2020年02月27日

今こそあなたと「はぐ」したい

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はぐ

佐々木マキ 作
福音館書店 2013年9月


出版社詳細ページ

例年この時期はバレンタインを多少意識してラブラブな絵本を採り上げることが多かった。
今年も、最初にこの絵本を今月のお題に、と思いついた時はその意識が大きかった。
(それ以外にもう一つ大事なきっかけがあったのだが、それは後述するとして)
ところがその後の想定を超える世の中の動向により、このごくシンプルな絵本を選んだことが、全く別の側面から皮肉なほどタイムリーな選択になってしまった。

うれしいとき、かなしいとき、家族と、肉親と、友達と、恋人と・・・あふれる気持ちが腕を広げ胸を開かせ、気持ちを分かち合おうとごく自然に体ごと抱きしめ合うこと。
ごく標準的な日本人である私にとって、ハグは半世紀生きても未だにちょっぴり照れくさい仕草で、なかなか人前では躊躇してしまうことも多い。
それでも本当にここぞと言う時には、頭で考えるよりも早く、当たり前に腕を広げ相手を抱きしめている自分がいて、なるほど私も一応そういうふうに出来ている生き物なのだな、と半ば自分の人間くささに苦笑しつつ、妙にほっとするような気持ちになるのだった。

だが今年に入り、突然私達の前に現れた未知の病原体によって、そんな人として当たり前の、誰一人傷つけないはずのふれあいに余計な心配がつきまとうようになってしまった。
まさか、今まさに自分が生きている豊かなはずの現代社会で、目の前の大切な人と無邪気にハグすることが躊躇われる日が来るなんて、ほんの数ヶ月前まで誰が予想できただろうか。

つい昨日まで当たり前に出来ていたことが出来ない世界。
それは想像を超えた形でいきなり私達の日常に殴り込んできて、それまで安全かどうかなど意識もせずにいた日々の生活のそこかしこに不安をばらまいていく。
今世界で現実に起こっていること、そしてこれから起こるだろうと言われている災禍は、それが懸念されている通りになるとしたら私のこれまでの人生では経験のない規模のものだ。おまけに、この非常時に際し、我が日本政府の対応といったら「まさか、そこまで酷くはないだろう」と無意識に信じていたことが次々と覆される情けない有様で、まるで設定のいい加減なパニック映画かSF小説のようなお粗末な展開に、その渦中にいる自分もだんだんまともな感覚が麻痺していくようで怖くなる。日々刻々と変わり飛び交う情報の荒波に揉まれながら、溺れないように自分の足場を保つのが精一杯の日々だ。

でも、たとえ今はまるで先が見通せない状態とはいえ、さすがにこれで世界が終わると思っているわけではない。決して楽観はできなくとも、希望を捨てず明るい側面を求め、落ち着いて行動していけば、きっと切り抜けられると信じている。
巷では色々な情報が飛び交っているけれど、自分なりに今まで知り得たことから出した結論は、残念ながら今のところはこの感染症問題に関し、現政府からの必要十分な対応は期待できないということだ。
ならば、一市民なりに精一杯、今できることを考えて備えることしかできない。
私は関連分野の専門知識も自然災害の被災経験もないけれど、好奇心旺盛が幸いして情報収集だけは得意だ。居住地域からいって恐らく既に感染は免れないという前提のもと、自分や家族が発症した時に備え、慌てず騒がず粛々と出来ることから手を付けている。
特に親しい人々には個別におせっかいを伝えたりもしている。心配しすぎと笑われたっていい。いやむしろ笑われる結果になればいいのにと心から思う。
今はただ一日も早く、大切な大好きな人たちと屈託なくハグできる日常が戻ることを願うばかりだ。
どうか皆様、お気をつけて。無事を祈っています。


さて、それでは最後に、私が当初この作品を今月このブログでとりあげた、つまり今回の大人絵本会のお題に選んだもう一つの理由について書いておこう。

別に宣言するほどのことでもないが、この会の定期開催を来月で一旦終了しようと決めたからだ。
やめる理由はまあ色々あるが、一言で言えばちょうど十年でキリがいいから、だろうか。
(つまりこれは前述のウイルス騒ぎが勃発する前から決めていたことで、その影響は全く関係がない。)

私がこの、ツイッターを介した絵本のオンライン読書会をスタートしたのは2010年の3月である。つまり、以来毎月行ってきた大人絵本会は、来月の第123回をもってめでたく満10周年になるのだ。
十年ともなればさすがに色々なことがあり、それこそ行く人来る人で参加者も移り変わったものだが、ありがたいことに発足当初から変わらずに顔を出してくれるモノ好きの皆様に支えられ、今まで一度も参加者がいない「ぼっち開催」になったことはなかった。
そんな親愛なる大人絵本会ラバーズ(?)の皆様に、なんとか最後の選書で私からの愛と感謝を表せないものだろうか。
そう考えた時、私がこの世で一番好きな絵本「やっぱりおおかみ」の作者、佐々木マキさんの作品に、これ以上ないほどシンプルかつストレートな、まさに今の私の気持ちにぴったりな絵本があったことを思い出したのだった。

そんなわけで、大好きな皆さまへ、私から心をこめてエアハグを。
そしていつかまた、あなたと本物の「はぐ」を。

P.S. 来月の最終回は、この10年を振り返りつつ、惜しくもこれまでに開催の叶わなかった幻のお題候補作品を一気にご紹介すべく、ツイキャスでお送りする予定です。

posted by えほんうるふ at 08:56 | Comment(0) | うれしくなる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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