![]() | Choo Choo: The Story of a Little Engine Who Ran Away Virginia Lee Burton Houghton Mifflin (Jp) 1988-04-25 by G-Tools |
![]() | いたずらきかんしゃちゅうちゅう バージニア・リー・バートン 福音館書店 1961-08 by G-Tools |
「男のロマンとは大いなる無駄である」の章でも述べたが、男性は自己満足の為にわざわざ面倒なことをしたがる傾向があると思う。
いわゆる「無理めの女をおとそうとやっきになる」のもその一つだろう。往々にして彼らの目的はその女性ではなく、「そんな女をおとした俺ってスゴイ」と自己満足に浸ることだったりする。
ワガママで手の焼ける女をわざわざ恋人や妻にして、いかに苦労させられているかと愚痴なのか自慢なのか分からない話をしたがる男性も多い。
確かに女から見ても、異性に媚びることなく好き勝手に振る舞う行動力のある女は格好良くて魅力的だ。それがさらに、外見もばっちりグラマラスで、パワーもあって、そのくせ危なっかしくて、ここぞと言うときには涙を見せ「やっぱりあなたがいなくちゃだめなの」と甘え上手になれる女だったら?
完敗である。
そんな絵本界きってのニクい女がこの絵本のヒロイン、ちゅうちゅうだ。
なんてったって機関車である。磨きがいのある魅力的なボディと性能、でもとにかく手入れが大変で、運転だって一筋縄じゃいかない。
それだけでもノックアウト寸前なのに、この娘がまたとんでもない跳ねっ返りで、夢に向かって後先考えずに(文字通り!)突っ走ってしまう激情型。
かいがいしく世話を焼く男どもにお構いなく、こうと決めたら前進あるのみ!
すがすがしいほど無邪気で大胆で自由奔放で、胸のすく思いがする。
作中では大の男3人が彼女の無鉄砲な思いつきに翻弄される。
かなり悲惨な振り回されっぷりなのに、惚れた弱みで誰も彼女を憎めない。
ちゅうちゅうを追いかけるのに、通りがかった最新式の汽車を緊急停止させて協力を請うジム。「俺の時間表はどうするんだ」と文句を言う運転士に、当然のように彼はこう答える。
「君の時間表なんか気にするなよ。僕はちゅうちゅうを見つけなくちゃならないんだ」
気にするっちゅーの。いやはや、愛は盲目である。
ようやく動けなくなった彼女を捕まえて、お説教をするどころか無事を喜んで踊ってしまう3人。半端じゃない溺愛ぶりである。
彼女の何が彼らをそこまで駆り立てるのか?
そのヒントが、話の最後に出てくる。ちゅうちゅうは男たちを振り回すだけでなく、ちゃんとしおらしく反省もするのだ。素直で可愛い甘え上手な一面をもっているのである。これで惚れないわけがない。
惚れた運命を呪いつつとことん女に振り回されるのもまた、男のロマンなり。
ヘタしたら恋愛小説ですよ、これは。いやもうまったく勉強になる。
絵本界のブリジット・バルドー、ちゅうちゅうに乾杯!
【この絵本に関するお気に入りあれこれ】
・洋書絵本店/Ehon Houseさんの原書の献辞に隠された作者バートンの思い入れ
・tomolatte/TOMOさんの小さな男の子なりの惚れっぷりが可愛いお話
【キャラクターに惚れる絵本の過去ログ】
・・・どっから出てくるんすか??BB!(爆☆)
子どもの頃、BBの映画をテレビで見ていて、あ〜、子どもはこんな女の人を見ちゃいけないんだと思ったことがありましたよ。はは。
ワタシ的には、「見ちゃいけない!絵本」ということになってしまいます。
-(や)--
早速のコメントありがとうございます。
>>・・・どっから出てくるんすか??BB!(爆☆)
いや、私がここで「幼い子どもの無垢な冒険心を満たしてくれる名作です」なんて書いてたら、らしくないじゃないですか。
これぞえほんうるふ節と思って頂ければ(笑)
ただいつも、私がこのブログで書くことによってご自分の愛読されている絵本を汚された!なんて思う人がいたら申し訳ないなーと思ったりしています。
私は単にたまたま深読みが趣味なので、人が思いつかないような解釈を紹介することで、1冊の絵本が全く違った味わいになって一粒で2度3度楽しめるよって伝えたいだけなんですけどね。
おぉそうですね、「ちゅうちゅう=女の子」もアリですね。
某幼児番組トー○スの影響か、何の疑いもなく男の子として見ていました。
えほんうるふさんの深読みには脱帽しますです(笑)
書評された絵本のタイトル一覧ページがあれば嬉しいなー(^^
オトナノトモへようこそ!
ちゅうちゅう=女の子説は別に私のオリジナル妄想ではないんですよ。(笑)
私はたまたまこの絵本は原書から入ってまして、原書では最初から”Her name was CHOO CHOO.”なのです。私も最初は何となく違和感があったのですが、”Jim loved the little engine and took good care of her.”なんていう記述もあるし、いつの間にか私にとっては「ちゅうちゅう=愛される女」のイメージが定着していました。もっとも、英語圏では船や飛行機など乗り物系の名詞が慣習的に女性名詞として扱われているようなので、作者がどこまでそれを意識していたのかは不明ですが・・。
そういえば邦訳版では特に性別が分かるような表現にはなっていませんね。ということは、日本全国のちゅうちゅうファン親子の多くは当たり前に男の子だと思っているのかも。ちなみに、機関車トーマスは本国サイトでも”He”でした。
タイトル一覧ページは私も欲しいので近々作るつもりです。
ご提言ありがとうございました。
「おきゃんな女」で私が真っ先に思い浮かべたのは一葉の「たけくらべ」のヒロイン、美登利です。でも、こちらは跳ねっ返りというより、カタギの女にはない根性が座った女という感じですね。