2007年06月14日

ヒーロー稼業の悲哀

あんぱんまんあんぱんまん
やなせ たかし

フレーベル館 1976-05
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かなり久々の更新である。読者数も初期値にリセットされたことであろう。
転居から2ヶ月、ようやく新居での日常生活のリズムが定まってきた。
下の子が保育園から幼稚園に転園し、懐かしの「園ママ生活」に復帰。
よって私の苦手な「降園後の親子ぐるみのおつきあい」もめでたく復活。
そして何組かの親子と家を行き来するうちに気が付いたのは、親(私)の興味の偏りがそのまま育児に反映する我が家の怪しさである。
なにしろ息子の友達が持っているようなオモチャが我が家には無い。
ポケモンカードも、ムシキングも、プレステもDSもなければ、音や光の出る戦いごっこの武器もない。
ナゼ無いのかと言えば、それらは私の趣味ではないからだ。
要するに私は自分の趣味を幼い我が子に押しつける鬼母なのだ(爆)。
  
まだ上の子が1歳にも満たない頃、ママ友と「アンパンマンを我が家に受け入れるか否か」で真剣に議論したことがある。
彼女も私と同じく自分の好みがはっきりしている女性で、気を抜くと家中に入り込むキャラクターグッズを警戒していた。
結局その時は満場一致で(二人だが)
「アンパンマンは著しく我々の美意識に反する。よって断固却下」
という結論に至ったが、その後まもなく我々の鉄壁は老親から孫へのプレゼント攻撃によりあっさり崩壊した(笑)。

「美しくない」という身も蓋もない理由で出入り禁止となったものの、唯一例外的に私自身が家に持ち込んだアンパンマンがいる。
それが、やなせたかし氏の原作絵本「あんぱんまん」である。

確か小学校低学年の頃だ。近所の歯医者の待合室にその絵本はあった。
アンパン好きの私は一も二もなくそのタイトルに引き寄せられ、手にとって一気読みした感想はただ「私もあんぱんまん食べたい!」
焦げ目のしっかり付いた手作り感溢れるそのアンパンの顔は、子供心に実においしそうだったのだ。
(それに比べて大量生産の工業製品のようなアニメのアンパンマンの味気なさといったら・・) 
無論ヒーローとしてのあんぱんまんの存在理由やその行動にも何の疑問も持たなかった。

だが、オトナになって再会したこの絵本は実にツッコミどころ満載だった。

アンパンマンの公式サイトによると、この作品のテーマは
「傷つくことを覚悟しなくては正義は行えないということと、献身と自己犠牲」なんだとか。
冷静に考えるとかなーりグロテスクな手法とはいえ、確かに弱者の為に文字通り我が身を差し出すあんぱんまんの姿にはヒーローらしい正義感が溢れている。
でもそれをわざわざ作り手が献身だの自己犠牲だのと美辞麗句で祭りあげるのは興醒めというものだ。
ヒーローがそれを言っちゃあおしめえよ!
だいたいこの捨て身のヒーローの「傷」はやたら安直に復元されるのだ。
そのせいか我が身の一部を失っても平然としている。
もっとも、そうでないと話が猟奇ホラーになってしまうが・・(爆)
これでは肝心の「傷つくことを覚悟したヒーローの悲壮感」が全く伝わってこない。「さすがあんぱんだけに・・・やっぱり大甘だな!」
なんてつまらんオヤジギャグの一つも言いたくなってくる。

「傷つくことを覚悟しなくては…」という文章を読んで私が思い浮かべたのは、ワイルド作の「幸福な王子」である。
フランダースの犬並みに泣ける有名な童話である。知らない人は今すぐ検索の価値有りだ。
この話のヒーローは本気で捨て身である。
その一途さは地味ながら鬼気迫るものがあり、幼い私は挿絵を直視できなかった。
この話を読んだ後にアンパンマンを再読するとへそで茶が湧かせること請け合いである。

ということで私が思う「あんぱんまん」の真のテーマはこれだ。

「マンネリに耐える覚悟がなければヒーローなんてやってられない」

この点に関し、アンパンマンは偉大である。何しろただ喰われるために生き、淡々とその使命を全うしているのだから。


ところでうちのコドモ達(小3女子&年長男子)に「ヒーローと言えば?」と聞くと、
「デラックスファイター(@秘密結社鷹の爪)」という答が返ってくる。
いかん、こんなところにも親の趣味の影響が・・・(汗)
ハッキリ言って彼らが今このネタで同年代の友達と盛り上がれる可能性はかなり低い。
だが、他人と違うことを良しとする我が家の育児の信条にはかなっている。
よしよし、うちの子らしく育っているぞとほくそ笑む父母なのであった。
posted by えほんうるふ at 00:30 | Comment(20) | TrackBack(0) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わ〜、復活ですね!
長らくお待ちしておりました。
そしてとうとうあの街から去られたのですね。
お引っ越し、おめでとうございますー!
あんぱんまんは、大人の痛い部分を刺激されるようで。。
大昔にアニメかなにかで見ていて、
なんだかもう忘れてしまいましたが
号泣してしまいましたよ。。大甘なワタシ。。。

Posted by 007 at 2007年06月14日 22:28
>007さん

早速のコメントありがとうございます!
まだ読んでくれる人いたんだーなんて、素直に感激しております。

あんぱんまんで号泣できる007さんは、きっと心が綺麗なんですよ。私なんてもう、汚れまくってますから(爆)

引越はいろいろ懸念材料もあったんですが、思い切って決行して吉でした。
都心からのアクセスが良くなったので、お近くにお越しの際は是非お茶しに寄ってくださいね。
Posted by えほんうるふ at 2007年06月15日 00:09
更新おめでとうございます!そして引越し完了おめでとうございます。
園ママ生活未経験のたぬきです。
アンパンマン、うちは一時全面降伏状態でした。でも、明らかにバイキンマンが悪くないときでもアンパンマンが悪いと決めたら殴って良いなんておかしくないか?と思ってたわ。実際アンパンマンにはまりすぎて
「自分が正義だから気に入らないと思ったら殴って良い」と思ってる子供の相談もあったし。
でもムシキングは排除。だって夜中に虫の模型が置いてあるとゴ○ブリかと思って心底びびるんだもん!それにあのキングのお話のおかげで外来種が入り込み日本のカブトムシに取り返しの付かない交雑がおき始めているのもキライ。と、言うことでうちも親の好みを押し付ける鬼母です(爆)
そんなうちですが段々と娘によってピンク色に侵食されて来てます…どっちが勝つかな〜
Posted by たぬき at 2007年06月15日 06:26
まってました☆
アンパンマンの誕生とバイキンマンの誕生は同じ日なんだよ。by図書館で借りた本
毎回思うあんぱんまん。食べさせるな!ぬらすな!代えを持っておけ!。。そうしたら夢も希望もないのかなぁ?笑

引越しおつかれさま。遊びに行きますよぉ〜。うるさいのをいっぱい連れておしかけます。
こんなサービスはじめました。遊びにきてね。
「ハラペッコ」
http://www.harapecco.com/
Posted by すまいる at 2007年06月15日 11:17
お待ちしてました〜ご無沙汰です。
ほんとに不思議な漫画ですよ、アンパンマン。
子供の頃は、なぜ頭をまるごと取り替えてもずっと記憶があるのかなとか、だれかに食べられなくても毎日のように頭を取り替えなければ新鮮じゃなくなるよなぁとかまじめに考えたものです(笑)

>「マンネリに耐える覚悟がなければヒーローなんてやってられない」

うんうん、とにかく日本人はマンネリドラマが好きですからねー、水戸黄門、寅さん、毎週印籠をだしたり、毎回失恋しなけりゃいけない!、「男はつらいよ〜」ですね(笑)
Posted by J.T. at 2007年06月16日 01:41
>たぬきさん

こんにちは。ご無沙汰しちゃってます。
そうそう、アンパンマンの正義ってのもなんだかなーと思います。テレビでの放映を何回か観たことがあるんですが、献身と自己犠牲どころか、正義を盾に堂々と暴力をふるう者になっちゃってて、オイオイと思いました。

ムシキングも複雑ですね・・ポケモンもそうだけど、要はより強いペットを手に入れて他人のペットと戦わせるわけですよね。やってることは闘牛・闘犬・闘鶏と同じ。日本のコドモ達は恵まれすぎでみんな退屈していて、戦が見たくて仕方がないのかも知れません。
Posted by えほんうるふ at 2007年06月16日 10:14
>すまいるさん

誕生日同じなんだ。知らなかった。
「代えを持っておけ!」ってのに笑いました。なんかすまいるらしい・・

そうそう、上京したら絶対寄ってね。今度は駅から近いので楽に来られるよ。
エアポートリムジンを使えば羽田から我が家までほぼ直行も出来ます(笑)

harapecco、面白いね!ナゼかウチからアクセスするとちょっと重いけど(^^;)
ダーリンと始めたの? beta版なら色々意見を言っても良いのかしら。夫にも紹介しておきますわ。
後でじっくり読んで何か投稿しに行くねー♪
Posted by えほんうるふ at 2007年06月16日 10:14
>J.T.さん

ご無沙汰してました。最近はいつもこのご挨拶からですね。
おお、確かにアンパンマンの賞味期限って気になりますね。いったいいつの頭だよ!って。酒種使ってるから腐りにくいとか実は工夫があったりして(笑)

そうそう、ヒーローって本当に辛抱強いよなーって思います。一つの必殺技を極めているわけで、言わば職人ですね。で、必殺技をすぐに出しちゃ話が終わっちゃうので毎回紆余曲折を経てようやく伝家の宝刀を・・というパターンですね。
そこいくと我が家のコドモ達のお気に入りの「デラックスファイター」は新しいですよ。なんせ登場直後に間髪入れず必殺技ですから。あちこちに動画があるので見てみて下さい。
Posted by えほんうるふ at 2007年06月16日 10:18
ご無沙汰してます。そしてお引越しおめでとうございます。

私もアンパンマン、いまいち馴染めない。キャラ的には悪役のバイキンマンやドキンちゃんのほうが可愛いですよね。実はドラえもんやサザエさんも好きではない非国民なんですよ(笑)だったらクレヨンしんちゃんのほうがいいかも・・・

我が家にはアンパンマングッズはありませんでしたが、上の子の赤ちゃんの頃に似ているという理由だけで「らーめん天使」の絵本だけはありました。そのかわりポケモンは家中あふれていたな。

何かで読んだんですが、日本の母親は丸っこいものが好きなんだそうです。とんがったキャラは子どもが喜んでも母親が却下してしまうので流行らないんだとか。ドラえもんやアンパンマンみたいな丸っこくてほのぼのしたものが安心して子どもに与えられると多くの母親が選択した結果こういう状態になったんだとか・・・だから結局、冠絶的にではかれ大多数の母親は子どもに自分の趣味を押し付けてるんですよ。
Posted by ぴぐもん at 2007年06月17日 15:54
>ぴぐもんさん

お久しぶりです。
日本の母親の丸っこいもの好きですか〜。面白いですね〜。
ドラえもんもアンパンマンも嫌いな私は何人なんだ(笑)
丸っこくてほのぼのって言うより、オッサン臭いと思ってしまう…

ひょっとしてこういうのって、自分の父親のイメージと重なって安心感を持つ人が多いんじゃないでしょうか。
そう言えば、私の父は中年太りとは無縁の痩せ型でした。めったに子連れで行動せず一緒に歩けば「子持ちに見られるからもうちょっと離れて歩け」とのたまう、全然子供心に安心できる親じゃなかったんですが、なかなかイカしたちょい悪オヤジでした。
実は私、屈折したファザコンなのかも(爆)
Posted by えほんうるふ at 2007年06月19日 02:32
久しぶりの『うるふ節』ですねえ。
アンパンマンと幼稚園ワールドという、誰でも取り付きやすい題材を選択しておいて、
実は全く読者にこびない自分の世界を構築しきっている文章のスタイル。
職人芸を感じます。昔の文体よりハードボイルドです。
こんな能力のある人が幼稚園のお母さん連中のなかで、
あの無意味な馴れ合いの時間を過ごしているなんて猫に小判、
いや宝の持ち腐れでしょう。
参院選に立候補してもらって偏ったマニュフェストを読んで
ほくそえみたいと思うのは僕だけではないでしょう。
Posted by 絵本おじさん at 2007年06月21日 10:00
>絵本おじさん

こんにちは。
さすが絵本おじさんは人を褒めるのが上手ですね。それこそ職人芸を感じますよ(笑)。いったい今まで何人の「職人」がその言葉に乗せられたのでしょうか・・私はお尻の重いブタなのでそうそう木には登りませんが(爆)
きっとプロデュース業が天職なのでしょうね。これからも、お仕事の成功をナナメから応援しています。
Posted by えほんうるふ at 2007年06月23日 15:15
えほんうるふさん、おじゃまします♪
お待ちしてました!という割には、3週間遅れのご訪問になっちゃいました(^^ゞ
が、楽しませていただきました。
『あんぱんまん』の表紙画を見た瞬間、これをどう料理するのだろう?!とわくわく。
「マンネリ」は、水戸黄門とか見ている世代の方も好きなんですよね。
Posted by わかな at 2007年07月07日 10:55
えほんうるふさん

「あんぱんまん」はいまだに健在だったんだ。!
もう成人したわが子が幼稚園の頃、それはそれは
「あんぱんまん」は人気者でした。

今日、読み聞かせで図書室のある地域センターに
行った時の話です。
「あんぱんまん」の本の見返しに、貸出期限票
が貼ってあって、「あんぱんまん」が見えない
カウンター前でごねる女の子
職員が期限票をはがして、別の場所に貼りなおす
と「どうもありがとう」とにっこり・・・

この図書室では一回3冊借りることが出来るのだが、黙っていると孫は3冊とも「あんぱんまん」にしてしまうとかで
「あんぱんまんの本は一冊だけにして、あと2冊
は違う本にしましょ」と説得しているおばあちゃん。まあ〜微笑ましい。。。
あー、私も子どもにあたえる本や玩具を
選んでいた時期があったんだー。
懐かしい。
Posted by noa at 2007年07月10日 17:33
>わかなさん

いらっしゃいませ、わかなさん。
私の返コメントもいいかげん遅くてスミマセン(^^;)
時代劇はそうですね全てが「お約束」の世界ですね。
予測の付かない現実の生活に疲れて、先の分かるフィクションの世界で安心したい人が多いのでしょうか。

>noaさん

こんにちは。お返事&対応が遅くなってしまい、すみませんでした。
いただいたコメントは削除するほどの乱れ文(?)とは思えなかったので、ダブっていると思われる部分だけ部分的に修正させていただきました。勝手にごめんなさいね。

あんぱんまん、人気ですね〜。
特にその女の子にとってはよっぽどあんぱんまんが「ツボ」だったんですね(^^;)
何であれ、そんなに入れこむことができる対象があるのは素敵なことですよね。
恋人に夢中の娘に「あんな男のどこがいいの?」と聞くのが野暮なように、その子に「あんぱんまんのどこが好きなの?」なんて聞くのは不毛でしょうね。
願わくば、彼女とあんぱんまんの蜜月が末永く続きますように。
Posted by えほんうるふ at 2007年07月15日 17:56
気付くのが遅くなりました。
えほんうるふさん、お久しぶりです。
そして、久々に大爆笑させていただきました。
あんぱんまん、わりと見ているのですが、
かなりグロテスクで、大人になってみると突っ込みどころ満載というのはすごく、分かります。
ドラゴンボール然り、ヒーローとは気色悪いくらい長生きで、死ぬことを否定した生き物なのです。
Posted by mine at 2007年07月17日 17:33
>mineさん

こんにちは。こちらこそ、ご無沙汰しております!
遊びに来ていただいて嬉しいです。

ドラゴンボールは原作のコミックを数冊読んだ記憶があるのですが、アニメはほとんど見たことがないのです。やっぱり死にませんか(^^;)

絶対死ぬようなシーンでも全然死なないとか、死んでもすぐ復活するとか、ヒーローって本当に大変ですよね。
100万回生きたねこのように、いつか本望を遂げたら安らかな眠りが約束されているのかしら。合掌。
Posted by えほんうるふ at 2007年07月29日 00:08
はじめまして。まこりんです。
『大人読み』で辛口でも愛ある(?)絵本書評が新鮮で面白くて一気にいろいろ読んじゃいました^^

『あんぱんまん』私も子供の頃何度も読みました。
今のアニメと違って食べさせ方も直接顔をかじらせたり、ほとんど顔がない状態で空を飛んだりちょっとひきますよね(^^;

子供を持つ母となってアニメを見たら突っ込みどころ満載でびっくり(^^;
ちょっと顔が汚れたら「顔が汚れて力が出ないよ〜」って・・・
実はあんまり強くないだろう!って感じです(^^;
『アンパンマン』は妖精の世界らしいから死なないのかな?
何でもありだし(^^;
息子も5歳となった今はアンパンマンも卒業しつつあるようです。(今はポケモン&ゾロリに夢中(^^;)

また寄らせてもらいます。
リンクもさせてもらいますね。
Posted by まこりん at 2007年10月01日 02:28
>まこりんさん

初めまして。ようこそオトナノトモへ。
初めて付けていただいたコメントなのに、2ヶ月近く経ってからご挨拶する私って・・・(^^;)
スンマセン、ぐーたら管理人なもので。気長におつきあい下さい。

それにしてもアンパンマンが妖精?! よ、妖精・・なんかすごく言葉のイメージとギャップあるんですが・・
でもそれを言ったらムーミンだって妖精でしたね(笑)何でもアリなのね。

そろそろ(いーかげん?)更新しようと思います。
またどうぞ気が向いたときに遊びに来てくださいね。m(_ _)m
Posted by えほんうるふ at 2007年11月26日 09:08
アンパンマンのことなら↓のサイトがおすすめですよ〜♪
『アンパンマンのパン工場』
小さな疑問も大きな疑問も解決(?)できます^^
Posted by まこりん at 2007年11月26日 22:41
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