2014年10月24日

いつか木になれるその日まで

きはなんにもいわないのきはなんにもいわないの
片山 健

復刊ドットコム 2014-09-19

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我が息子はいわゆる脳内ダダ漏れタイプの人間である。
彼は、目に入るものやその場の思いつきの全てを即、
言葉にせずにはいられないらしく、
朝から晩まで、こっちが聴いているかどうかはお構いなしに
一人で延々とマイペースにしゃべり続ける。
あまりにも煩いので、今までに何度も
「あのさー、ちょっと集中したいから黙っててくれない?
じゃあ、君がどれぐらい黙っていられるか、計ってみようか?
と言って目の前でタイマーをオンにしてみたことがあるのだが、
なんと2分と黙っていられないのであった(笑)

どちらかというと静寂を愛する私や娘にとって、そんな息子の存在は、
消したくても消せないつけっぱなしのラジオみたいなもので、
彼が合宿等で長期不在ともなると、
家の中の静けさに思わず顔を見合わせて
「ああ、静かでいいねぇ・・・」とうっとりしてしまうほどだ。

そんな息子が中学生になって半年が過ぎた。
先輩ママさんたちの話では、
男の子は中学生にもなればだんだん家では無口になり、
親ともロクに口をきかなくなるとのことだった。
私はそれを聞いた時から息子の激シブ進化を心待ちにしていたのだが、
なぜか一向に、奴が無口になる気配がない。
相変わらず、食ってるときと寝てる時以外、ラジオは常時つけっぱなしだ。
どういうことだ!?

とは言え。
息子に言わせれば、私の方こそうるさい母親に違いない。
それこそ、もう中学生になったと言うのに。

あああ。だって、どうして黙っていられようか?!

宿題、終わったの?
弁当箱、出した?
汗だくのユニフォーム、またどこかに入れっぱなしじゃないの?
脱いだ服は置き場はそこじゃないよ!
ゴミはゴミ箱あたりに捨てるんじゃ無くて、中に捨ててくれない?
歯、磨いた?え?じゃあなんで口の周りに色々ついてんの?
学校から○○が配布されてるはずなんだけど・・?
定期テストまであと○日なんだけど、知ってた?
・・・

ええ、ええ、そりゃあ煩いでしょうよ。
でもでも、これでも、極力何も言わないよう、
あるいは要らぬ非難を言葉に含めないようにと、
母は日々努力をしているのだ。
君にはそうは見えないだろうが。

そんなわけで、今日の絵本は
私にとっては、永遠に叶わない憧れであり、
羨ましくももどかしい、
絵本だからこそありえるような、
理想の親子関係が描かれている作品だ。

主人公のすーくんは、父親と遊びにきた公園で、無邪気に乞う。

「ねえ おとうさん きに なって。」

そして言われた通り、父親はその場で息子のために「木になる」のだった。
木になったおとうさんは、すーくんがなかなか木に登れなくても、
何を見ても何を問いかけても何に驚いても何を懇願しても、
決してなにもしない、なにもいわない。
だって、

(きは なんにも いわないの)

だから。

木になったおとうさんは、
手も出さない、口も出さない。ただそこにいるだけ。
それでもすーくんは、そんなもの言わぬ父親の、
渾身のサポートを全身で受け止めている。
そのままの自分を受け止め、信頼して黙って見守ってくれること。
それは、幼い少年をどんなに勇気づけることだろう。
だからすーくんは、のびのびと五感を解放し、
試行錯誤を繰り返しながら一人で目的を達成してみせる。

かぜが ふいて います。
そよそよ そよそよ。


ああなんて、夢のように美しい親子像だろう。

嗚呼、できることなら私も、木になりたかった。
いや、今からだって、なれるものならなりたい。
この父親のように、
何も言わずに、母なる大地のように、
あるいは泰然とたたずむ巨木のように、
ただただ慈愛と寛容の権化となり我が子を見守っていられたら・・・

無理。

残念ながら、子どもを育てる、あるいは共に暮らすことの現実は、
この絵本のように長閑で優雅なものではない。
少なくとも、私の場合はそうだった。
それこそ、毎日が待った無しのエキサイティングな攻防戦であり、
だからこそ、やりがいもあり面白くもあり、時に投げ出したくもなった。

でも、もしかしたら、こんなやり方も出来たのかもしれない。
或いは、いつか親も子も成長すれば、
こんな風に穏やかな日常が、我が家にも訪れるのかもしれない。

シビアな現実の子育てにお疲れのお父さんお母さんが、
この絵本に描かれた夢の世界を想像して、
遠い目になって、ちょっと一息つけたらいいと思う。
子どもが生きるのにファンタジーが必要なように、
大人にだって、いや大人にこそ、
時にはこんな極上のファンタジーに浸って
心を遊ばせる時間が必要に違いないのだから。

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posted by えほんうるふ at 03:09 | Comment(2) | TrackBack(0) | うっとりする絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うんうん。
よく言われましたw
5分でいいから黙ってて、って。そして1分も経たずにまた同じこと言われてw
ご安心ください。息子さんは幼い頃の私より寡黙で、幼い頃の私よりも(静寂という名の家族に対する思いやりにおいて)私よりも優秀です。

思うんですよね。
この絵本のように父親が最高の付き合い方が出来ているのも、絵本に書かれていない母親の最高の……おそらく機関車のような休む暇もないサポートがあってからこそではないかと。

あと、男が寡黙になるには、比較的大きな挫折(受験失敗とか、失恋とか)を経験する必要があるんじゃないかって思うんです。
だから、まだまだお待ちください。
「お、最近おとなしいじゃない。なんかあったの?」に対して予想以上のローテンションが返ってきたその時を。その時が来たとき、くれぐれも、ほじくっちゃいけませんよ?w 

ということで……取り急ぎ、まとめ読む前の感想ですw
読み終えるのがいつになるかわからないので、とりあえず、でw
Posted by パンダ番長 at 2014年11月04日 08:47
>パンダ番長さん

ああ、なんと言うことでしょう。
もうとっくに次の回のまとめに取りかかっているという今頃になって
パンダさんから貴重なコメントを頂いていたことに気付くなんて。
ごめんなさい。そして、ありがとうございました!

そして私が気になるのは、今現在のパンダ番長さんが
果たして昔に較べて寡黙な男になったのか、
そしてもしそうならば、そこに至るまでに
一体そこにはどんなドラマがあったのか?!
ということです。
いつか、この話の続きを聞かせてもらえることを
密かに願っています^^
Posted by えほんうるふ at 2014年11月20日 22:14
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