2019年11月28日

映画好きにおすすめの絵本

からっぽ2.jpgからっぽのくつした

リチャード・カーティス作 レベッカ・コップ絵

世界文化社 2012年11月
出版社詳細ページ

映画が好きでよく観ている。年間200本ぐらいは観ているだろうか。
あまりジャンルにこだわりはなく、邦画も洋画もじゃんじゃん観る。
むしろ偏らずにどんな作品でも機会や縁があれば観るようにしていて、その雑食ぶりたるや、もしかすると絵本の選書以上かもしれない。
たまたま地元の小さな映画館にとても太っ腹なサブスク会員制度があるので、そこで上映されるものは先入観がどうであれ基本的に全部観ることにしている。これがとてもありがたく、知らず識らず自分が食わず嫌いになるのを防いでくれていると思う。

観た映画は記録も兼ねてなるべくレビューを書き残すことにしている。
とある映画専門のレビューサイトを利用していて、マイアカウントで投稿されたレビュー数は現在350あまり。実際の鑑賞本数に対してかなり少ないが、こうした短文投稿ですら、異様に時間をかけて文章を考えてしまう自分にはこのペースが精一杯だ。

ちなみに、私は絵本のレビューをする場合は、基本的に好きな絵本のことしか採り上げないので特定作品をこき下ろすような文章を公に残すことはほとんどないのだが、映画の場合はむしろ遠慮なく好き嫌い全開で忌憚のない私見を書いてしまう。なので、場合によっては私の映画評を読んだ人に不快に思われることもあるかもしれない。いやー申し訳ない、とは思うが、だからといってその傾向を改める気はまるでない。その必要を感じないからだ。
始めから子ども向けに作られた作品を除けば、基本的には大人のための娯楽ソフトである映画は、「良い悪い」ではなく「好き嫌い」だけで語ることが許される、という点で絵本よりもずっと自由に語れるメディアとも言える。実際、真の映画好きを自称する人々には、個々人の推しや好みの違いを尊重する心の余裕があるようにも思う。
私はよく、色々な映画賞を受賞した作品や世間で話題になっている作品を観て「え?そんなにいいか?」と思ってしまい、その思ったままを率直にレビューに書いてしまう。やたらと周囲に絶賛されまくっている作品の場合、若干気が引ける感がないこともないが、そういうときこそ無駄に勇気を出してしまう。同調圧力に屈せず好き嫌いを伸び伸びと自由に言える社会であってほしいと思うから、なんて言うと偉そうだが、素直な気持ちだ。くだらない作品も高尚な作品も、どれも制作陣にとっては心血を注いだ芸術として生かされ、それぞれの受け手に届く世の中であってほしいと願う。

話がだいぶズレたが、絵本を読んでいると「これこのまんま映画にできそうだな」と思うことがよくある。一冊の絵本を超短編の文学作品として捉えると、そこには映画の原案として秀逸ではと思える作品がたくさんあるのだ。(かと言って、絵本原作からアニメ化・実写化された映画作品がみな素晴らしいかというとそんなことはなく、むしろ世界観を崩さず別メディアに展開することの難しさを思い知らされることも多い)

今日ご紹介する絵本もそんな作品だ。
最初にこの「からっぽのくつした」という絵本に出会った時、私は前情報を何も知らないまま読んで「ああ、このお話すごく映画っぽい!年末向けファミリー映画だわー。まあ出来は子役次第かしらねー」などと勝手に夢想していたが、読後に作者を確かめてびっくり、映画みたいどころか既に脚本家としてイギリス映画界で定評・実績のある方が書いた作品だった。そりゃ、ストーリー展開の見事な起承転結ぶりも、ページを捲るごとに映画のワンシーンが思い浮かぶのも、なるほど納得。

作者であるリチャード・カーティス氏はニュージーランド出身、イギリスで活躍中の脚本家・映画監督で、特にコメディやラブコメ作品の名手で数々のヒット作がある(ちなみに彼が脚本を手掛けた映画で私が個人的に一番好きな作品はレネー・ゼルウィガー主演の「ブリジット・ジョーンズの日記」である)。
絵本の内容は、幼い双子の女の子が主人公のいわゆるクリスマスもの。
まあ最初はありがちというか、双子の片方は優等生で片方は困ったちゃんという、それこそ映画にもよくあるパターンの姉妹キャラ設定が描かれる。しかし、その後の展開がブリティッシュコメディらしいブラックさというか、子どもにとっては悪夢のような容赦ない事態になっていく。そしてその運命を子ども自身がどんな行動で切り抜けるか・・・? もう、ここらへんの展開がたまらなく映画っぽく、それも正統派イギリス児童文学にも通じるような、読者たる子どもたちにあえて媚びない大人の厳しさも見せていくところがなんとも小気味よい。ラスト、さりげない小道具を効果的に使った粋なエンディングもやはり映画らしさを感じる演出だ。

また、レベッカ・コップ氏の絵がなんとも可愛くて私はいっぺんで気に入ってしまったのだ。細いのに温かみのある線画、色使いもとても綺麗だ。主人公のふたりの家を覗き込むドールハウスのような見開きの構図も大好物だし、見返しを埋め尽くすプレゼントの包装紙もただカラフルなだけでなく、おばあちゃんの手編みのパッチワークの布団カバーのような(で、伝わるといいのだが)あったかいごちゃごちゃ感があり、眺めているだけでなんだか嬉しくなる。


ところで、今作はまだ映画にはなっていないと思っていたが、念のため原題で改めて検索をかけてみたところ、ちょうどつい先日アニメ映画化が決まったらしい。
https://www.screendaily.com/news/locksmith-animation-to-produce-the-empty-stocking-written-by-richard-curtis/5144467.article

なんとナイスタイミングなニュースだろう。
どういうわけか大人絵本会のお題絵本にはこういった関連ニュースや原画展等のイベントが派生することが多く、それがまた後日のオフ会に繋がったりしてなかなか楽しい。
そもそも入手しにくい絶版絵本をお題にすることが多く、絵本好きとはいえ新刊や絵本出版界隈の新しい動向にはまったく疎い私は、予め告知されているイベントにタイミングを合わせてお題にするような粋な計らいができず、大人絵本会当日に参加者から教えられてびっくりすることも多い。
ともあれ、いずれこの絵本を動画で観られる日が来ると思うと今から楽しみだ。個人的にはこの作品なら実写版も是非観てみたいので、アニメフィルムが話題になってさらにそんな話に発展することを密かに祈っている。
posted by えほんうるふ at 08:37 | Comment(0) | ニヤニヤしちゃう絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月28日

定点観測の楽しみ方

こんなこえ.jpg
こんな こえが きこえてきました
佐藤雅彦+ユーフラテス 作

福音館書店 2015年06月
出版社詳細ページ

待機時間の長い仕事をしている。
待ち時間の間に何をしているかと言えば、大抵はコーヒーショップでパソコンを広げている。色々な街に行くが、それぞれターミナル駅付近の繁華街なので、どこも平日週末を問わず人通りが多い。それだけに店の選択肢は豊富だが、本当に落ち着いて過ごせる店は案外限られるものだ。
それでも、それぞれのエリアにお気に入りの店があり、お気に入りの席がある。
私のお気に入りポジションは、とにかく背後に人の来ない端っこ。さらに贅沢をいえば、外が眺められる窓際。店内最奥の窓際カウンター席なんかがベスト。これに電源とWi-Fiがあれば文句なし、120点の待機場所である。

まずはコーヒーを一口。ほっと一息ついて、ごそごそとMacbookを取り出し、そっと開いてLINEやメールの未読をチェックする。
そしてやおら顔を上げて、窓の外を行き交う人々を眺める。
この時間が何より楽しい。
同じ時間帯でも、街によって明らかに行き交う人々の層が異なる。あちらの街では大半を占めるお勤め人らしきスーツ姿が、こちらの街では少数派。ある街では珍しくない奇抜な格好や露出度の高い服装は、別の街では影を潜め、代わりに見るからに高級そうなハイブランドを当たり前に着こなす人々が闊歩している。外国人観光客もそれぞれの街でたくさん見かけるが、よく見ると出身国と思われるエリアが街によって偏りがあるのも面白い。

ガラスを隔てて行き交う人々が、何を話しているのかは分からない。まして、一人で歩いている人が何を考えているのかなんて分かるわけがない。それでも、出で立ちや佇まい、表情や身振り手振りから勝手に憶測するのが楽しい。

今日ご紹介するのは、まさにそんな私の街なかマンウォッチングのお楽しみをそのまま作品化したような絵本、「こんな こえが きこえてきました」である。
作者の佐藤雅彦さんは、NHK Eテレのピタゴラスイッチでお馴染みの、日本を代表するメディアディレクターのお一人。電通出身で数々の人気CMの生みの親でもある異能の人だ。

さてこの絵本、表紙には多分日本一有名な交差点、渋谷駅前のスクランブル交差点の写真が使われている。NHKの朝夕のニュースでも必ず映るし、何かと若者が騒ぎを起こしてはワイドショーネタにもなるので全国的に馴染みのある景色ではないかと思う。
で、ほぉほぉ写真絵本ね。見慣れた景色だわね・・・と思いつつ頁をめくり、さくさくと読み進める。あっという間に読み終わるのだが、これがまさにアイデア勝負というか他に類を見ない内容で、さすがというしか無い。
なにしろこの絵本、たった2頁の見開きと背表紙を除き、全て同一の画像だけで綴られているのだ。正確に言えば、同一画像をベースに、言葉や吹き出しを載せて視点を移動させることで話を展開させていくという画期的な手法で作られている。

私はこの作品を最初に読んだ時、子供のように夢中になって一気読みしてしまい、全頁が同じ画像であることに考えが及ばなかった。それほど視点の移動が巧妙な作品とも言えるが、いや、単に私がボーっと生きているだけかもしれない。
でもいいのだ、楽しいから。
このしてやられた感といい、下ばっか見てないでほら、と一気に視点を上げさせるリズムとバランスの絶妙さといい、なんだこれスゲー面白い!と無邪気に楽しめる大人で良かった。

ちなみに、これをお題にした今回の大人絵本会の告知をした際にちらっと触れたが、某サイトでのレビューでこの絵本を「同じ写真の使い回しでつまらない、がっかりした」と酷評しているものがあり、ひえぇ〜と、別の意味で驚いたものだった。
そもそも、(日常的に街の定点観察をしている者として断言させてもらうが、)これは決してたまたま撮れた写真の使い回しなどではないはずだ。街を1時間ぼーっと眺めていても、こんな風にパッと眼を引くような分かりやすいイベントはそうそう起こらないものだ。
恐らく、企画段階からとても周到にストーリーが練られ、必要な要素を個別に撮影し、配置を考えてCGで綿密に合成し・・・と、たいへん手間暇をかけて作らえた一枚に違いない。
ひょっとすると、そもそもベースとなっている交差点の画像は早朝に撮影された無人のもので、写っている人々は全て個別に撮影され配置されたモデルさんだったりして・・・・なんて制作工程の裏まで興味深く思えてきて、見れば見るほど絵本の深読みマニアのツボど真ん中を突く楽しい絵本である。

街なかを行く見知らぬ人々の人となりを、見たまんまから勝手にあれこれ想像して面白がるのと同様に、どうせなら自分の五感で受けとるあらゆる情報をそのままデータとして頭に記録するのではなく、想像力を駆使して色んな受け止め方で柔軟に面白がれる方が、人生をより豊かに楽しめそうな気がする。
少なくとも、私は自己流だろうがこじつけだろうが、楽しめるもんは楽しむ方向でいきたい。

posted by えほんうるふ at 16:44 | Comment(0) | ニヤニヤしちゃう絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月24日

異性育児の醍醐味

おいていかないで (幼児絵本シリーズ)おいていかないで (幼児絵本シリーズ)
筒井 頼子 林 明子

福音館書店 1988-01-30

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我が家には3歳違いの姉弟がいる。
幼い頃から周囲に感心されるほどやたらと仲が良く、
兄弟仲がかなり険悪な家庭で育った親としては
ことさら仲良くすべしと躾けた覚えもないのに
私の子の兄弟仲がこんなにいいはずがない!
と思え、純粋にとても不思議だった。
まあ、我が子同士の仲の良さを訝しむあまり、
このままいくと将来ヤバイ関係になるのでは・・・
などと余計な心配する母親は私ぐらいかもしれないが、
とにかく本当にいつも、仔犬や子猫が
じゃれあうように仲良く育ってきたのだった。

そして、どうせ思春期にもなれば口もきかなくなるよ、
という周囲の予想をよそに、まさに青春真っ只中の今も
毎日楽しそうにゲラゲラ笑い合っている。

最近面白いのは、たった3歳とはいえ、
確実に姉のほうが歳は上なのに
傍目には完全にキャラが逆転しているというか、
息子のほうがお兄ちゃんぶっていることが多いことだ。

例えば、何か家事の手伝いを頼んでも
娘はなんだかんだと調子よく役目を免れ、
結局「しょうがねぇなぁ・・・」と腰を上げるのは
息子のほうだったりする。

その様子はまさに今日の絵本「おいていかないで」
に出てくるあやことおにいちゃんのようで、
私はこの絵本を読む度に思わずくすりと笑ってしまう。

あざとい!と言ってしまえばそれまでだが、
作中でおにいちゃんを思いのままに操るあやこは、
まさに天性の小悪魔である(笑)
いや、こうして小悪魔は育まれるというべきか。

一人で外に遊びに行きたいおにいちゃん。
でも、あやこのお陰でちっとも思い通りに動けない。
くっそー!
・・・・でも可愛いから許す。
なのである。はーっはっは!

でもそんなおにいちゃんがまた、
母の目から見ると可愛くて仕方ない。

実際のところ、我が家の娘も実は
かなりクールなところがある子なので
上手に甘えたほうが自分も楽だし
弟の自尊心も満足させられるということを
無意識に分かってやっていそうなところが
ちょっと怖かったりもする(^_^;)
でも、息子も息子でそんな姉のしたたかさを
分かっていながらワガママを許しているらしく、
女、怖え〜!とかオモテウラ半端ねぇ〜!
とよく笑っている。
ようは、お互いに身近な異性として
その性差の理想と現実を
日々目の当たりに学んでいるらしい(笑)

でも、そんな姉弟でもお互いの彼氏彼女の話は
照れくさくてなかなかしないようで、
それぞれが私にだけこっそり打ち明けてきたりする。
そんな時の彼らは姉や弟に見せる姿とは
また違って、まんま歳相応の
自信も経験値も足りない子どもでしかない。
かわいいなぁ、と思う。
それぞれ、一番身近な異性から学んだことを
将来の良い恋に活かせるといいねぇ・・・
などど、呑気に母は思うのであった。
(これ、あの子達の目に入ったら激怒されそう(^_^;))

posted by えほんうるふ at 12:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニヤニヤしちゃう絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする