2016年01月26日

華麗なるフェイク人生

きちょうめんななまけものきちょうめんななまけもの
ねじめ 正一・文  村上 康成・絵

教育画劇 2008-05

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勤勉を装う怠け者は世の中にあまねく存在するもので、
根が無精なだけに詰めが甘いので、たやすくその本性を見破られる。
バレてないと思っているのは本人だけ、というおめでたさは、
まさに脳天気なナマケモノに相応しい生態かもしれない。

その逆に、怠け者を装った努力家というものも、実は結構いるらしい。
学生時代、テスト前でも妙に涼しい顔でぶらぶら出歩いていたり
学校行事での大役等、普通なら緊張を強いられるような場面でも
ひとり飄々としていて、そのくせ何でもそつなくこなしてしまう人が
あなたの周りにも一人や二人いなかっただろうか。
もちろん、その中には努力不要の真の天才も居たかもしれないが、
実際には人に見えないところで努力を重ねてその状態を維持している
隠れ秀才タイプが少なくなかったのではないかと思う。

そんな人々は、何故わざわざ怠惰を装うのだろうか?
ごく当たり前に勤勉さは人から賞賛されることなのだから、
素直に努力する様を見せればいいものを、
どうしてわざわざそれを隠すのか。

私の推測では、多分彼らはもともと怠惰な人間が安易に思いつくような
低次元なレベルとはかけ離れた高貴なプライドを持っているのだろう。
それはつまり、自分自身に対する美意識の問題なのではないか。
優雅に湖面を進む白鳥が水面下ではせっせと水をかいているように、
髪振り乱して必死にあがく醜い自分は自分が見たくない。
まして他人には決して見せたくない。
そこで、自分が理想とする自分のイメージを全力で保つべく、
こっそり人知れず努力をするのだ。

今日の絵本はそんな愛おしくもややこしい性格のナマケモノが主人公だ。
生真面目な彼は、昼間は人間たちの勝手な期待に応えて、
不本意ながらも怠惰で安穏としたキャラクターを演じている。
が、日が暮れて人目から開放される夜になると、様子は一変。
一分たりとも無駄にせず、勤勉かつ几帳面に朝までの時間を全うするのだ。

そもそも彼が何より嫌悪するのは「怠け者と思われること」だという。
ああそれなのに、何故か彼はナマケモノとして生まれてしまった。
生来の性質と真逆なキャラクターを期待される一生だなんて、
ほとんど性同一性障害に近い苦しみを背負っているかもしれない彼だが、
どうやら元々の能力が高いと見えて、そんな二重生活を破綻なく
それなりに楽しそうに全うしている姿がなんとも頼もしい。


ところで私自身は取り繕いようのない見た目通りの怠け者である。
と、自分では思っているのだが、
どういうわけか常時全力疾走の頑張り屋のように思われてしまいがちだ。
いったいどうしてそんな誤解をされてしまうのか常々疑問だったので、
自分なりに我が身の基本的な行動パターンからその理由を考えてみた。

いい歳して好奇心旺盛なのでやりたいことだけは山程ある
       ↓
時間貧乏性なのでのんびりするのが苦手で、
とにかく何かしていないと落ち着かず、常に手は動かしている
       ↓
そのくせ腰が重いので一つの作業に本気でとりかかるのが遅い
       ↓
そのくせ一度とりかかると無駄に完璧主義なので時間がかかる
       ↓
結局なんでも締め切りギリギリに全力ダッシュで間に合わせる


嗚呼、四十半ばにもなって、我ながら実に大人げない日常である(呆)

それはともかく、この行動パターンから類推するに、
恐らく私を勝手にポジティブに誤解してくださる皆さんの目には、
もしや上記の過程がこんな風に見えているのではなかろうか。


いくつになっても好奇心旺盛でいろんなことに意欲的。素敵!
       ↓
寸暇を惜しんで常に新しいことに取り組んでいる。感心!
       ↓
活動内容が多岐にわたる為、優先順位差が激しい。当然!
       ↓
しかもそれぞれ手を抜かないので時間がかかる。やむなし!
       ↓
多忙にも関わらずなんでも精一杯頑張っている。偉い!


もし私について本当にこんなに都合の良い誤解がなされているとしたら、
誠に申し訳なくもたいへんにありがたいことで、
この場を借りて皆様にお詫びとお礼を申し上げたいぐらいである。
(当然、私の本性を見抜いている賢い人もたくさんいるでしょうが・・)

というわけで本日の結論は、
「人は見かけによらず、愛は常に好意に基づく誤解の上に成り立つ。」
ということにしておこう。

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2014年07月24日

理系思考の効用

算数の呪い算数の呪い
ジョン・シェスカ・文 レイン・スミス・絵 青山 南・訳

小峰書店 1999-01

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理系の人に縁がある。
学生時代から、自分自身は理数系の科目は全滅に近いヒトだったのに、
何故か仲良くなる相手はバリバリの理系の人が多かった。
どれほど悲惨な成績でも数学や物理に敵意を持つことなく
学生時代をやりすごせたのは彼らのお陰かも知れない。
そういえば、親しさの度合いで言うと女子よりも男子に
気が合う友達の方が多かったのも、今思えばまるで
理系人口の男女比がそのまま反映されたかのようだった。

ところで、偶然にも私が親しくなる理系人には以下のような愛すべき共通点がある。

 1.要領よく他人に迎合するのが苦手
 2.自分の趣味について語らせると長い
 3.常に自分の中に結論を持っている。
 4.気持ちの切り替えが早い
 5.こだわるところとどうでもいいところの落差が激しい

…というか、上記のほぼ全てがあてはまる友人を思い浮かべてみるとみんな理系だった。

ちなみに私自身は、ほんの数年前までは上記の5番以外は全てあてはまらないという
見事に外面が良く優柔不断な人間であった。
そんな自分をある意味典型的な文系人間である、と思っていた私にとって、
彼ら理系人の思考回路は時に宇宙人のようで、その不可解さ故に私は彼らに惹かれた。
そこで交わされる会話は常に刺激的であり、その大胆な
(と、私には思えるが彼らにとっては至極当然の)理論展開には
目からウロコが落ちまくりであった。
特に、精神的に行き詰まりを感じる時などに意見を聞くと
明後日の方向からの視点をもらえたりして、
非常にありがたい存在だったのだ。

そんな彼らとの楽しくも刺激的なコミュニケーションを彷彿とさせるのが、この絵本。
冒頭からしてもう、ワクワクさせてくれる。

月曜日の算数の時間、フィボナッチ先生がいったのよ、
「みなさん、たいていのことは、
 算数の問題として 
 考えられるんですよ」


理系友人たちから学んだ私が思うに、これは真理である。
特に、一旦悩み出すとあれこれ余計なことを考えすぎて
ドツボにはまりがちな、そこの文系のアナタ!
これはたいへん実用的な発想転換法なので、覚えておいて損はない。
はいメモったメモった!

それでは、あなたを悩ます問題を今一度、整理してみよう。
それはなぜアナタを苦しめるのか?
しがらみにがんじがらめになった人間関係。こじれた恋愛関係。
多すぎる仕事。実力を発揮できない環境。
健康不安、経済的な不安…etc.
割り切れない思いに鬱々とした日々を送っているのは、
割り切れないのではなく割り切る為の解法を見落としているからではないだろうか?

まずは、落ち着いて現状のアドバンテージを探してみよう。
動かせない現実と、未知の可能性とを整理して、文字式にしてみよう。
ひょっとするとあなたの不安の正体は、限りなく発生確率の低い
未来のトラブルへの妄想に過ぎないかもしれない。
(ちなみに私の場合はたいていこのパターンなので、
経験を積んだ今は、いざという時この発想で頭を冷やし、
早めに落ち込みから脱出するように心がけている。)


算数の良いところは、どんな問題にも必ず至るべき唯一の解があることだ。
学校では模範解答として一番効率のよい解法を教えてくれるけれど、
人生でぶつかるたいていのことが算数の問題として考えられるならば、
その解に至る道は人それぞれ、千差万別でいいはずだ。
そもそも人生でぶつかる諸問題はどれも、必死で解決に至ったところで
果たしてそれが「正解」だったのか「不正解」だったのか、
死ぬ瞬間まで誰にも分からないものだろう。
だから、自信満々でも、不安でいっぱいでも、
今自分が出した答こそが正解だと信じて前に進むしかない。
多分、長い長い人生というテストの合否は問題の正答率ではなく
いかに本人が解を求める過程を楽しんだかにかかっているのだ。
泣いても笑っても同じなら、笑っている方が良いに決まっている。


ところで、前述の理系の友人に共通する項目、の話に戻るが、
この記事を最初に書いた2006年5月から8年ほど経過した今、
改めて自分の日頃の言動を思い浮かべてみると、
なんと私も3、4、5の全てが当てはまることに気がついた。
それは決して私が論理的思考のできる理系人間に近づいたというわけではなく、
ただ単に年相応に経験を重ねて図々しくなったということなのだろう。

でも、確かに以前よりも思考の取捨選択がしやすくなり
頭の中がスッキリしてきたという実感はある。
やりたいこととやれることの違いや、理想と現実の境界が
自ずと見えてくるようになって、無駄に悩まなくなったのかも知れない。
また、この歳になって分かったことの一つは、
大人になれば嫌でも抱え込むややこしい問題ほど、
算数の問題として考えれば、案外簡単に答えが出たりする、ということだ。

というわけで、私は改めてここで声を大にして伝えたいのである。
算数は生涯を通じて役に立つ、
誠に実用的な学問であるからして、
みだりに忌み嫌うべからず。


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2013年05月19日

ギャップ萌えの衝撃

パイルドライバー (fukkan.com)パイルドライバー (fukkan.com)
長谷川 集平

復刊ドットコム 2004-03-01

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少し前、大人絵本会の仲良しさんが企画してくれたカラオケオフに参加した。
もともとツイッターだけで繋がったバーチャルな御縁だったはずなのに、
やたらと活発にオフ会が企画されるのが我が大人絵本会の意外な特徴なのだが、
カラオケオフという形でお互いに歌を披露したのは、意外にもこれが初めてだった。

いやー、楽しかったっす!!
同年代が多いので、似たような選曲で固まるかと思いきや、異様に広いレパートリー。
それでいて、「この曲いいよね〜」と思わず聞き惚れてしまう懐かしの名曲への思いは
シミジミと心通じ合えるところがまた、なんとも心地よいメンバー構成なのだった。

そして何より私が、これは非常に面白いな〜と密かに感心していたことは、
歌う姿を初めて見ることで、それぞれの仲間の印象が改まり新鮮に思えたことなのだ。
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posted by えほんうるふ at 18:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月21日

石の上にも百年

百年の家 (講談社の翻訳絵本)百年の家 (講談社の翻訳絵本)
J.パトリック・ルイス 作
ロベルト・インノチェンティ 絵
長田 弘 訳
講談社 2010-03-11

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100年住める家。
確か、どこかのハウスメーカーがそんなキャッチコピーを使っていたと思い、
検索してみたらコピーどころか社名にしている会社まであった。
それほど、長く住み続けられる家というのは魅力的なコンセプトなのだろうか。

古来、地域の気候や風土から木造住宅の文化が発展してきた日本では、
建物は須く戦火や災害により容易に焼失してしまうものとされてきた。
だからこそ、一部の神社仏閣のように、奇跡的に長期間原型が維持された建築物は
それ自体が富と権力の象徴として、無意識に私たちの心を惹きつけるのかもしれない。
まして、「一国一城の主」という言葉に象徴されるように、
戸建ての持ち家にこだわる人々にとっては、代々継がれる立派な家を建てることが
○○家の歴史に名を残す一大事業として捉えられてもおかしくない。

一方、この「百年の家」の舞台はどうやら、ヨーロッパである。
建築資材として昔から石が多用されてきた彼の地では、たとえ庶民の住宅であっても、
その家(の土台)はそう簡単には消失しない。
ならば永代に渡って一族が住み続けたかというと、そうもいかなかった。
絶え間ない宗教闘争や侵略戦争によって、住人は頻繁に移住を余儀なくされ、
人より堅牢な建物だけが変わらぬ場所で歴史を刻み続けることになったのだ。

この作品の主人公である「家」も、100年どころか、350年近い歴史をもつ建物らしい。
それほどの長い年月ともなれば、その定点観測に登場する人間の数も膨大になる。
何世代にも渡り現れては去る人間達の営みを、「家」はひたすら静かに見守っている。
淡々とした語りながら、その多事多難ぶりはまるで大河ドラマを観ているようで圧巻だ。


地震大国の日本にあっては、どのみち長らく保持できるものでもないのに、
個人資産として基本的に一家族が住むとされる分譲住宅と比べ、
期限毎に不特定多数の人間が住む家、つまり賃貸住宅は
あくまでも「仮の宿」として軽んじられる風潮がある。
住む側も、持ち家となればインテリアに凝ったり設備のメンテナンスも怠らないのに、
賃貸では安普請やリフォームの制限に甘んじるのが当たり前のように思っていたり…。

ところが、日本ならビンテージ扱いの古い住宅がごろごろしているヨーロッパでは、
家は天下の回り者という感じで、箱だけでなく家具までそっくりそのまま、
いわゆる居抜き状態で提供されることも多いと聞く。
だからこそ、縁あって新たにその家に住むことになった人間は、必要に応じて
遠慮無く気が済むまで手を入れるのが当たり前とか。

この両者の文化の違いを、
「人の一生とモノ(家)の一生のどちらを大切にしているか」
「過去・現在・未来のどの時点を軸に生きているか」
といった観点で考えると非常に興味深い。

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posted by えほんうるふ at 21:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月31日

怠け者は休めない

きちょうめんななまけものきちょうめんななまけもの
ねじめ 正一 詩
村上 康成 絵

教育画劇 2008-05

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今さら言うまでもないが、私は怠惰な人間である。
案の定、気がつけば今年ももう1ヶ月が過ぎようとしている。
ブログでの年始の挨拶すらしそびれてしまった。
ああごめんなさいごめんなさい!
こんな私で良かったら今年も仲良くしてやってくださいな。

決して胸を張って言えるようなことではないが、一応自覚はあるので
毎年年初には今年こそシャキーンと心を入れ替えて真人間になろうと
石原出版社謹製の10年日記にしたためたりしているのである。
が、2冊目となった10年日記の最後の年となった今年、
元旦のページにズラリと並んだ10年分の年頭所感を眺めてみれば、
その内容がほぼ同じ、つまり自分が全く成長していないことが一目瞭然なのだった(爆)

ところが世の中には、フルタイムで働き私よりよほど忙しい生活をしていながら、
主婦業・母業・妻業も完璧にこなす素晴らしいWMたちがたくさんいて、頭が下がる。
彼女たちの辞書に「怠惰」の文字は無さそうだ。
代わりに「リラクゼーション(リラクセーション)」という優雅な単語が見つかるかも知れない。続きを読む
posted by えほんうるふ at 21:29 | Comment(2) | TrackBack(0) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月21日

親の幸せ 子の幸せ

だるまちゃんとてんぐちゃん(こどものとも絵本)だるまちゃんとてんぐちゃん(こどものとも絵本)
加古 里子

福音館書店 1967-11-20

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気がつけば私の親業歴も早や13年目。
普通、10年以上も同じ仕事をしていれば多少は経験値も上がり、一般企業ならば中堅社員と呼ばれても良い頃だろう。
しかし、育児という仕事に限っては、10年やそこらの経験なんぞペーペーのヒヨっ子らしい。
むしろ年々こちらの体力の衰えと反比例して行動範囲を広げていく子ども達に、日を追う毎に難易度の上がる問題を投げかけられ、経験者の余裕など微塵もない。
まさに育児は育自。そんなわけで私は今日も試行錯誤と反省と学びの日々である。

学生時代に何ら育児や教育に関する専門的な勉強をしてこなかった自分にとっては、仕事の参考書と言えば、いわゆる育児書と呼ばれる書籍であった。
もともと読書好きで好奇心旺盛な自分は、それこそ図書館の関連コーナーの棚を端から制覇する勢いで、ありとあらゆる育児書を読みまくったものだ。

その中で、私のお気に入りとなったのはこの二つ。
松田道雄先生の「育児の百科」と佐々木正美先生の「子どもへのまなざし」シリーズである。
前者は読み物としても面白い総合的な育児書。子どもの発育に沿って時系列に記述された内容がとても詳しくて面白い。また索引機能が素晴らしく、特に子どもが意思疎通の出来ない乳児の頃には大変お世話になった。出産祝いに何冊贈ったことか。
後者は、もう少し後になって、言葉で自己主張をするようになった子どもとのコミュニケーションに悩み出してから出会い、その内容に感動して以来私の育児の指針となってきた本だ。

佐々木式育児(?)の基本はずばり、過保護のススメである。(その名の通りの著書もある。)
赤ちゃんが泣いたら即、おむつだおっぱいだと要求を察して満たしてやるのと同じように、できれば2歳ぐらいまでは、子どもが望んだことを、ひたすら何でも望んだとおりにかなえてあげることを勧めている。
そんなことしたらとんでもなく我が儘な子どもになってしまいそうな気がするが、それは逆だという。子どもが望んでいないことを親が勝手に押しつける過干渉は良くないが、子どもが本当に望んでいることだったら何をどれだけしてやっても大丈夫。むしろ、そうやって乳幼児期にしっかりたっぷり依存経験をさせてやることで、子供自身が親に愛されていることを実感でき、時が来ればかえってすんなりと自立していくものだと説いている。

この素晴らしく愛にあふれた教えに感動して、さっそく我が家の育児でも実践しようとした私だったが、これがもう信じられないぐらい大変なのである(爆)。
そもそも私自身が幼い頃から親に甘えを拒絶されていたこともあり、子どものちょっとした甘えが、どうしても我が儘に思えてしまって全面的に受け入れることができない。
つまり、子ども甘える→一部叶えてあとは却下→子ども怒る・反発する→結局叱る→子ども拗ねる→親落ち込む、とまあ、だいたいこんな感じでループするのが常であった。

佐々木先生の教えは素晴らしいが、果たしてそれを本当に実践できる親なんているんだろうか?
と思っていたら、いたのだ。絵本の中に(笑)。
今日の絵本「だるまちゃんとてんぐちゃん」の中で、愛息だるまちゃんの我が儘な要求をひたすら叶えてあげようと奔走しまくる父親。彼こそが佐々木式育児の理想的なロールモデルである。

何しろこの父親だるまどんは、「友達の持っているものと同じ物が欲しい」などという、わかりやすい子どもの我が儘にとことんつきあってやる激甘オヤジである。
そんな父親の精一杯の提案に対し、「こんなんじゃヤダ」とあっさり却下するという暴挙に出るだるまちゃん!
ここで私なら早々にテメエいい加減にしろよ!とキレること間違いなしだ。
ところがだるま父はだるまだけあって七転び八起きの精神で愛する息子の笑顔の為に手を尽くす。
息子の笑顔、それこそが我が喜び!とばかり、嫌な顔ひとつせず再提案を繰り返すのだ。

やがて父親の労の甲斐あって、だるまちゃんはようやく「これならアイツに勝てる!」という逸品をゲットし、てんぐちゃんにドヤ顔で披露しにいく。
そして夢に見た友達からの「きみのがいちばん」の言葉を得て大満足、めでたしめでたし。
恐らくこの時だるま父も、息子の満面の笑みを取り戻した達成感に心酔しているはず。
子どもの幸せこそが親の幸せ、という理想的な親子関係が伺える完成度の高い絵本である。

ちなみに自分は一読して無理。と思ったクチだが、それでもこの眩しいほどの親の愛と、幸せ一杯のエンディングに、早々に挫折した佐々木式育児の成功例を見た気がして感慨深かった。

親であることの幸福は、子どもを幸せに出来る幸福にあるとおっしゃる佐々木先生。
条件付きでない愛を、と先生は言うが、多分私はそれを全うできるほど出来た親ではない。
それでも私はその後も、自分の中の鬼母と葛藤しつつ毎日の親業を続けている。
だるま父の境地には程遠くても、子どもの笑顔は私にとっても何よりの宝物だからだ。


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2009年06月10日

かわいい自分に旅をさせよ

たからものたからもの
Uri Shulevitz 安藤 紀子

偕成社 2006-05
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つい最近、新しい店で髪を切った。
たまたまネットで見つけたその美容室はちょっと変わっていて、客席が一つしかない。
大きな鏡の前に、革張りの椅子が一脚。内装も外装も決して殺風景ではないのに、無駄なモノが無くて清々しい。
そしてもちろん、お店のスタッフもオーナーただ一人。
ここは店というセットと登場人物二人だけのシンプルな舞台で勝負する世界なのだ。
レジ前の小さなソファコーナーには、バンサンの絵本「アンジュール」と、Maya Maxxの「トンちゃんってそういうネコ」が置いてあった。どうやら期待通りの店らしいと嬉しくなった。

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posted by えほんうるふ at 10:42 | Comment(14) | TrackBack(0) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月02日

珍獣を育てる愉しみ

もしもぼくがおとなだったら…もしもぼくがおとなだったら…
ヤニコヴスキー・エーヴァ / レーベル・ラースロー

文溪堂 2005-07
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子供が将来の夢を語る絵本はたくさんある。
この作品でも、子供が無邪気に「オトナになったらあーしたい、こーしたい」を列挙している。
ただし、この絵本の最大の特徴はこの主人公が男の子であるということだ。
彼が大人になったらやりたいと夢見ることは、女子には到底理解できないものがある。
「そんなことをしていったい何が楽しいのか?!」
悩んでも無駄なのだ。彼らはそういうふうにできている。
息子を持つ母ならば膝を打つこと請け合い。
大人になりきれていない男性に悩まされている貴女にもおすすめの一冊である。


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posted by えほんうるふ at 14:46 | Comment(6) | TrackBack(0) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月27日

セルフイメージの呪縛

長年の宿題だった「100万回生きたねこ」にいざ取りかかってみたら、たくさんの人が色んな考え方を披露してくれた。どうやらこの絵本のテーマになっているらしい「人生」「生死」「愛」なんて類をどう考えるかは、あまりにも個人的な価値観に基づくものだし、ふだん口に出して人に語ることではないはずだから、余計にそんな内面暴露作業につきあってくれた人々の勇気と酔狂に感謝したい。皆さん、本当にありがとう。

ところで、コドモのあらゆる方向に張りめぐらされた鋭いセンス・オブ・ワンダーには到底及ばないが、いい歳をしたオトナでも些細な発見に大感激したり、卑近な事象にふと心奪われたりすることがある。私の場合は特に、この絵本の解釈のように、ある物事について新たに納得できる考え方を得られたときの目からウロコが落ちる瞬間、心が涙ぐむようなその瞬間、時にそれは痛みを伴うが、まだまだ感性が死んでいない、価値観が凝り固まっていないと分かってホッとしたりもする。

前回の記事でこの絵本のことを「どうしても泣けない」と書いた私だが、思いがけずそこに寄せられた文章のひとつを読んで号泣してしまったので、少しだけ追記を書くことにした。というわけで、このヘヴィーなテーマにこれ以上つきあおうという物好きな方は、こちらへ。
posted by えほんうるふ at 06:34 | Comment(6) | TrackBack(1) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月17日

一度きりの人生を全うできる幸せ

4061272748100万回生きたねこ
佐野 洋子
講談社 1977-01

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いつかはやらなきゃいけないと思いつつどうにも気が進まない宿題のように、その解釈を自分に問うことを無意識にずっと棚上げしてきた絵本がある。「100万回生きたねこ」というその絵本は、絵本好きならずとも一度は目や耳にしたことがあるであろう、佐野洋子作の超有名なミリオンセラーである。
 
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2005年09月04日

目標に向かって突き進まない人生

basuni.gifバスにのって
荒井 良二
偕成社 1992-05

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夏休みが終わり、親子共にせわしない日常が戻ってきた。
今や小学校は2期制となっているせいか、張り切って新学期に臨むといったムードはなく、むしろ秋は学校行事や子どもの稽古事の発表会シーズンという気がする。
実りの秋という言葉に象徴されるように、それまでの努力の成果として教養・芸術系なら発表会、スポーツなら大会等が各地で催される。才能あるコドモを持った親達は思わず期待に胸ふくらませ、我が子にハッパをかけたくなる気持ちも分からなくはない。でも当の本人以上にヒートアップして「ガンバレ、ガンバレ」と檄を飛ばしている親たちを見るたびに何だかやるせなくなってしまうのは、私だけだろうか。
 
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2005年04月18日

少年よワイルドな妄想を抱け

Where the Wild Things Are
Maurice Sendak
Harpercollins Childrens Books


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かいじゅうたちのいるところ
モーリス・センダック じんぐう てるお
冨山房 1975-01


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我が家では数年前からヒトの形をした一匹のケモノを育てている。
これが機嫌のいいときはすこぶるカワイイ奴で扱いも楽なのだが
時としてまったくコントロールの効かない危険な猛獣に成り下がる。
もちろん人間の言葉など通じないし、吠えるわ壊すわ暴れるわで
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posted by えほんうるふ at 23:59 | Comment(18) | TrackBack(5) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする