2005年06月26日

天職は歩いてこない

4834000834ぐるんぱのようちえん
西内 ミナミ、堀内 誠一
福音館書店 1966-12

by G-Tools


日経ネットによると、全国のニート人口が推計85万人(2005年)に達するそうだ。
しかも、そのうち約半数の42万人が「将来の就職を希望していない」のだとか。
彼らは、何を生き甲斐に毎日を過ごしているのだろう。素朴に不思議である。

ニートの人々へのインタビューなどを見ると、「仕事をしなくても生きていけるからしない」というのはごく自然な選択だという声も聞くが、それって生きていると言えるのだろうか?
誰かのために自分が存在する。その存在証明となるのが仕事だと私は思う。
生まれてきただけで喜んでくれた親も、いつまでもいるわけじゃない。10代、20代の若い頃ならば、生活に困らず、気を紛らわすものに囲まれていれば気が付かないでいられるかも知れないが、いずれ自立を余儀なくされて自分を見つめざるを得なくなったとき、誰にも必要とされない人生に生きる喜びを見いだすのは困難なことだろう。

この絵本の主人公ぐるんぱは、まさしく誰にも必要とされないやっかいものだった。それでも仲間思いの象たちは彼の就職活動に協力し、身なりを整えて送り出してやる。そこでぐるんぱは張り切って片っ端から仕事につくのだが、(応募先がサイズ基準に厳しいメーカーばかりだったせいか)自分らしさを発揮するあまり、どこへ行ってもはみ出し者ですぐにクビになってしまう。
居場所を失ったぐるんぱが最後に辿り着いた先は、思いがけず、何度も否定された「ありのままの自分」こそが求められる職場だった。しかも、これまでの失敗に終わったキャリアで得た物もしっかり生かせる夢のような職場だったのである。
これこそ、人生において無駄なことは何も無いという分かりやすいメッセージではないだろうか。
かくしてぐるんぱは天職を得て、人と自分とを幸せにし、末永く幸せに暮らすのであった。

 
私も決して裕福ではないが食べ物着る物や進路選択に自分の自由意志を反映できる時代・環境に育ったので、ニート族の「気に入らない物を選ぶぐらいなら何もいらない、このままでいい」というある種傲慢な考え方に共感できなくもない。だが、せっかく若さという最強の切り札を持っているのに、実際にやってもみないうちから情報だけで判断して天職という一生の宝を得るチャンスに手を出さないのは実にもったいないと思ってしまう。

余談だが、私の弟は大学を出た後、新卒で旅行代理店→製パン業→情報処理業→造園業と、ぐるんぱも真っ青の異業種転職を繰り返している。その度に出戻り息子の先行きに不安になった母親の愚痴を聞かされるのには閉口するが、まあ本人の納得がいくまで色々やってみればいいと私は思う。が、姉としては、三十過ぎてんだから天職探し以前にとりあえず家を出て自活しろと言いたい。
どう見てもコドモなのに有無を言わさず世間の荒波に放り出されたぐるんぱを見習え、ぐるんぱを。

追記(2015.5.26):
その後、我が弟は最後に巡りあった造園業界に腰を落ち着け、
信頼できる親方の元で地道に頑張っているらしい。
もちろん、実家からは独立して元気に自活している。
とりあえずこの絵本並にはめでたしめでたしである。
ご心配頂いた皆様、ありがとうございましたm(__)m


【この絵本に関するお気に入りあれこれ】
・ポポタム!さんの【絵本ドリル】ぐるんぱはいつか、里帰りするでしょうか?
・【号外】やまねこ新聞社/山猫編集長さんのぐるんぱのほっぺの魅力を語る嬉しい話
・☆ブログ版☆「東京ホームレス」/村上知奈美さんの天職を語れる幸せに気づかされる重みのある感想
posted by えほんうるふ at 03:37 | Comment(10) | TrackBack(5) | 大事なことを教わる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「サイズ基準に厳しいメーカー!」・・はは。ほんとですね。(^^*
笑いましたよ。一人で奮闘するぐるんぱですが、最後にみんなに歓迎されてヨカッタ。
このお話は、ほんとにいい作品だと思っています。「絵本史」に残る名作ですよ!
--(や)--
Posted by 山猫編集長 at 2005年06月26日 12:36
>山猫編集長

早速のコメントありがとうございます。
思うに、ぐるんぱのスケールのでかい発想を生かすなら芸術家を目指す道もあったのではないでしょうか。実用一辺倒のメーカーでは芽が出なくて残念でしたね。
Posted by えほんうるふ at 2005年06月26日 14:09
 わたしもこの絵本大好きでした! ストーリーよりも色使いがとってもかわいかったのをよく覚えています。 あと、でっかい車とか靴とかピアノとか、うらやましかったなぁ。 ぐるんぱのサイズでなくても、小さい子供にとってはすべてが大きく感じますよね。 
 子供と一緒にはいはいで動き回ると、子供の目線の高さから見る世界が、自分の見ている世界とはぜんぜん違うなって感じます。
 小さいものは大きいものが、大きいものは小さいものが好きっていう法則、なんだか幸せ。
Posted by いちむ。 at 2005年06月27日 22:57
えほんうるふさんがぐるんぱなんて取り上げると
思いませんでしたよ。これは僕が上野動物園で
上演した選びに選び抜いた珠玉の一作ですからね。
僕も学校を出て証券会社を経て何百人もの人を使ったりしながら
今は絵本おじさん。異業種転職の極だと思っています。でもね無駄なことはないのです、人生に。40過ぎて人生悩んではいますが
迷ってはいません。自分の感覚を信じるべし!

ところでえほんうるふさんも長さんの記事書いて
TBしてくれませんかえほんうるふさんの感覚が知りたいです。
Posted by 絵本おじさん at 2005年06月27日 23:18
実はコレ読んだことないんだ。以前TVドラマでテーマみたく扱われたことがあって、その時に周囲のママの勢いに反発するような気持ちになってしまったのよね。
気分一新、ぜひ読みたいと思います。
すごく話がそれてしまうけれど、第1次産業で適応出来たような人が、現在の第3次産業に偏重した世の中で適応が難しく、結果ニート化しているという話を見聞きしました。深く頷きます。
Posted by かめちゃん at 2005年06月27日 23:22
みなさん、コメントありがとうございます。
一気にいきまっす。

>いちむ。さん
私も堀内さんの「みる者を幸せにする色彩感覚」に心惹かれる一人です。
それにしてもいちむ。さん、「小さいものは大きいものが、大きいものは小さいものが好きっていう法則」本当に私もちょっと幸せな気分になれました。
素敵な言葉をありがとう!!


>絵本おじさん
意外でしたか?むしろ絵本おじさんが選び抜いた一冊なら、私にとってもお気に入りでも不思議ではないでしょう、フフフ。
この絵本とのつきあいは長いですよ〜。もともと私にとっては「号泣絵本」の筆頭で、初めて我が子に読み聞かせたときもやっぱり涙が止まりませんでした。切なくて、やがて嬉しくて、愛おしくて。

長さんですか・・惜しい人を亡くしましたね。私の気持ちとしては彼は「死なないヒト」なので、追悼記事のようなレビューを書く気にはなれないし、かと言ってお気に入り作品の数々を無視はできないし・・と思案中だったのですが、絵本おじさんのリクエストとあらば、次回はなんとしても長さん作品をとりあげるとしましょう。


>かめちゃん
かめちゃんが未読とは意外。私TVドラマって時間が惜しくてほとんど観ないので全然知らなくて、今回の記事をアップした後にお仲間を探す際に初めてその番組の存在を知りました。(もし知っててもキャスティングで食わず嫌いに終わった可能性高し、ですが。)

ニートと産業分類の話はすごく興味深いですね。結局、結果をすぐに出せる要領のいい人間だけが生きやすい世の中になっているということかな。貧しい文化ですねー・・。

 
Posted by えほんうるふ at 2005年06月28日 01:36
この絵本、私が通っていた産婦人科の待合室においてあったの。
次男がおなかにいるときは長男に、三男がおなかにいるときは次男に読み聞かせした、不思議なめぐり合わせの絵本なのよね。

えほんうるふさんの解説を読んで、こういう意味合いがあったのねぇとしみじみと感じました。三男にも読んであげられる機会があるといいなぁと思いました(^o^)
Posted by あかり at 2005年07月08日 22:50
>あかりさん

こんにちは。お待ちしておりました。オトナノトモへようこそ!

>三男にも読んであげられる機会があるといいなぁと思いました(^o^)

そこで四男の登場ですよ!(キリがないっちゅーの)
でも、せっかく三人も男の子がいるのだから、同じ絵本にそれぞれにどんな感想を持ったのか聞いてみたいですね〜。
Posted by えほんうるふ at 2005年07月09日 04:57
こんにちは。
『ニート』と言われる現在の若者たちが、果たしてこの絵本を読んでどんな感想を抱くのか気になるところです。
えほんうるふさんの言うとおり、せっかく『若さ』という切り札があるのだから、なんでもトライして天職を見つけだしてほしいと思います。

と言う、ワタシも「ぐるんぱ」を見習いたいところですが・・。


Posted by やや at 2005年08月22日 13:54
>ややさん

ようこそいらっしゃいました。

ニートの人々が10年後に自分が浪費してしまった若さという財産を悔やまないことを祈るばかりです。こればっかりはお金でも努力でも再び持ち得ることがありませんからね…。
Posted by えほんうるふ at 2005年08月23日 01:42
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