梅雨である。
なぜ梅雨が鬱陶しいかというと、あらゆるモノを乾いた状態にしておく為に、いちいち余計な配慮が必要になるからである。
中でも特に面倒なのがいかにコドモらを濡らさずに移動させるかという問題だ。何しろ奴等は放っておけば嬉々として雨に打たれ、水たまりに突進していく。後に残されるのが山のような洗濯物だけならまだしも、下手すると翌朝あたりに突然の発熱というオマケが付くので、油断がならない。
本当は、オトナだって時には雨に打たれたい。それも通り雨のようなささやかな水滴ではなく、滝のような雨に打たれてずぶ濡れになってしまいたい。
しかし、オトナがそれをやるにはかなり勇気がいる。何故なら、分別あるオトナは雨に濡れてはならないという不文律が日本(の、特に都会)にはびこっているからである。これにより、人は雨に濡れているオトナを見ると
1.雨具を忘れたうえに臨時に入手できなかった間の悪い人
2.失恋などで周りが見えなくなっている可哀想な人
3.近づいてはいけないアブナイ人
のどれかと見なす。間違っても「自然と戯れるピュアな人」などと思ってはもらえない。
この絵本では、二人のコドモがそれこそ無邪気に思う存分雨を楽しんでいて、うらやましくなる。長靴の中に水が入ると歩くたびにチャプチャプと音がして、気持ち悪いんだけど笑ってしまう、あの感覚を思い出す。ちょっとした思いつきからワクワクするような経験まで、バラエティに富んだ雨を楽しむ方法が鮮やかに描写されている。
絵本の最後には夜まで降り続いた雨がやんで美しい夜明けを迎える素晴らしい情景が描かれている。この展開だけでも一見の価値がある作品である。
この絵本の作者ピーター・スピアー氏は、この作品以外にも子どもの自由奔放さをテーマにした絵本をいくつか出している。作中のコドモたちの行動はしばしば天真爛漫を通り越して悪魔の仕業に思えるほど大胆なのだが、彼らに接する作中のオトナ達は驚くほど寛容なのである。この「雨、あめ」でも、しまいには傘もぶっ壊しずぶ濡れになって帰宅したコドモたちを、迎えた母親は怒るどころかすぐに温かい風呂場へ通し、笑顔で洗濯物の山を受け取り、ひとっ風呂浴びてきれいさっぱりしたコドモたちにすかさず温かいおやつを出す。ありえないぐらい良くできた母親である。できることなら私もそんな母親になりたい。というか、私もこんな母親に育てられたかった。
また、スピアー氏の作品はいつも素晴らしい観察眼で隅々まで細かく描き込んであるので、小さな発見にクスリとさせられることも多い。そう言えば、うちの坊主も放っておくといつも半ケツ丸出しだ。
オトナになっても日頃の分別を忘れておおっぴらに自然と戯れる方法が一つだけある。それは、幼いコドモの活動に便乗させてもらうことだ。保護者のふりをして自分が思いっきり楽しむのである。
よし、今年こそ梅雨が明ける前に親子で「雨、あめ」ごっこをしに行こう。
【この絵本に関するお気に入りあれこれ】
・絵本でほっとタイム♪/空さんのどこまでも寛大な母親に敬意を表する気持ちに共感!
【オトナが地団駄を踏む絵本の過去ログ】
めっちゃ。おもしろかったー
あたしも雨にうたれるのが好きです。
うちは13階なので大雨が降ると人目にあたらず
ベランダで雨にあたります。特に台風とか
たのしいです。
ちょっとおかしな人かもしれません。
今度この絵本を読みたいです。
コメント嬉しかったです。
私も台風大好きです。大雨洪水警報が出ると不謹慎ながらワクワクしちゃいます。必要ないのにいそいそと数日分の食料を買い出しに行ってしまうはしゃぎっぷりです。
我が家は6階ですが最上階でベランダに屋根がないので、豪雨時の臨場感は格別です。でも下手に外へ出ると雨どころか雷に当たる危険があるので要注意です。
ぼくも傘嫌いの雨濡らし、です。(変な大人かも)
帰宅時なら、ずぶ濡れでもいいかなー、なんて。
なるほど子どもは、汚れの既得権がありまする。
雨に濡れない大人は、酒に濡れるのやもしれません。
スピアーの絵は、雨の瑞々しさをよく表わしてますねー。
えほんうるふさんのカテゴリー「オトナが地団駄を踏む絵本」に笑っちゃいました!
まさに、我が家は先週そうだったのです。長靴出してあるのに紐靴はいて、紐がほどけてるのにワザと水溜りに紐を入れて・・・。「ほら。おもしろいよ。紐の水で絵がかけるよ」だって!!
お陰で、幼稚園に着いたらそのまま靴下と靴を私が持って帰ることに。そして、今度こそ長靴だっと思ったら、お迎えの時には雨は止んで・・・。
ええぇ、地団駄踏みましたとも!!
雨に濡れるのはオトナの道楽としては上級ですね。ずぶ濡れで帰った私に熱い風呂と乾いた服を用意し、すべての後始末を引き受けてくれる使用人でもいれば私も是非やりたい(笑)。
ところで月形半平太の「春雨じゃ、濡れて参ろう」という名セリフを私は勝手に風流な物言いと解釈していたのですが、単に霧雨では傘を差してもどうせ濡れるから、ということらしいです。なぁんだ。
>ろみぃさん
わっはっは。毎日の育児お疲れ様です。
紐の水で絵を描くなんて、さすがコドモ様は目の付け所が違いますね。素敵。こういうところにオトナの私は地団駄踏んでしまうのです。
ちなみにこの絵本に関する私の「地団駄ポイント(なんだそりゃ)」は、「オマエらばっかり楽しみやがってー!私だってやりたいのに!」というところです。
実は、以前から読ませていただいていました。
ほ〜、おもしろい〜、なるほど〜、てなかんじで、すごく楽しませてもらっています。
私も息子も雨大好きです☆ 今日も、ふたりでながぐつをはき、みずたまりを選びながら歩きました♪雨水口をのぞいたり、楽しかった☆
こどものころから、台風も大好き。不謹慎なんでしょうけど、わくわくですよね〜。
どうぞ、これからもよろしくお願いします。更新、楽しみにしていま〜す!
お気に入りに加えさせてください。不都合がありましたら、おっしゃってくださいね。
そして、祭り ではないけど、穏やかな雰囲気のこの絵本の展開を読んでみたくなりました。
>のんちゃん
おかしな人だわ、そりゃ。ハハハ
家の方では、雨が降ると草のにお〜いが漂います。くさっ
こちらこそ、コメント付けて頂けて光栄です。このブログで、私の絵本に対する無意味な情熱に共感してくださる方が少なからずいることを知って、嬉しく思うと同時に世間は広いなと驚いています。ブログ様々。
私の方も、息子の好きなのりもの系絵本の書評が豊富なプチトランさんのブログに出会えて小躍りしました。
早速リンクさせていただきましたので、どうぞよろしくお願いします。
>高倉 健さん
ちょうどパソコンに向かってメールを書いているときに「高倉 健さんからコメントがきています」とメッセージが入り、ちょっとビビリました。
このお名前でネットに足跡を残すと、よく驚かれませんか?
雨が降る=祭りってすごく素敵な発想ですね。
sense of wonderあふれるコドモたちにとっては、全ての自然現象が祭りなのかも知れません。つくづくうらやましい人たちです。
いや、でも、もうちょっと、書き直して送ろうかな、とか、いろいろと・・・・!(笑)
この絵本のすごさは、やっぱり母親の存在を抜かしては語れないと思うのですが、私はそれをうまくかけなくって!
そうそう、ハンケツ、私も気になってました〜。
うちの息子3歳も、ハンケツ、しょっちゅうです。
今日も幼稚園に迎えに行くと、ハンケツでしたわ〜。
えほんうるふさん「雨、あめ」ごっこを実行しました??
私は、ささやかながら、息子とおそろいの、ながーい長靴をはいて、みずたまりにざぶざぶ入るくらいの、ちゃちい「雨、あめ」ごっこを、ひそかに楽しんでいます☆わざと、たくさんみずたまりのある道を選んだりして☆
うちのブログは過疎地なのでそんなに悩まずお気軽にTBしてください(笑)。
「雨、あめ」ごっこ、まだ実行できてないのです。どうせやるならどしゃ降りの日にやろうと思うのですが、どうも子どもと外出できる時間帯にタイミングが合わなくて。まあまだまだ梅雨は続きそうだしダメなら台風シーズンという手もありますから♪
来春1月、群馬県高崎で絵本原画展を開催します。
この絵本の原画がくるので、その下準備にスピアーのことを調べてたら、
えほんうるふさんに行き当たりました。
「雨、あめ」だいすきです。
雨あそびもだいすきです。
楽しく読ませていただきました。ありがとうございました。
オトナノトモへようこそ。
ディティール描き込み職人スピアーの原画、是非見たいところですが、高崎か〜・・新幹線で行く距離ですが、まだ日があるので何とかなるかも知れません。お知らせ頂きありがとうございました。今後もし詳細な日時や場所が決まりましたらまたトラックバックでもして頂けると助かります。
当方も絵本好きばかりの会です。
もしお時間ありましたら、「時をつむぐ会」のHPを
ご覧になってくださいね。
絵本の勉強会やら原画展やら講演会やら・・・あります。
来年は第12回絵本原画展で、評論社の協力を得て開催しますので、
ご期待くださいまし。
高崎という一地方からのささやかに文化を発信!
という気持ちでおります。