2017年11月25日

プロフェッショナル仕事の流儀・本音ダダ漏れ編

さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ)さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ)
レイモンド・ブリッグズ 作/絵

福音館書店 1974-10-25

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生まれてこのかた、ずっと冷え性のような気がする。
この季節ともなれば、家の中でも靴下2枚重ねにレッグウォーマーにモコモコの極暖スリッパで完全防備。上半身もヒートテックに始まりたくさん着込み、最後はモコモコのロングガウンで全身を覆うという念の入れよう。正直、とても人に見せられる格好ではない。それでも以前は宅配便のお届けなんぞ来る度に何とかもう少しまともな格好で応対せねばとあわてて取り繕ったりしたものだったが、もう怖いもののないオバサンなので平然とそのまま玄関口で受け取ったりしている。女として終わっている。
いやいや、女として終わらないための冷え性対策なのである。
たまたま昨日会食した女友達は、私より1コ上世代のお姉さんなのについ先週まで年下だと思いこんでいたぐらいとても可愛らしい女性なのだが、やはり冷えにはかなり警戒しているという。最近何かやってますかと聞けば、腹巻き+カイロを全力でお勧めされた。彼女はもともと腹巻きを愛用していたそうだが、最近はそれにカイロをプラスして一年中お腹を温めているという。オフシーズンに使うために春先にはカイロを箱買いし、夏場に汗疹を作ってまで腹巻きカイロを励行してしまう彼女はさすがに特殊例かもしれないが、やはり冷えを制す女は加齢を制す説は正しいのかもと改めて感心した次第。

さて、そんなこんなで今日の絵本は私と同じく寒がり屋が主人公だ。
「さむがりやのサンタ」は小さい頃から大好きな絵本だった。初版は1974年。今私の手元にあるのは、娘の5歳の誕生日にプレゼントした第50刷だが、現在も当たり前に書店で購入できる。ということは、今はいったい何刷になっていることやら。紛れもない堂々のロングセラーである。
思うに、この絵本がここまで読み継がれている最大の理由は、クリスマス絵本として、プレゼントを受け取る側ではなく届ける側、つまり絵本のメイン読者である子どもたちに対しては大人の事情でアンタッチャブル案件であったはずのサンタクロースの実像に焦点をあてて描かれた絵本の元祖である、ということではないだろうか。

今でこそ、クリスマス絵本のネタも出尽くして、ありとあらゆる個性的なサンタクロースが絵本に描かれるようになっているが、当時はここまでサンタ氏個人の人となりに迫った絵本はなかったように思う。
サンタさんといえば、何しろたった一人で一夜にして全世界の子どもたちにもれなくプレゼントを配るという重責を担っている人物である。そもそもそんなことが出来るのは神の領域の人間でしかなく、その夢を後押しするがごとく、子どもたちの絵本においてはほとんど画一的に神格化された好々爺が描かれものだった。そのルックスはおしなべて某揚げ鶏屋の看板おじさん同様の恰幅がよく白いあごひげを蓄えた老人男性のイメージが踏襲され、ましてその人格を疑うものなど誰もなく、一様に包容力と慈愛に溢れた人物として登場し、多くの場合は無口でその私生活は謎に包まれたままだった。

ところがこの絵本で描かれるサンタ氏は、世界中の子どもたちに愛される男のカリスマ性なんぞ皆無の単なる「働くおじさん」なのだ。
そしてこのおじさん、従来の威厳と慈愛と仕事への誇りに満ちた人格者のイメージには程遠く、とにかくやたらと愚痴っぽい。コマ割りでセリフの多い絵本だが、実にその9割が年に一度の大仕事に対する愚痴や文句なのだから笑ってしまう。確かに骨の折れる仕事だろうが、何もそこまで義務感丸出しに嫌々やらなくても、と思うぐらい、仕事中の不機嫌な独白が延々と続き、挙句その労をねぎらう子どもたちからのささやかなプレゼントにさえケチをつける始末・・。

この絵本の低評価レビューで「子どもたちの夢を壊す」というものを見たことがあるが、確かに自分の手元のプレゼントがこんな風に不機嫌なオッサンがやっつけ仕事で届けてくれたものだと知ったら、無邪気な小さい人たちの中には、がっかりする子もいるかも知れない。
ちなみに私がこの絵本に出会ったのは小学校高学年の頃だっただろうか。早くも大人に対する不信感をムクムクと募らせていた私はこの絵本のサンタを見て「ほらやっぱり!そうでしょうそうでしょう・・・」と膝を打ちたいような気持ちになり、むしろとても楽しくうれしくなったものだった。
その後も繰り返し折りに触れ読み返していたものだが、自分が大人になるにつれ、見どころ味わいどころが違ってくるのも面白い絵本だと思う。今の私にとっては、仕事中の彼よりもその前後に描かれる私生活描写に興味が惹かれる。長年のやもめ生活ならではの一人暮らしを愉しむ細々としたこだわりが随所に表れているのは人として愛おしく思うし、イギリス人らしい生活習慣がきっちり描かれていることから作者ブリッグズの日常生活やその生真面目な人となりを想像するのも楽しい。

絵本の終盤、一年分の仕事を終えて嬉しいベッドタイムを迎えた彼が満ち足りた表情で寝室に運ぶトレーの上には、禁断のお夜食と共に湯たんぽが。こんな細かい描写がなんとも微笑ましい。
私も今夜あたりは湯たんぽを引っ張り出して、冷えを撃退しつつ南の島でのバカンスを夢みよう。

【キャラクターに惚れる絵本の過去ログ】
posted by えほんうるふ at 10:06 | Comment(0) | キャラクターに惚れる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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