2016年11月29日

大騒動から何を学ぶか

クリスマスの大そうどう (児童図書館・絵本の部屋)クリスマスの大そうどう (児童図書館・絵本の部屋)
デイビッド シャノン David Shannon

評論社 2007-11

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クリスマスを前に、海の向こうの大国での大騒動に決着が付いた。
超大国故にその全世界の政治経済への影響は計り知れず、想定外過ぎて先が読めない不安も覚えた。
まさかの結末。だと私も思ったものの、紛れもなく、これが今の世界の現実である。
どうしてこうなったのか?を考えることも大事だろうが、それ以上に大事なのはこれからどうするか?だろう。
彼の国の偉い人々はその点、非常に現実的で、賢く行動力のある人もたくさんいるはずだ。
決して楽観視はできなくとも、この想定外な選挙結果がさらに我々が想像しえなかった(いい意味で)想定外な未来へつながることを願ってやまない。

さて、アメリカ・大騒動・クリスマスと来て、ふと思い出したのが本日の絵本。
何しろちょっと膨らませば、まんまハリウッドのクリスマス映画になりそうな、良くも悪くもアメリカ的なストーリーなのである。

クリスマスを前に、ちょっとした思いつきで家族を喜ばせようと、いつもより張り切って飾り付けにとりかかったメリウェザー家のお父さん。
ところが隣人からの思わぬ反応に突如対抗心に火をつけられてしまい、際限のないデコレーション熱に侵され、突っ走った行動に出てしまう。
最初は喜んだものの、次第に困惑する家族。
はじめは賞賛していたご近所さんたちも、何かスイッチが入ってしまったメリウェザー氏のとどまるところを知らぬ暴走ぶりに眉をひそめ、しまいには反目を募らせていく。
そして楽しいはずのクリスマスイブの夜、ついに悲劇が・・・

最初にこの絵本を読んだ時は、なんとなく違和感というか不快感が残った。
心温まるはずのクリスマス絵本なのに、読後に色々と考えてしまい妙に寒々とした気持ちにさせらてしまう、珍しい作品だ。
そもそも、ささやかでも不自由なく家族に囲まれ幸せな家庭を営んでいたはずの善人を絵に描いたような凡庸な主人公が、あまりにも簡単に隣人の挑発に乗り、理性を失ったような行動に出てしまうことが理解できなかった。
そして、その暴走を無責任に煽っていた隣人たちが、手のひらを返したように正義の名のもとに集団での暴挙に出るというのも、とても恐ろしく感じた。

しかし、今一度この絵本を思い出して読み返してみた時、彼の国で実際に起こったあの大騒動とこの絵本の登場人物たちの行動が、何となくリンクしているように思えて、なるほど興味深いと改めて思ったのだ。

おそらくメリウェザー家は決して富裕層ではなく、かといって貧困層でもなく、多くを望まなければ衣食住に困ることもなく平々凡々と生活を営んでいける程度のアメリカの中流家庭なのだろう。
でも、多分メリウェザー氏は実はそんな小市民的な生活に満足はしていなかったのだ。
もっと有名になりたい!人々から賞賛されたい!!という密かな野望が、彼の心の奥底には長年燻っていたのかもしれない。
だからこそ、ちょっとしたきっかけでそのどす黒い野望に火がついてしまったのだろう。
人より目立つセレブを目指して何が悪い。もはや品格や良識などクソ食らえ。
抑圧されていたメリウェザー氏の野望は、一度表に出た途端暴走する。
それはまるで、日頃は堅実な良識派を装っていても、心の奥底ではきらびやかな世界や俗っぽい成功への憧れを捨てきれず、大どんでん返しのような変化を夢見ずにはいられない多くのアメリカの一般市民が、その奥底の気持ちを抑えきれずに、分かりやすい扇動者の言葉に乗ってその一票を託してしまった、という構図にも通じるような気がするのだ。

それでも、この絵本には最後に希望が残されている。
この寛容さと不屈の精神もまた、彼の国の人々の素敵な特性であると私は思っている。
何より、この絵本に描かれているのは子どもではなく、大人の成長物語である。
いくつになっても、人は間違いを犯すし暴走もするだろうが、本人が変わろうと思えば変われないことはないはずなのだ。
そんなわけで、初見はあまり印象のよくなかったこの絵本を、私は改めて採り上げ多くの人に紹介したくなったのだった。

イブの夜、ドナルド・”スクルージ”・トランプの元に、亡霊マーロウが現れて、彼が突如改心して大国の長に相応しい善意あふれる人格者に生まれ変わる・・・
なーんてことはあり得ないにしても、クリスマスだもの。
物語めいた夢を持ったっていいだろう。

posted by えほんうるふ at 12:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大事なことを教わる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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