のバカバカバカ!!」と深く反省したという。
後日「本当にNくんていい人よね〜♪」と無邪気に語るY美に対し「あんたって残酷…」と思わずつぶやいた私は、彼女が本当に送り狼になるタイプの男には決して甘えないしたたかさな一面を持っていることを知っている(笑)
 
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posted by えほんうるふ at 15:53 | Comment(48) | TrackBack(0) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月17日

秋の全国交通安全運動

たろうのおでかけ(こどものとも絵本)たろうのおでかけ(こどものとも絵本)
堀内 誠一

福音館書店 1966-07-01
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私の住む地域では毎年この時期になると、「秋の交通安全週間」のノボリや垂れ幕を付けた白いテントが街角に登場する。そこには長テーブルとパイプイスが用意され、町内のオトナ達が当番制で往来を見守るのであるが、ただ見守っているだけで何ら地域住民の交通安全に対し積極的な働きかけはしないのがこの活動の不思議な特徴である。実際彼らは何のためにそこにいるのかと毎年疑問に思っていたのだが、ある年ついにマンション管理組合でのジャンケンに負けてこの地域活動に私が参加することになり、ようやくこの疑問が解けた。

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posted by えほんうるふ at 19:25 | Comment(26) | TrackBack(1) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする