2005年09月17日

秋の全国交通安全運動

たろうのおでかけ(こどものとも絵本)たろうのおでかけ(こどものとも絵本)
堀内 誠一

福音館書店 1966-07-01
おすすめ平均

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私の住む地域では毎年この時期になると、「秋の交通安全週間」のノボリや垂れ幕を付けた白いテントが街角に登場する。そこには長テーブルとパイプイスが用意され、町内のオトナ達が当番制で往来を見守るのであるが、ただ見守っているだけで何ら地域住民の交通安全に対し積極的な働きかけはしないのがこの活動の不思議な特徴である。実際彼らは何のためにそこにいるのかと毎年疑問に思っていたのだが、ある年ついにマンション管理組合でのジャンケンに負けてこの地域活動に私が参加することになり、ようやくこの疑問が解けた。

当番となった日時に最寄りのテントに顔を出すと、いかにも地元人らしい年配のおじちゃんおばちゃんが笑顔で出迎えてくれた。勧められるままに傍らのパイプイスに座り出された茶をすすったが、何とも所在ないことこの上ない。おばちゃん達は思い思いに世間話に花を咲かせ、おじちゃん達は近所に最近できた回転寿司屋の話をしていて、交通安全の「こ」の字も話題に登らない。と、目の前の交差点の信号が赤に変わった瞬間、バイクが猛スピードで突っ込んできてそのまま通り過ぎた。おばちゃん達は目を見張り、次の瞬間「危ないねぇ〜」「これだから若い子のバイクは…」などと口々に感想を述べ合った。そして何事もなかったように茶をすすり、どこかの嫁のうわさ話に戻っていった。
どうやらこの活動の要は「交通安全及びその他モロモロの世間話をしてご近所との交流を深める」というところにあるらしい…ということにうすうす気が付いた頃、次の当番のおばちゃんがやってきた。今ひとつ納得できない思いを抱えつつ、「お疲れ様」の言葉と共に手渡された缶ジュースと警視庁配布の交通安全パンフレットを手に、愛想笑いの張りついた顔のまま帰宅した私であった。
というわけで彼らがあの場で何をしているのかという疑問は解けたが、いったいこれがどう交通安全に結びつくのか、誰か教えて欲しい。もしかしたらご近所さんと顔なじみになっておけば、そこらの道端でいきなりひき逃げにあって意識不明になっても「あらやだ、○○さんとこの奥さんだわ」と野次馬オバサンがすぐに関係各位に連絡してくれるかも知れない…というのはムリヤリ過ぎるか? しかも全然安全じゃないな…。


さて今日の絵本はもちろん、交通安全がテーマの一冊である。
この絵本の主人公たろうは友達のまみちゃん宅へのおつかいの道すがら、お約束通り路上で次々と無謀な行動に出る。その度に町行く心あるオトナから注意されるのだが、今時のオトナは見知らぬガキには冷淡なので、同じことをやるコドモがいてもパトカーか救急車を呼ぶ羽目になるまで無視されるほうが多いだろう。
63年発行の当時はもっとのどかな道路事情だったのだろうが、それにしてもたろう以上に無謀なのはたろうの母親である。この当時保冷剤やドライアイスは一般家庭で使えるほど身近な物ではなかったはずで、大好きなまみちゃんにあげるプレゼントのアイスが溶けないうちに到着しなくてはとたろうが焦るのは無理もない。幼稚園児にそんな過酷な時間制限付きのお届け物を課し、さらにもう片方の手には持ちにくいスミレの鉢植えを持たせ、ワケの分からぬ動物4匹を連れ立たせ、両手のふさがった状態で交通量の多いルートに送り出すとは、これはいかにも注意力散漫そうな息子にサバイバル能力をつけさせようという母親の地獄の特訓なのだろうか。無謀なんだかゴーカイなんだか分からないチャレンジャーな母親だ。

ようやくこの過酷なサバイバルタイムレースをクリアして車も信号もない草原に出たたろうが、向こうに見えるまみちゃんの家を目指して最後のダッシュをかける、そのシーンでこの絵本は終わっている。この直後、たろうは足もとの石につまづいて顔面着地し、アイスは飛び散り鉢植えは粉々になる…というありがちなオチを予測してしまうのは私だけだろうか。
posted by えほんうるふ at 19:25 | Comment(26) | TrackBack(1) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
えほんうるふさん、
うちの地域では、子ども達の安全の見守りに地域のおじさんたちが黄色いベストを着て、登下校にあちこちに立ってくれています。変な事件もふえましたからね。安心といえば安心ですが、子ども達にとっては、昔のように道草もできず、学校で遊んで帰ることもできなくなり、ちょっと可愛そうです。
いやな時代です。
で、その交通安全週間のテントですが、そうやって
地域のおじいちゃんやおばあちゃんが見守っているということが目的なのではないのでしょうか。・・・というのは表向き・・・本当は「やれ」と言われているから・・・はっきりって、無駄だとおもうことは、どんどん「改革!」して行くことが必要だと思いますけどね。

『たろうくんのおでかけ』は、私は好きだな。一途な太郎君と、あのおおらかなお母さんはいいですよ〜。最後のオチは私も同じく想像しましたよ!

Posted by ka-3 at 2005年09月17日 21:41
>ka-3さん

なるほど、確かに「警察官立ち寄り所」の看板のように、彼らがただそこに存在しているだけで犯罪抑止には一役かっていそうです。ただ、交通事故防止になっているかどうかは微妙なところですが…(笑)。

あの、お分かりだとは思うのですが、私もこの本大好きなんですよ。あの無鉄砲なほど前向きなたろうはコドモとしてとても健全な姿だと思います。
Posted by えほんうるふ at 2005年09月18日 00:15

この本、我が子と同じ名前なのでよく読んであげました。
この太郎くん漫才のカラテカ矢部太郎さんではなかったかな?
(堀内 誠一氏の息子さんらしいです)
彼の幼少の頃を想像しながら読むとさらに面白いです。

アイスの事・・私も同じように思ってました(笑)
かなりハードルの高いお出かけだな〜って
Posted by lovebooklove at 2005年09月18日 01:01
http://www.lib-sakai.jp/column/col_yabe.htm

>lovebookloveさん
横レスでごめんなさい。
カラテカ矢部くんの父上は、やべみつのりさんだと思います。
上のアドレスには、ちょっと見難いですが、写真も載ってます。似てます。(笑)
Posted by hyo-tan at 2005年09月18日 11:19
またしても私のばらばらなうる覚えの記憶でやらかしてしまった。
hyo-tanさんありがとうございます!
えほんうるふさんごめんなさい、ウソ書いちゃいました。(^^;)
やべみつのりさんだったんですね〜(〃∇〃)
どこで勘違いしたんだか・・・
Posted by lovebooklove at 2005年09月18日 12:37
 おひさしぶりです!
この絵本、「ぐるんぱのようちえん」と同じ人の絵ですよね!かわいい表紙だなぁ。こんど探してみようと思います(^^)

 うちのちびも先月1歳になりました。
でも絵本にはあいかわらず興味がないらしく、家でもじっとして聞いてくれないし、保育園でもみんなは先生の読み聞かせをじ〜っと聞いているのに、うちの子だけちがうところであそんでいるんです。
 だんだん人格が形成されてきてる感がありますが、私に似て注意散漫な子かもしれない・・・。
Posted by いちむ。 at 2005年09月18日 20:48
>lovebookloveさん

カラテカ矢部さんという人を知らない私にはなんとコメントして良いものやら…と思っていたのですが、どうやらスルーしてよい話題だったみたいですね(笑)。ところでホンモノの堀内誠一さんのご子息は、今どこで何をしていらっしゃるのかしら。一代で終わらすにはもったいない才能ですよね〜。
Posted by えほんうるふ at 2005年09月19日 05:56
>hyo-tanさん
久々にお越しいただいての情報訂正、ありがとうございます。テレビは決まった番組か映画しか見ないので、今時の芸能人にはうとい私です。助かりました〜。
Posted by えほんうるふ at 2005年09月19日 05:59
>いちむ。さん

こんにちは!
そっか、もう1歳かぁ。おめでとうございます!!
マイペース街道爆走中ですか。いいですねー。1歳児にとっては絵本なんておもちゃの一つでしかないのが普通ですよ。好奇心旺盛な彼には物足りないのかもしれませんね。それならそれで元気いっぱい遊べばヨシです♪
Posted by えほんうるふ at 2005年09月19日 06:03
わーい私の知っている本が登場して嬉しいっす(^。^)

私もこの本を読み聞かせる時は「あぶないがな〜」を5回は言ってしまいます。子ども達も「ほんまや〜」と気を遣って相槌。
たろう達を注意する大人っていうのは、子どもの発想に水を差すやな奴的な書かれ方ですが、実生活でこういう大人が街にたくさんいてくれたら親としては心強いですよね。

私、独身の頃に勤めていた学校で立ち当番が当たって、子どもらの通学路に立っていたことがあります。
確かに、とっさに何かあっても私がいたからとて防げる事は何も無いし、あんまり意味無いかもな〜・・・と思いながら立ってました。
Posted by proton at 2005年09月19日 20:53
>protonさん

そうそう、そうやって親子で「たろう、あぶねぇな〜」とツッコミをいれながら読むのが正しいと思います、この絵本は。人のふり見て我がふり直せっちゅーことで。(笑)

>とっさに何かあっても私がいたからとて防げる事は何も無いし、

それでもちゃんと見てるだけいいですよ。交通法違反予備軍に「見てるぞ」ってアピールできますから。例の白テントのおばちゃん達は、話に夢中で道路の方さえ見てないですから(^^;)
Posted by えほんうるふ at 2005年09月20日 02:48
コメント入りません。重いんですよ。これはテストです。(や)
Posted by 山猫編集長 at 2005年09月22日 22:19
>山猫編集長

せっかく来て頂いたのに、すみません。seesaaのサーバーがこのところトラブっているようでしばしば激重状態に陥ってます。私も昨日はなかなか管理画面にアクセスできませんでした。これに懲りずまた覗いてみて下さいm(_ _)m
Posted by えほんうるふ at 2005年09月24日 00:32
おはようございます!
ライブドアもサーバーを変えているらしく調子がいまいちです。はは。
ところで、コメントしたかったのは、えほんうるふさんと同じく、「あのアイスクリーム」のおみやげについてだったんです!・・・やっぱり「あれ?」って思いましたよ。「融けちゃうじゃん♪」・・同じことを考えてたんですね。はは。
ところで、「ぴかくんめをまわす」からこの記事へリンクさせてもらいました。
「交通安全運動」関連の絵本としては、2冊セットですねぇ♪・・・(や)
Posted by 山猫編集長 at 2005年09月24日 09:42
記事とは直接関係がないのですが、ずっと、
えほんうるふさんの文章が誰かの文章に似ている
と思って読んでました。今、気づきました。
『へんないきもの』という本を書いている、
早川いくを の文章に少し似ています。
だからどうってことはないのですが‥‥(^^;
Posted by enzian at 2005年09月25日 22:06
>山猫編集長(って肩書き付きですがやっぱり「さん」をつけないと失礼?)

こんにちは。やっぱりあのアイスクリームにひっかかりましたか。見たところ、厳寒の真冬の風景とも思えないし、謎ですよね〜。

ところで「交通安全運動」って時事ニュースだったんですねぇ。このキーワードで検索して来る人がたくさんいます(笑)。
Posted by えほんうるふ at 2005年09月26日 06:09
>enzianさん

「へんないきもの」とても好きな1冊です。最初に読んだときは私も「げ、芸風がかぶってる(^^;)」と思いましたが、早川さんの文章はかなり男性好みの風刺が効いてますね。一記事が短くて読みやすいので動物好きな娘(小1)に貸そうかと思いましたが、あれこれ質問されて答えに窮する自分を想像し、「まだ早い」としまいこみました(笑)。
Posted by えほんうるふ at 2005年09月26日 06:23
トラックバックいたしました。そしてコメント書き込みありがとうございます。ご挨拶遅れて申し訳ないです。
「ファン感謝祭」は今月一杯行なわれるようです。お車運転される際は気をつけましょうね。
Posted by ししと at 2005年09月26日 15:37
>ししとさん

わざわざご挨拶にお越しいただきましてm(_ _)m
お互い、意に反して祭りに強制参加させられないよう、気を抜かずに過ごしましょう。
Posted by えほんうるふ at 2005年09月28日 22:41
映画バトンなるものが回って来ました。
忙しかったら、どうぞスルーしてくださいね。

+所有している映画の本数は?
+最後に買った映画のDVD
+最後に見た映画
+思い入れのある映画
+バトンをまわす5人

どうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m
Posted by lovebooklove at 2005年09月30日 11:27
>lovebookloveさん

はいはい、バトンですね。勝手にアンカーになっても良ければ、喜んで♪
映画については別の場所でレビューを書きためているのですが、また改めて考えてみます。少々お時間いただきますので楽しみにしていて下さい。
Posted by えほんうるふ at 2005年09月30日 20:38

えほんうるふさんの映画レビュー前に読みました。

バトンも楽しみ〜わ〜い♪
何日でも待ちますよ〜^^
Posted by lovebooklove at 2005年09月30日 21:14
えほんうるふさんへ。
もうっ!笑いすぎて次男が起きそうになっちゃいましたよっ!
面白すぎます、『たろうのおでかけ』記事。
確かに・・つっこみどころ満載ではありますよね。
いやはや、吹き出すわ、爆笑だわ。
今日の疲れが吹っ飛びました。
ありがとうございま〜〜〜す。
Posted by わかな at 2006年09月10日 23:28
>わかなさん

ありがとうございます。笑って貰ってナンボの記事ですから…(^^;)
毎年この時期になると見に来てくれる方が増えるようです。
また全国で同じ光景が見られるのでしょうね〜。
Posted by えほんうるふ at 2006年09月13日 06:45
自分のブログを書き上げてから、拝見しに来ました。
うるふさんらしいツッコミにニヤニヤ。

今度の絵本会がさらに楽しみになってきました♪

交通安全運動のテントの中はそんな感じだったんですね〜。僕は今日図書館の帰りに白バイにあおられてドキドキでしたw
Posted by おへそのごま at 2012年04月15日 23:40
>おへそのごまさん

こちらまで遠征ありがとうございます^^

交通安全運動は相変わらず謎ですね〜。
確かに街中にやたらとお巡りさんや白バイを見かけるので、
何となくみんなが緊張感を持つのがいいのかもしれませんね。
今度の絵本会では、全国の交通安全運動事情なんかが聞けると面白いですね。

Posted by えほんうるふ at 2012年04月16日 00:48
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Tracked: 2005-09-26 11:01