2015年02月18日

美しき伝説のバカップル

キューピッドとプシケーキューピッドとプシケー
ウォルター ペーター作 エロール ル・カイン絵

ほるぷ出版 1990-08-20

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私の若い友人に、とてもキュートな女性がいる。
容姿端麗、人当たりも抜群で話題も豊富の彼女を、
周りの男性陣が放っておくわけもなく、
まあ常に恋バナには事欠かない様子である。

そんな彼女は私と顔を合わせる度に、
その整った額を歪め、はぁぁと大きなため息をついて語り始める。

「もおー、聞いてくださいよ!彼ったらぁ・・・」

という調子で始まるその話の8割以上は、
いかに彼が困ったちゃん野郎か、
そんな彼に何故か尽くしてしまう自分がいかにアホか、
さらにはそんなアホ男子の彼が
どれほど自分にぞっこんでいるか、
という話に終始する。
要するにほとんどが愚痴を装ったノロケである。
なによりご苦労なことに、
彼女はこういった日々を過ごしつつ
時に第三の男の出現と消失を交えつつ、
結局は同じ相手と別れたりくっついたりを繰り返すのである。

彼女が別れの危機を口にする度に、
私はそれなりに真剣に話を聞き、
時にはごく常識的かつ率直なアドバイスを伝えたりもする。
すると、
やっぱりそうですよね、人生の先輩さすがですぅー!と、
その時はさも有り難くそれを拝聴する素振りを見せつつ、
結局は彼女は全てを聞いていなかったかのごとく
あっけなく、悪びれずに
「アンタそれやっちゃ意味ないでしょ」という行動に出る。

嗚呼、なんというおばかさん。

さて、意外に思われるかも知れないが、
こういう分かりやすいおバカさん女子が、私は嫌いではない。
恋する人間は概ねバカである、ということを
こんなにも無防備に体現してしまっている人は
今や私の身近には珍しく、
むしろ清々しいというか、羨ましいような気すらする。

それほどまでに、恋は人を愚かにするのであろう。
だからこそ、その成就は得難く、
全ての人間にとって普遍的な憧れの対象であり続けたのだろう。

ちょっと話を美化しすぎだろうか?
いいのだ、今日はそういう方向で行くと決めたのだ(笑)


恐らく人間がもっと素直ないきものだった頃の
ずっとずっと昔の先人たちは、
人が根源的な欲求に基づいて至上の愛を求める気持ちや、
その抗し難い魅力を神聖なるものとして最大限に評価し、
その愚かしさをも美しく語り継いできた。
その大いなる遺産を今でも感じ取れる素敵な絵本がある。

今日ご紹介する絵本「キューピッドとプシケー」は、
今から100年ほど前にイギリスの作家ウォルター・ペーターが
ギリシャ、ローマ時代の神話を元に書いた物語に、
「イメージの魔術師」との異名を持つ稀代の挿絵画家、
エロール・ル・カインが美しく幻想的な挿絵をつけた作品である。

正直なところ、挿絵の美しさに心惹かれて手にとったこの作品を
読み終えた私が最初に感じたことはまさに、
うっとり〜、どころか、
嗚呼、 なんというおバカさん!
という、呆れに似た気持ちだった。

その半ば呆然とした気持ちのまま後書きを読んでみたら、
そこにもやっぱり主人公たちがいかにアホかということが
述べられていて笑ってしまった。
でもそれを超えて受け入れたくなる美がそこにはあると。

いずれにしろ、外野がどれほどバカなふたりと嘲ろうと
周りが見えぬほど幸せな二人にとってはどうでもいいことなのだ。
馬鹿になれるほどの恋をしている彼らは
誰が何と言おうと美しく、最強なのである。


ところが今や人々はあまりにも忙しくなり、
あまりにも多くの暇つぶしを手に入れてしまった。
おかげで、恋の歓喜と官能とを手に入れるために
ややこしく面倒なあれやこれやを受け入れたり、
愚かで不条理な自分に成り下がるぐらいなら、
最初から手を出さずにお利口さんでいようという
賢い小心者ばかりが増えてしまったのだろうか。

それでも、この絵本のヒロインのように、
運命の恋の前では、
「 経験から何も学ばず、いつまで経っても賢くならない。」
どんな人間もそうなってしまうのかもしれない。
いや、私はそうであって欲しいと思う。
その方が、この世界が美しく見えるような気がするから。

posted by えほんうるふ at 22:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | うっとりする絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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