2015年04月22日

今の自分にできること

ペレのあたらしいふく (世界傑作絵本シリーズ―スウェーデンの絵本)ペレのあたらしいふく (世界傑作絵本シリーズ―スウェーデンの絵本)
エルサ・ベスコフ

福音館書店 1976-02-03

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現代日本の都会に住む私は、
生活必需品はほぼ不自由なく手に入る環境にいる。
そうしてごく当たり前に便利で快適な生活をしているけれど
思えば私が日々享受しているモノやサービスの全ては、
計り知れないほど多くの人の手を介して私のもとに届いたものである。
恐らく、今私の身の回りにある大量のもののなかで、
私がゼロから自分一人の力で作り出せるものなど、
ひとつもないだろう。

今日の絵本「ペレのあたらしいふく」が制作されたのは、
なんと今から100年以上前の1910年代のスウェーデン。
衣食住の全てが人の手を介し、目に見えるところで回っていた時代。
もちろん、今とは比べ物にならないほど、
人々は日々の暮らしに骨を折っていただろうに、
そこに描かれる地に足の着いた生活の美しいことといったら!

そんな時代のスウェーデンの片田舎の農村(と思われる地)
に暮らすペレ少年は、子羊を一匹飼っていた。
彼はその羊を自分だけのものとして、
全ての世話を自分一人で(ここ大事)取り仕切っていた。

ある日ペレ少年は、自分の成長と共に服が小さくなったことに気づく。

ここで、現代日本の同じ年頃の子供たちならきっと、
親に新しい服がほしいと訴え、
親は瞬時に新しい服を購入して子に与えるだろう。
いや、そもそも子供自身がそれを要望する以前に、
親の方が気がついてさっさと新しい服を着せるのかもしれない。

ところがペレ少年は、全く違う、驚きの行動に出る。
幼い彼は、自分で不足に気付き、それを解消するために
自分にできることを考え、さっそく取り掛かったのだ。
つまり、自分が持っている羊の毛を新しい服の素材とすべく、
自らそれを刈り取り、しかるべき工程を辿っていったのである。

ここからの、ペレの羊の原毛が多くの人の手を介し加工され、
ついに新しい素敵なウールのスーツが完成するまでの
丁寧かつ無駄のない描写は、まったく見事としか言い様がない。
人々の手仕事が連なり、ゼロから何かが作り出される様子は、
何度見ても本当にワクワクするものだ。

もちろん、幼いペレにできることは限られていた。
だからこそ彼は、自分でできることは自分でやり、
出来ないことは、人にやってもらう代わりに、
その人に自分が出来る範囲の労働力を差し出したのである。
なんという賢さ。なんという生活力。
DASH村のお兄さん(おじさん?)たちも顔負けである。
ひょっとすると、今あなたの隣にいるお金持ちの男性よりも、
ペレは頼りになる男かも知れない。

お金さえあれば何でもできる時代に生きる便利さは、
お金がないと何もできない人間になりさがるリスクを伴う。
そのことに気がついて、思わずぢっと手を見る私であった。


その一方で、この絵本の持つ力強くあたたかいメッセージは、
読む度に、子どものみならず大人をも励ましてくれるのだ。

いや、むしろそれは、大人の心にこそ響くものかも知れない。

口には出さなくとも、大人は大人なりに、
きっと誰しもが無邪気で大胆な夢を持っている。
けれど、己の無力さを知るほどに、
やりたいことがあっても、欲しいものがあっても、
どうせ自分の力では到底及ばないものと、
最初からあきらめてしまうようになる。
それこそが大人の分別として、自分を納得させるようになる。

けれど、私はこのペレのお話を読む度に、
どれほど大それた、人に話せば笑われるような夢でも、
とにかく今自分にやれることをやる、という
シンプルで間違いのないスタート地点を照らされる思いがして、
まるで恐れを知らぬこどものように、
根拠の無い勇気と元気が湧いてくるのだ。

今の自分にできないことを思い悩むより、
今の自分にできることを見つけて、夢中でやってみる。
きっとその方が、人生は楽しい。

posted by えほんうるふ at 16:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 元気が出る絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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