2018年09月26日

心躍る見開きドールハウス

エメラルドのさがしもの エメラルドのさがしもの
そのだ えり 作

文溪堂 2018年4月

出版社詳細ページ


久しぶりにIKEAに行ってきた。
娘が誕生日プレゼントに椅子が欲しいと言うので、しからばとにかく実際に座って選んでもらわねばと思い、都内唯一のIKEA店舗がある立川まで子ども達と繰り出して、「大塚家具・ニトリ・IKEAの椅子に片っ端から座ってみようツアー」を敢行してきたのだ。

IKEAと言えば、十数年前に船橋にイケア・ジャパンの一号店が出来た頃にはそれこそ毎週末のように行っていた。(ちなみに当時はカルフールというフランス版コストコのような外資系スーパーも同じ船橋にあって、車で買い出しに行く度にはしごをしていたものだった。懐かしい。)
その後引っ越して自家用車も手放してしまってからはすっかり縁遠くなってしまい、ごくたまに友人とのオフ会を兼ねて個人的に遊びに行くぐらいで、家族で店舗に出向くのは実に10年以上ぶりだった。

果たして、幼い頃に何度も行ったはずのIKEAのことを、我が家の子ども達はほとんど何も覚えておらず、初来店だと思ってやたらとはしゃいでいた。そして、IKEAならではの北欧の世界観と共にがっつり作り込んだ「ショールーム展示」に心を奪われ、目をキラキラさせて感動していた。特に、一人暮らしに憧れる年頃の息子にとっては、下手なテーマパークよりもよほど楽しかったらしく、閉店ギリギリまで居座って隅々まで観察していた。

私は私で、そんな彼らを見ながら別の感慨にふけっていた。
昔IKEAに良く行った頃は、乳幼児だった子ども達が成長し、だんだんと勉強机等の子供家具を検討する必要が出てきた時期だったのだ。その彼らが今や、とっくに親の身長を追い越し、この先の未来と親から独立した生活を思い描くようになっているなんて・・・。
可愛らしいデザインのベビーベッドやぬいぐるみや玩具がディスプレイされた素敵な子供部屋のモデルルームを眺めつつ、ああ、子どもの成長って本当にあっという間なんだなぁと、柄にもなくちょっと遠い目になってしまった。


おっと、またしても絵本の話からズレたまま長くなってしまった。
そんな久々のIKEA体験中に思い出した一冊が、今日の絵本である。

「エメラルドのさがしもの」は、私がこちらで取り上げるには珍しく出版から日が浅い新しい絵本である。
そのだえりさん作のこの絵本は、おしゃまで可愛いリスの女の子エメラルドを主人公とするシリーズの二作目。シリーズものの絵本なのに何故いきなり二作目を取りあげるのかというと、たまたまその原画を拝見する機会があり、とても印象に残っていたからだ。

先月の大人絵本会でお題にしたゴフスタイン。その追悼展示を見に訪れた神保町のブックハウスカフェで、たまたま同時に開催されていたのがこの「エメラルドのさがしもの」の原画展だった。
不勉強ながらそれまでにそのださんの著作を知らなかった私は、何の気もなくこぢんまりとした展示室に入って原画を眺めていたが、ある一枚の絵の前で足が止まってしまった。
それは、エメラルドの新しい友だち、くるみちゃんのお家の断面図を、ドールハウスのように見開きいっぱいに描いた絵だった。おもわず、

「わあ!くるみちゃんの おうち すてきね!」

というエメラルドのセリフをまんま呟いてしまうほど、本当に素敵なお部屋が描かれていた。
このデジャヴ感・・・これはもしや、幼き日にこえだちゃんの木のおうちを初めて覗いた時のあのワクワク感と同じ!? いや、それどころか、まさにIKEAのモデルルームのように、絶妙な生活感を演出しつつも無駄なものが何もないその家はとにかくお洒落なのだった。しかもよく見ると部屋の隅に我が家にあるのと全く同じ絵本棚が置いてあったり、ソファコーナーにはポールセンのPHランプがぶら下がっていたり、二階のラブソファのある一角の飾り棚には、ウェグナーのYチェアなど名作椅子のミニチュアと思しきものが並んでいたりと、ただならぬインテリアへのこだわりが随所に感じられる。私にとってはもう、ただ眺めているだけで幸せになれる原画だった。

こんな絵が描ける作者さんはいったいどんな人だろう?と思い、奥付の作者紹介文を読んでなるほど納得。作者のそのださんはもともと住居建築を学び、美術学校のグラフィックデザイン科を出ている方だった。
そうか、道理で・・と嬉しくなって、展示されていた他の原画を改めて見てみると、実際、そのださんの絵はインテリアだけでなく住宅そのものの描き方が建築パースなみに美しいのだった。うっとり。

と、ここまでお話の内容よりも絵のことばかり夢中になって語ってしまったが、もちろん、この絵本の魅力は絵ばかりではない。
お話は、幼い子供が自分なりに出来ることを発見して生き生きと生活する様子や新しい友達との出会いが中心となっていて、とてもわかり易く微笑ましい。

が、それより私が個人的にとても興味深いと思ったのは、エメラルドと一緒に暮らしているうさぎのガーネットの関係だ。
年齢的にはどうやらいい大人で手に職を持ち生活力もある自立した男性らしきガーネット。対して、見た目よりはしっかりしているものの言動に幼さが露見するエメラルドは、まだまだ保護者の必要な幼女世代と思われる。さてこの二人、いったいどういう関係なのだろうか?
最初にこの二人が並んだ絵面を見た時にパッと連想したのはバンサンの「くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ」だった。だが、かの作品の主人公二人がはっきりと世間からのハズレ者であるが故にお互いを支え合う関係だったのに対し、こちらの二人には何ら後ろ暗い様子がない。
前作の「ちいさなリスのエメラルド」でも二人の関係性についてのはっきりした説明はなく、謎は深まるばかりだが、だからこそ深読みと妄想のし甲斐があるとも言えよう。つまりまさに大人絵本会向き(笑)。


ところで、親子で足を棒にした「大塚家具・ニトリ・IKEAの椅子に片っ端から座ってみようツアーin立川」はとても楽しかった。一応その結果を記しておこう。

最初に辿り着いたのはニトリのデスクチェアコーナー。なかなかの品揃えにテンション高く次々と座りまくっていたが、決め手なし。確かにお値段以上♪と思える座り心地の椅子もあるにはあったが、まあ最初なので判断のたたき台程度に考え、次の大塚家具へと向かった。
IDC大塚家具のワークチェアコーナーには、アーロンチェアを始めとする錚々たるブランドチェアはズラリと並んでいた。当然ながらニトリ商品の値札よりゼロが一桁、下手すると二桁多い。これまた片っ端から座っていたが、機能ゴリゴリのゴツいデザインが意外にも娘には不評だった。なにせお値段がお値段なので内心ホッとしつつさらに駅から一番遠いIKEAへ。
ショールーム見物を楽しみつつホームオフィスコーナーへ辿り着いてみると、一見品数は多いものの意外にもチェアの選択肢は三店舗中一番少なかった。でもそれが幸いしたか、女子にしては割と決断の早い娘はいくつか座ってみて即、「これ!」と迷いなく決定。
晴れて誕生日に贈られたその椅子に座って、今日も彼女はいたくご機嫌である。めでたしめでたし。

posted by えほんうるふ at 21:49 | Comment(0) | 日々のつぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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