2015年08月19日

みえるひと、みえないひと、みたくないひと

怪談えほん (3) いるの いないの (怪談えほん3)怪談えほん (3) いるの いないの (怪談えほん3)
京極夏彦作 町田尚子絵

岩崎書店 2012-01-28

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夏の飲み会の定番ネタと言えば怖い話。
こんな時、順繰りに持ちネタを披露するとなるとやはり、
「聞いた話」ではなく「自分が体験した話」の方が俄然臨場感がある。
そこで一躍スポットライトが当たるのが、いわゆる霊感体質の人。
ところが、日頃から自己主張激しく口も達者なキャラクターの人物が
待ってました!!とばかりに語りだす「とっておきの怖い話」は
ほおほおふんふん、ワーッ、ギャーッ、こええー!!
と変に盛り上がって大騒ぎになり、聞いている方は意外と怖くない。
稲川氏を例に出すまでもなく、話術巧みに語られる怪談はそれだけで
エンターテイメントとして十分通用するので、
それだともう単なる「すべらない持ちネタ」になってしまうのだろう。
むしろ、
なるべく控えめで目立たず視線も俯きがちな印象ぐらいの人が
何かないかとせがまれて「別にいつものことですけど・・」と
大して面白くもなさそうに淡々と
「みえちゃう・きこえちゃう私の日常」を語りだす方がよほど怖い。

今日紹介する「いるの いないの」という絵本は
まさにその「みえるきこえる日常がすぐそこにある怖さ」の演出が
なかなか素晴らしく、作家陣を見るにつけ、思わず、
さすが、分かっていらっしゃる!と膝を打ちたくなってしまう。

ただし、その結末は・・・
素で叫んだという人もいる。
立ち読みしていた本を思わず投げてしまい、
買ったものの開けられず本棚の奥に封印しているという人もいる。
折角なのでネタバレはしないでおくが、私自身は爆笑してしまった。
賛否両論あるだろうが、
怪談エンターテイメントとして秀逸な一冊であることは間違いない。


ところで、私自身は全く霊感体質ではない。
と、自分では思っているが、
仲間内で怖い話で盛り上がるときに話すネタはそれなりにある。
多分、このブログではまだ書いたことがないので、
これを機会にここでも披露してしまおう。

幼い頃はよく自宅で寝ている時に金縛りにあった。
多分に妄想力豊かな子供だったせいだろうが、
その度に、何かどんよりと重い物がのしかかってくる気配や、
絶対目が合っちゃうから開けちゃダメだという確信があった。
あまりに度々そういうことがあるので、
だんだん対処法が身に付いた。
怖い怖いと息を詰めているとどんどん苦しくなるので、
とりあえず、全力で抵抗を試みることにしたのである。
なあに、どうせ相手にはこちらに実害を及ぼす力はないのだ。
そう思って、遠慮無く罵詈雑言を浴びせることにした。
目は開けられないし声も何故か出せないのだが、
バカ野郎、重いじゃねーか、どきやがれ、あっち行けー!!
などと必死で声なき声で叫んでいるうちに、
気が付くと金縛りは解け、目が覚めると朝になっていた。

ところがたった一度だけ、この作戦が効かなかったことがある。
いつものように、私は声なき声で見えない敵と戦っていた。
が、やはりどうにも苦しい。
あー、どうしよう。疲れてきた。
と思った瞬間、
ドン!と背中に衝撃が来て、私はベッドから転げ落ちていた。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。
当時の私のベッドは、壁際に置いてあり、つまり片側は壁である。
背中には生々しく手のひらの感触が残っていた。

さすがにこの時はチビりそうに怖くなり、
親が寝る部屋へ駆け込んで無理やり布団に潜り込んだ・・
ような気がする。よく覚えていない。
後にも先にも一度だけのことだった。

思えば、我が実家は色々とポルターガイストまがいの現象が
起こる家だった。
テレビが勝手についたり消えたりなどは日常茶飯事なので
みんなそんなもんなんだろうと思っていた。
ただ、父親がガレージを増設するのに元々あった古い井戸を
埋めてしまった時は、さすがに色々とヤバかった。
当人は大怪我をし、その後入院するはめにもなり、
途方に暮れた母が知人を介してその筋の人に相談し
然るべき方角の神社へ家族全員でお参りしたりもした。
そこらへんの詳しい話を聴きたい人は、飲んだ時にでも。

それでも私には、霊感は全くない。あってたまるものか。
posted by えほんうるふ at 10:53 | Comment(2) | TrackBack(0) | 怖い絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月21日

きっと、いつかまた蘇る

なおみ (日本傑作絵本シリーズ)なおみ (日本傑作絵本シリーズ)
谷川 俊太郎 作  沢渡 朔 写真

福音館書店 2007-10-10

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幼い頃、時々泊まりがけで遊びに行った母方の伯父の家には、市松人形がいた。
寝室の婚礼ダンスの上で、ガラスケースの中から静かに私を見下ろしていたその人は、
幼い私を怯えさせるに十分な貫禄があり、私は一人でその部屋に入ることができなかった。
でも、夜はその部屋に親や兄弟と一緒に寝ることになっていたので、
一生懸命、そっち方向を見ないように布団をかぶって寝たのを覚えている。

後に、この「なおみ」という絵本に出逢ったとき、私は真っ先にあの人形を思い出した。
不思議と「怖い」というより「懐かしさ」に近い感情が心に浮かび、
そのことに自分で驚いた。
私はあの人形にいくらかでも親近感を持っていたのだろうか?→続きを読む
posted by えほんうるふ at 21:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月20日

ダークサイドの誘惑

キツネキツネ
マーガレット・ワイルド文
ロン・ブルックス絵

BL出版 2001-10

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久々に、重い本。
いや、久々どころか、今までこのブログで採り上げた作品の中でダントツのヘヴィーさ。
読む者の心の闇をのぞき見されるような、美しくも恐ろしい絵本でもある。

最初に読んだ時の衝撃を今でも忘れられない。
まずは絵に一目惚れ。
一頁毎にうっとりして、どきどきワクワクしながら読み進み、
まさかというかやはりというか、衝撃的ではあるがヒタヒタと予感があった展開に
心を鷲掴みされる感覚を味わった。
滅多に味わうことのない感覚だけに、怒濤のように溢れる言葉に出来ない想いに戸惑った。

それ以来、大好きで大好きで宝物のように思っていた絵本だけれど、
なかなか人に勧めることはできなかった。
まして子どもに読み聞かせるなんてことは思いも付かなかった。
人知れず傷ついた心を抱えている人や、柔らかく無防備な心を持つ小さな人たちが読むには、
なんだか要注意な絵本のような気がして、安易に紹介できなかった。

それでもいつかこの絵本をオトナノトモで採り上げる時には、
私にとって何よりも印象的だった、カササギの心の動きに焦点を当てるつもりでいた。

それぞれに傷を持つ弱い者同士・・イヌとカササギが平和に依存し合っていたところへ、
突如現れた闖入者、キツネ。
凄まじい画力でビシビシと伝わってくるキツネの奥底に秘めた憎しみや嫉妬は恐ろしかったが、
同時にその吸い込まれるような瞳の美しさに心惹かれずにはいられなかった。

カササギは、一目見たときからキツネを恐れていた。
怖い。近づいてはならない危険な存在だと、本能が告げている。
何より、警鐘を鳴らす本能に逆らうように、どこかでキツネに惹かれている自分が怖い。
そんなカササギの動揺を見透かしたように、キツネは容赦なく獲物を追い詰めていく。
そしてとうとう、カササギはキツネの誘惑に抗しきれず、大切なイヌを裏切ってしまうのだ。

だがそんなカササギを、果たして私は責められるだろうか。
なんてバカな奴だ、裏切り者め!とつぶやいたその気持ちの裏に、
どこか一抹の後ろめたさを感じはしまいか。
悲劇の予感に怯えつつも、見果てぬ夢にその身を賭けてしまったカササギの愚かさに、
共感してしまう気持ちがひとしずくもないと、私は言いきれるのだろうか。

ダークサイドの甘美な囁きに、ついに堕ちてしまったカササギ。
刹那の快感に酔いしれた後に待っていたのは、勝ち誇った悪魔の非情な仕打ち。
一瞬前の夢のような高揚感を一気に地へと叩き落とす、見事な暗転である。
自業自得と言い切るにはあまりに残酷なその展開に、
まるで自分が冷や水を浴びせられたように呆然としてしまったのは、私だけだろうか。

さて、いつもならここからさらに思いこみ激しくあーだこーだと書き連ねるのだが、
この絵本に関し、今の私に語れるのはこれが精一杯だ。
何故なら、今の私はまさに、かつて自分でうすうす危惧した通りに、
あまりこの絵本をじっくり堪能するに相応しくない精神状態なのである。
例えばそれは、容赦なく押し寄せる日々の現実に少々疲れてしまった平凡な主婦が、
それをつかの間忘れさせてくれる何か、いや誰かの出現を、
半ば恐れつつ、半ば期待しているような心持ち・・・
と言ったら、その危うさをお察しいただけるだろうか。


この先、今よりもっと心穏やかに過ごせる時がきたら、
私はこのエントリーを丸々書き直して、全く違うことを書くかもしれない。
でもそれまでは、
この絵本のエンディングに描かれた一縷の希望に号泣する日が来ないことを祈りつつ、
危うい平和を保った貴重な日々をよろめきながら歩き続けることだろう。

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posted by えほんうるふ at 20:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月23日

パンドラの箱

あけるなあけるな
谷川 俊太郎  安野 光雅

ブッキング 2006-12

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starドアの向こうは現実離れの世界
star30年以上の時を経て復刊された魔書

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わりと最近になって、キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」を改めて観る機会があった。
若い頃に観たときは、淡々と進む話に眠気を誘われ、半分も観ないうちにうとうとと眠りこけた。
今改めて観てみると、60年代の撮影技術でいったいどうやって撮ったんだ?と思うような映像がてんこ盛りで、公開当時に映画館で観た人の衝撃いかばかりか想像に難くない。まるでだまし絵を見ているような楽しい140分間で、寝るどころかあっという間に終わってしまった。
一般に、映像はすごいが話は抽象的で難解とも言われているようだが、若い頃クラークやディックに傾倒していた自分にはこの重さがむしろ懐かしく、心地よかった。
そしてこの映画を見終わって、真っ先に心に浮かんだ絵本が谷川俊太郎と安野光雅という最強コンビによる名作「あけるな」だった。
もしかすると、鑑賞中に私が感じた懐かしさはこの絵本のことを思い出したせいかも知れない。
なんのことはない、「2001年宇宙の旅」は、私にとっては幼い頃繰り返し読んだこの絵本の映像化だったのだ。
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posted by えほんうるふ at 15:19 | Comment(8) | TrackBack(1) | 怖い絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月08日

あなたの足もとの妖怪

ミミズのふしぎ (ふしぎいっぱい写真絵本 (3))ミミズのふしぎ (ふしぎいっぱい写真絵本 (3))

皆越 ようせい
ポプラ社 2004-06
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みみずのオッサン (絵本・こどものひろば)みみずのオッサン (絵本・こどものひろば)

長 新太
童心社 2003-09
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啓蟄を過ぎたところで地味にシーズンものの虫の絵本を。

あなたは虫が好きですか?
こう聞かれてYESと即答できる人でも、どうしても苦手な虫がいるものだ。
奴らは見た目も生態もあまりにもバラエティに富んでいて、
その異質さ故にどうしても親近感が持てない場合がある。
いわゆる「生理的にダメ」という嫌悪感の地雷ポイントもいろいろあって、
脚が多すぎてダメ、少なすぎてダメ、
ヌルヌルがダメ、すばしこい動きがダメ、
群れるのがダメ・・・
などなど、これまた千差万別だ。
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posted by えほんうるふ at 08:16 | Comment(8) | TrackBack(0) | 怖い絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月23日

わたしにとってのわたし

kuma00.jpgぼくはくまのままでいたかったのに……
イエルク・シュタイナー イエルク・ミュラー おおしま かおり
ほるぷ出版 1978-10

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巨匠コンビによる「わたし」レビュー: あなたにとってのわたしに引き続き、自分のアイデンティティとはなんぞや?というあたりを改めて考えさせられる絵本をとりあげてみる。
自分の気持ちが不安定なときには読みたくないと思っていたこの絵本について、そろそろちゃんとレビューを書こうと思うきっかけになった哲学者enzianさんの記事はこちら。
 
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posted by えほんうるふ at 01:03 | Comment(15) | TrackBack(0) | 怖い絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月19日

捨てられない元恋人

かしこいビルかしこいビル
まつおか きょうこ よしだ しんいち

ペンギン社 1982-01
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4001151308ふわふわくんとアルフレッド
石井 桃子
岩波書店 1977-06

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毎日暑くてたまらんので、怪談系の話でもひとつ。
誰にでも幼い頃大事にしていた人形やぬいぐるみが一つや二つあるはずだが、オトナの皆さん、その人形は今でもあなたの手元にあるだろうか?
「もちろん!今でも毎晩一緒に寝ています♪」というアナタもそれはそれで充分怖いが、大抵の人は「そう言えば、あれ、どうしたっけなぁ…」とおぼろげな記憶に何となく後ろめたい思いが混じったりするのではないだろうか。
 
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posted by えほんうるふ at 01:05 | Comment(24) | TrackBack(1) | 怖い絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする