2017年03月23日

ブレない夢、その理想と現実

時計つくりのジョニー時計つくりのジョニー
エドワード・アーディゾーニ Edward Ardizzone

こぐま社 1998-07-01

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小さい頃から絵を描くのが大好きだった長女が、この春から美大に進学することになった。
習い事など何をやらせてもどことなく冷めていて長続きしなかった彼女だが、お絵かきだけは、それこそ暇さえあればという感じで、飽きもせず毎日何かを描いていたような気がする。
とにかく関心の有無の振り幅が激しいというか、自分が好きなことやこだわっていること以外は呆れるほどどうでもいい人なので、親としてはこの子は将来親元を離れてまともに生活できるのだろうかと若干不安に思ってきた。
逆に言えば、この子に興味の無いことをやらせるのは無理というか無駄、というのが最初から明白だったので、進路についても本人に任せていて、結果的にこれまでのところ、全くブレなく我が道を突き進んでいるというわけだ。


子どもの頃に好きだったことを、実際に将来の仕事に繋げられる確率は、どれぐらいのものだろうか。
好きだからといって得意とは限らない。まして想いだけで現実を乗り越えられるほど、世の中は甘くない。
そもそも人は成長と共に趣味趣向もどんどん変わるのが普通だから、幼い頃からただ好きで続けていたことを生業にする夢を叶える人など、せいぜい数パーセントに過ぎないだろう。

その数%の奇跡の人生をストレートに描いた絵本が今日ご紹介する一冊、
「時計つくりのジョニー」である。

主人公のジョニー少年は、ごく幼い頃からものづくりに特別な関心を持っていた。
両親はそんなジョニーの気持ちに寄り添ってはくれなかったが、意志ある少年ジョニーはへこたれない。
ある日、彼は愛読の「大時計のつくりかた」を読み返していて、ついに自分も行動に出ようと思い立つ。
小さなジョニーは自分の思いつきに喜んだが、両親も先生も、そんな彼の挑戦を頭から否定して相手にしてくれない。まして友達はバカにしていじめたり、彼の奮闘を邪魔するばかり。
それでも、傷ついて意気消沈するジョニーをを励ましてくれる人たちが現れ、彼らに支えられてジョニーは立派に大時計を完成させるのだった。
そして、彼の功績は周囲の評価を一変させ、物語ならではのハッピーエンドが待っている。


大好きなことがあって、それに基づく大きな夢を持つ子どもにとっては、なんとうれしく、大きな励ましになる絵本だろうか。
バカにされても笑われても、なかなか人に認めてもらえなくても、決してブレずにひとつのことを好きでいられること。ただ黙々と続けられること。
それが、それだけで立派な才能で、ものすごく幸せなことだということが、大人には分かる。
だから、大人にとってはただ嬉しいだけでなく、(特に「親」や「先生」にとっては耳が痛い部分も多々あり、)ちょっと眩しいような、切ないような気にもさせられる名作だ。


節目の季節である春が来る度に、つい我が子の進路のことを考えてこの手の絵本を選んでしまう。
丁度3年前の3月にも、息子の中学進学を機に、やはり一つだけ好きで好きでたまらないことがある彼の将来の予想について、とある絵本の紹介と共にこんな記事にしたものだった。
面白いことに、あれから息子は部活のバスケに夢中になり、その忙しさにかまけてあんなに好きだった釣りは年に数回行くのがやっと、という状態になった。
そして3年の月日が経った今、彼は私があの頃全く想像もしていなかった進路を模索している。
それは「釣り」「バスケ」という彼の2大関心事のどちらとも関係のない分野だったので、本人の口からそれを聞いた時は家族の誰もが驚いたものだった。

好きなことだからこそ、仕事にしないほうがいい、という考え方もある。
どんなに大好きなことでも、仕事としてやるのと趣味として楽しむのは全く違う。
どんなに大好きでも、それで食べていくには人並み以上の才能と運と覚悟が必要で、その厳しさを予測して最初から諦める人も、途中で思い知って挫折する人も多いだろう。
大好きだったはずのことが、気がつけば義務になり責任になり意地になり、そこに楽しみを見いだせなくなる場合もあるだろう。
ジョニー少年のように、好きなことを極めて周りの援助を得てトントン拍子に独立、だなんて、まさに絵本の中でしかあり得ない都合の良い展開で、だからこそ夢があるのだ。

少年よ大志を抱けと大人は勝手なことを言うけれど、どんな子も、いずれは自分の中の理想と現実に向き合って、自分なりの折り合いをつける日が来る。
息子も、自分の好きなことと将来の仕事を切り離して考えられるだけ、少し大人になったのかも知れない。

さて、娘の方は幸か不幸か、好きなこと一直線のままここまで来て、少なくともあと4年はその道まっしぐらがほぼ確定したところである。
彼女がこれから数年間の大学生活の中で、どんな風にその「好き」を消化し、自分なりの答えを見つけていくのか、とても楽しみだ。


posted by えほんうるふ at 09:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大事なことを教わる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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