2014年03月20日

好きを持続する力

あたまにつまった石ころがあたまにつまった石ころが
キャロル・オーティス ハースト ジェイムズ スティーブンソン

光村教育図書 2002-08

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この春、息子が小学校を卒業する。
卒業関連の学校行事の出し物の一環で、将来の夢を紙に書いて提出する機会があった。
珍しく真剣な顔をして机に向かっていたが、腕で手元の用紙を隠し、
なんと書いたのかは最後まで教えてくれなかった。
でも、きっと間違いない。
彼の夢は釣りか魚に関する仕事につくことだろう。

小学2年生の時に行った北海道旅行で渓流釣りを初めて体験して以来、
息子は釣りにはまってしまった。
都心在住故、小学生の子どもが一人で気軽に釣りを楽しめるような場所はなく、
近所の釣り堀や父親にせがんで数ヶ月に一度親子向け船釣り体験に行くのがせいぜい。
やがて、釣行への有り余る熱意と好奇心を持て余した彼は
とにかく釣りに関することなら何でもいいから学びたいと、
繰り返し繰り返し、自転車で行ける範囲の図書館をぐるぐると回り、
「釣り」関連書籍の棚が空になるほど、ごっそりと制限冊数いっぱい借りて来ては
朝晩貪るように読みふけるようになった。

正直、この情熱の何割かでも勉強に向けてくれたらと思ったことは一度や二度ではない。
しかし、一見ただの遊びで将来何かに役立つとはとても思えないその釣りへの情熱が、
彼に人生に必要なあれこれを学ばせ、成長を促してきてくれたようにも思う。

地図を見ながら、遠くまで一人で自転車で行けるようになった。

一人で電車とバスを乗り継ぎ、片道1時間の目的地へ辿り着くことができるようになった。

片付けや整理整頓が死ぬほど苦手なのに、釣り具だけは自分で収納方法を工夫し、
時にはラベルまでつけて大事に大事に管理するようになった。

何でも使いっ放しやりっ放しなのに、釣り具だけは帰宅直後に黙々と手入れをする。

釣った魚を自分一人で捌けるようになり、ついでに一人で一汁二菜ぐらい作れるようになった。

釣りという趣味を共有出来ないがため、学校で親しい友達が中々出来ずに孤立しがちだったが、
魚と釣りに関する知識では学校で一番であるという自信をつけ、こだわらなくなった。

釣り場で知り合った初対面の大人と臆せず世間話や情報交換ができるようになった。

外来種や環境汚染や自然破壊の話題になると、いつの間にかいっぱしの意見を言うようになった。


どれもこれも、ただただ釣り好きが昂じてそうなっただけだ。
だが、文科省が声高に唱えるほど教育現場が混乱するばかりの「生きる力」の教育が、
そこでは確かに、豊かな実体験と共に実践されて来たのだと思う。

そんな息子とその同級生の子ども達の為に、先日一冊の絵本を小学校で読み聞かせて来た。
それが今回のお題絵本、「あたまにつまった石ころが」である。

物語は、主人公の男性の娘の視点で語られる。


切手にコイン、人形やジュースのびんのふた。
みなさんも集めたこと、ありませんか?
わたしの父は子どものころ、石を集めていました。


そしてその「父」は、子どもの頃どころか、生涯を通じ石を集め続けたのだった。
彼は、ただただ「好きだから」というそれだけの純粋さで、
何の役にも立たない石ころをせっせと集め、それを学び研究してきた。
周囲にも身内にさえも「あたまに石ころがつまっている人」と言われながら。
戦争も、苦しい生活も、彼の石への情熱をそぐことはなかった。
そして、長年の一途な思いが晩年に実って、ついにはそれを生業とする幸運に恵まれたのだった。

これが実話がもとになった話だというのは、少々出来過ぎな気がするが
全ての子ども達に、やがて直面する現実と闘うためにファンタジーが必要なように、
世知辛い現実を日々生きる大人にもファンタジーが必要だとすれば、
これこそ良質な、心温まるお伽噺ではないだろうか。

どうか全ての子ども達が、いつか、自分だけの大好きな何かを見つけられますように。
そしてその「好き」の気持ちをずっと持ち続けていられますように。
そんな気持ちを込めて、この絵本を卒業を控えた六年生に読んで来た。
何を感じ取ってくれたか分からないが、少なくとも、いつもにもまして
子ども達が話に引き込まれ、集中して聴いている気配が伝わってきた。
そして帰宅した息子が一言、
「母さん、あの本すごく良かったよ。」
と言ってくれた。とても嬉しかった。


どれほど釣りが好きでも、「釣り人」では食べて行けないだろう。
さすがにもうすぐ中学生ともなれば、アホな我が息子でもそれは分かっているようだ。
でも、これほどの「好き」をこの先も持続できるなら、きっと心配はいらない。
その情熱や尽きない好奇心が、きっと自ずから彼の進む道を照らしてくれるだろう。
そしてどんな進路に進もうときっと待ち構えている、厳しい現実を生き抜く支えとなるだろう。

門出を迎えた子ども達よ、卒業おめでとう!



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posted by えほんうるふ at 06:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 嬉しくなる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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