2019年02月26日

線のおつきあいが繋ぐもの

しんせつなともだち.jpgしんせつなともだち
方 軼羣 作 村山 知義 絵

福音館書店 1987年1月
出版社詳細ページ

身内の実家が名産地なので、毎年冬になると大量の林檎が届く。
たまたま人に会う機会があれば手土産に持っていくのだが、ちょうどその持参先のお宅でも田舎から届いた同じ種類の林檎の配布先に困っていて、大笑いしながら物々交換をして帰ったことがある。
そもそも今どきは頂きものをご近所にお裾分けとして配る人も少ないのだろう。どこの家も食べ物は豊富にあるし、狭いマンション暮らしでは収納スペースに余裕もないので、単なる余剰品の押し付け合いのようになってしまう。
そんな住環境事情に加え土地柄もあるのかもしれないが、我が家周辺のご近所同士のお付き合いは、付かず離れずどころかかなり距離を保って、密な交際よりもトラブル回避を優先する空気が強いようだ。それでも同じマンション内の同学年のお子さんがいるお宅とは、子供同士が地元の同じ学校に通っていた頃は何かと交流があったものだが、それも子どもたちが成長してそれぞれ地域社会の外へ出ていくようになると、親同士も自然と会釈程度の関係に戻っていくように思う。

一方、ちょっと世間を見渡せば、地域社会にどっぷり馴染み「子ども同士が赤ちゃんの頃からの家族ぐるみの大親友でーす!」なんていう、SNS映えの眩しい仲良しファミリーの姿もよく見かける。
それが羨ましいかと言えば、むしろ果てしなく億劫な関係に思えてしまう私はもともと付き合いの悪い人間なのだろう。
かと言って人嫌いかと言えばそんなこともなく、初対面の人と話すのも全然平気だし、自分で各種オフ会の企画をするぐらいの社交性はあるし、お酒の席だって決して嫌いじゃない。
ただなんというか、べったりしたグループ単位のお付き合いが昔から苦手なのだ。

おかげで学生時代から今に至るまで女子的仲良しグループ交際の輪からは外れたまま、どこにも属さず一人で好き勝手に動くスタイルがすっかり身についてしまった。
例えば、私の友人たちにはそれぞれ仲間がいて、様々な企画のもと大人数で集まって賑やかに過ごしている人も多いが、そういった集いの多くに私は始めからお声がかからない。これは簡単で、自分が集団行動が苦手なことを日頃から吹聴しておけば、皆さん遠慮なくスルーしてくれるのだ。断る手間と気遣いが省けてたいへん助かる。
その一方で私は、個人的に「会おうよ」と言ってくれる人にはできるだけ都合をつけて会いに行く。一対一ならば他の人に気遣うことなくいくらでもその人一人の話がじっくり聞けるし、何よりお互いリラックスして突っ込んだ話もフランクに語り合える。そんな密度の濃い交流の時間が、私はとても好きだ。

面のおつきあいより線のおつきあいを優先すること。
結局、自分はこんなミニマムな友達付き合いが性に合っているようで、それが堂々とできるようになった今、とても気楽で快適だ。半世紀近く生きてきて、模範的な大人のお付き合いを平然とスルーする図々しさも身について、ますます大手を振って気ままな半孤独ライフを満喫している有様である。

そんな折、久々に読み返した絵本が「しんせつなともだち」だった。
毎年雪の季節が来ると手にとって、その素朴な絵柄と安定の反復ストーリーに心をあたためられていた。
でもこの冬は前述の通り、自分のリアルの交友関係についてある種の悟りを開いたばかりのせいか、今までとちょっと違う感想を抱いたので記しておきたくなった。

どれだけ友達が増えても、皆と一緒に仲良くする必要はない。
その時自分が一番ラクなやり方で、個々の友人と一対一の関係を大切にできればそれでいい。
そして、この絵本のように、そのとき頭に思い浮かんだ一人の友達を大切に思い行動することで、結果的にその一人から繋がるより多くの人を大事にできるとしたら、私の知らないところで誰かがちょっと幸せになるとしたら、それはなんて素敵なことだろう。

                                                           
そういえば今年の林檎はろくにおすそ分けもしないうちに全て美味しく平らげてしまった。
誰かに届けていたら、誰かの思いと共にさらにおいしい林檎になって戻ってきたかも知れないのに。
来年の林檎が届いたら、誰に会いに行こうか。


posted by えほんうるふ at 10:11 | Comment(0) | うれしくなる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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