2017年04月25日

笑える絵本と笑えない現実

もっとおおきな たいほうを (こどものとも絵本)もっとおおきな たいほうを (こどものとも絵本)
二見正直

福音館書店 2009-11-10

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自分では季節感ぐらいしか気にしていないつもりなのだが、月に一度の大人絵本会のお題作を発表する度に、「タイムリーですね」と言われることが多い。
今回の絵本も、最初に読んだ時から面白いなぁと気に入って、いつかは皆で語りたいと候補に入れておいたものなのだが、今回のお題に採り上げたことで、妙にタイムリーな選書になってしまった。
今回に限っては、嬉しくもない偶然なのだが・・・

主人公の王様は、代々持っている立派な大砲を打ちたくて仕方がない。
ついには隣国にいちゃもんをつけ、いきなり大砲をぶっ放すという大胆な威嚇行動に出てご満悦。
ところが敵にあらずと高をくくっていた相手国から思わぬ反撃を受け、あっという間に二国はより仰々しい兵器を作ってはこれ見よがしに国境に配置するという威嚇合戦に突入する。
もっと、もっともっと、もっともっともっと大きな大砲を・・・!
やがて大きさ勝負では埒が明かないと悟った王様は、作戦を変更。
もっと派手にとかもっと面白い形にとか、兵器としての性能からどんどんズレていく大砲。
もはやハリボテと化した双方の大砲がついに打たれたその時、何が起こったか?

とぼけた味の絵柄から緊張感はまるで伝わってこないが、一国の君主が躍起になって国威発揚にいれあげること、ましてそれを隣国と競って暴走していく様がテンポよく描かれている。
それがいかに滑稽でバカバカしいことか子どもでもよく分かる、面白くて興味深い絵本である。

ところで、私がこの絵本と出会ったのはこどものともとして配本された時ではなく、後にその傑作集として改めてハードカバー版が発行された2009年であった。
そしてそれは、奇しくもかの大国でオバマ政権が誕生した年である。
福音館書店のことだから、恐らくは周到にタイミングを見計らってのハードカバー化だったのだろうが、とにかく大国の新リーダーが全面に打ち出した対話路線の外交政策に世界中が注目し、平和への期待が高まっていた時だったと言えよう。
いくらこの絵本の主人公の言動が我が隣国の厄介な君主のそれに重なろうとも、対する相手国のリーダーは少なくともキツネよりは冷静で賢明で、その挑発にやすやすと乗るとは思えなかった。
だからこそ、私もこの絵本はファンタジーとして微笑ましく受け入れ、無邪気に笑っていられたのかも知れない。

ところが、あれから月日は流れ、今や現実の国際情勢がこの絵本をタイムリーだと悠長に笑っていられるほど安穏なものではなくなってしまった。
身勝手極まりない我が隣人の傍若無人な振る舞いはエスカレートする一方で、彼らの敵国たるかの大国のリーダーもまた、個人的には史上最悪とも思えるまさかの人物が担っている有様だ。
その二国に挟まれ、いつ何時有事に至るかと戦々恐々としている我々は、さしずめ小川に棲んでキツネに喰われるばかりだったピンクの魚であろうか。

軍事力を誇示し、兵器の強力さをやたらに吹聴したところで、地球という狭い土俵上で戦っている以上、土俵を壊せば自分の足元だって揺らぐことになる。
お互いそんなことは先刻承知の上での無意味な茶番を演じているのだと思いたいが、何しろ「王様」は常識の通じない相手である。日頃どれほど平穏な日常生活を享受できていても、刃物を所持したキ○ガイが隣に住んでいて引っ越しも出来ないという状況に変わりはなく、この平和がいつまで保たれるのかは誰にも分からない。

絵本の終盤、まぬけな二国が双方に打ち合った大砲はどちらも使い物にならなかった。
王様の大砲はポチャンと目の前の川に落ち、相手国には届かなかった。
果たして、ピンクの魚たちは無事だったろうか。
できそこないの大砲が怪しい生物兵器などでは無かったことを祈ろう。

posted by えほんうるふ at 21:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 笑える絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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