2007年02月27日

ある間取り図フェチの夢

世界あちこちゆかいな家めぐり世界あちこちゆかいな家めぐり
小松 義夫 西山 晶

福音館書店 2004-10
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


日本の家―北から南まで日本の家―北から南まで
織田 憲嗣

福音館書店 1989-07
Amazonで詳しく見る
by G-Tools


住宅の間取り図を眺めるのが趣味と言う人は意外と多いらしいが、実は私もその一人。
二次元の図面からその場所での生活をあれこれ想像するのが面白い。
その趣味が自分の実生活に関わることはめったにないわけだが、この春転居する自宅をリフォームすることになり、ここ数週間それは楽しくも忙しい日々を送っている。
 
私の幼い頃からの夢は、家の中に図書館がある家に住むことだった。
実際今住んでいる家の一部屋はほとんど書籍と雑誌で埋まっているが、情けないことにただ溜め込んでいるだけに等しく魔窟と化している(^^;)。
大量の書籍を管理するにはかなりのマメさと労力が必要と知った現在は、「家に図書館」の夢は「家の至近に図書館」という立地条件の希望へと変わった。
そして、いっそ情報や資料の収集管理はできるだけ外注し、自宅には「閲覧ルーム」があればよいという発想につながり、家族全員で使う書斎を作ろうという新しい夢が出来た。
その夢を今回のリフォームで実現すべく頭をひねっているわけである。

新居では3LDKの一部屋を書斎に当ててしまうので、二人の子供に用意できる個室は必然的に無くなる。それでもなんとかそれぞれにプライベートスペースを用意してやりたいと苦心した挙げ句、かなりややこしいリフォームを依頼することになってしまった。
いくつかの業者に相談し具体的な施工プランを考えるなか、ある担当者に
「今流行りの『頭のよい子が育つ家』みたいですね〜。」
と言われ、なんじゃそりゃ?と思った。
聞けば、半年ほど前に出たそういう本が巷で話題になっているという。
本屋で立ち読みしてみると、「○○中に合格した○○さんの家」といった調子で次々と間取りが紹介されていて、間取り良ければ全てヨシ!的な論調に苦笑してしまった。
しかし、「有名私立中合格者の自宅を調査したら子供部屋ではなく家族の共有スペースで勉強していた」という説に基づいて書かれたというこの本はベストセラーとなり、今やそのコンセプトを売りにしたセミナーやらコンサルティング、果てはマンションそのものまで発売されているそうな。
ということは・・・我が家の子供たちの輝かしい将来が楽しみである(爆)。


さて、間取り図フェチにおすすめの絵本といえば、この2冊は外せない。
「世界あちこちゆかいな家めぐり」は、世界各地のユニークな居住様式を写真と図解で紹介する楽しい知識絵本だ。
例えば、チュニジア・マトマタ地方の家は、地下に穴を掘って作る。アリの巣よろしく用途別に作られた部屋が地中に並んでいるのが面白い。部屋が足りなくなったらもちろん、さらに穴を掘って部屋を増築ならぬ増掘(?)するのである。何だか原始的で楽しそうだ。
(そういえば、アリの家の断面図が出てくるたむらしげる氏の「ありとすいか」や、そのモグラバージョンが見られる工藤ノリ子さんの「オラウーちゃん」も私のお気に入りの絵本だ。蟻も土竜もいわゆる穴居式住居なので間取りもへったくれもないが、ドールハウスを覗くような楽しさについ隅々までチェックしてしまう。)
さらに圧巻なのが、中国福建省の土楼。4階建ての巨大な円形の建物で、内部は細かく仕切られていてフロアごとに用途が分けられている。この巨大な円形長屋のような建物一棟に300人が暮らし、それだけで一つの村のようにコミュニティが形成されているのが分かる。
日本でも、今や一棟に300人どころか300世帯が暮らす高層マンションが珍しくないが、そこにあるのは300世帯の「個」の集合体でしかない。300人がひとつの家族のように共同体として生活している土楼の住人とは、生活意識からして天と地ほども違うはずで、なかなか興味深い。

一方、「日本の家 北から南まで」はそのタイトル通り、我が日本各地の戸建て住居を紹介する絵本で、古いものは秋田の両中門造の木造農家から、ホームオートメーションの施された現代的な3階建て住宅まで、それぞれ詳細な立体パース図を用いて各部屋の配置や用途が説明されている。残念ながら絶版らしいので図書館や古書店で探してみて欲しい。
この絵本を読むと、やはり昔ながらの日本の家はそれぞれの地方の気候や地形に調和した余裕のある作りとなっていて、ごく自然に人と環境の共存共栄が図られていたことが分かる。それに比べ、現代建築の家は細かく仕切られた壁が多く風通しが悪そうで、無駄が無いぶんアソビも無く、窮屈な印象は否めない。

人々の生活が豊かになればなるほど、家の中は狭くなる。そして部屋の狭さに比例して人間の器も小さくなってきたような・・そんなことを考えた。
長らく、人間はせっせと頭を使っていかに日常生活を楽にするか=人の手仕事・足仕事を機械にやらせるかを考え、人々の暮らしはどんどん便利に快適になった。そして気が付けばヒトはどんどんものぐさになり不器用になり、頭でっかちで生活力のない生き物になり下がりつつあるという皮肉な現実。

これから都会のマンションで生活する私が心豊かに暮らすためには、むしろ豊かで便利な生活を追求しない覚悟がいるだろう。第一に家の中にモノを増やさないこと、そして、手仕事を厭わずモノに頼らない生活を心がけ・・自信はないが頑張ろう(^^;)。
【好奇心がうずく絵本の過去ログ】
posted by えほんうるふ at 05:50 | Comment(18) | TrackBack(1) | 好奇心がうずく絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰です。
小松義夫さんの写真集「地球人記」「地球生活記」(福音館)を張り切って買ってしまった私も、間取り図がかなり好きかもしれません。(笑)
バーバパパの家、へんなどうつぶのおじいさんの家の絵も好きでした。

手仕事を厭わず・・・本当に。
ちょっとした袋物や箱類は、自分で作ってしまうことも多いのですが、材料を揃えるとむしろ高くつく場合もあったり、布や木材の無駄が出たり。悩ましいです。
どちらにせよ、気に入ったものを、大事に使いたいです。
Posted by hyo-tan at 2007年02月27日 16:20
>hyo-tanさん

どーもです。やはりhyo-tanさんも間取り図愛好家のケがありましたか。ムフフ。
バーバパパ!その古典を忘れてました!その名も「バーバパパのいえさがし」っていう名作がありましたね〜。そして、へんなどうつぶのおじいさんを例に出すところがまたhyo-tanさんらしい(^^;)目の付け所がシャープです♪

手仕事無精はそうそう直りそうもありませんが、とにかく「とりあえず」の物を買わない決意はしてます!
Posted by えほんうるふ at 2007年03月02日 00:02
こんな本があるんですね〜。知りませんでした。眺めてみたいと思っています。
わたし自身、センスに欠けるので、家の間取りを考えるのはかなり難しそうです。いずれ、我が家も直面する問題ではあるのですが……まだ大丈夫(?)と思ってはいるところです。
豊かで便利な生活を追及しない覚悟、これから必要になるかもしれませんね。一度豊かさの味を知るとなかなか戻れなくなりますが、敢えてやってみることを大人がしていかないと、子どもたちはますますやらなくなるような気がします。
それにしても「書斎」のある家、いいですね。憧れです。
Posted by kmy at 2007年03月02日 15:35
間取りを考えるのって楽しいですよね。まして、書斎のためとあらば、最高だなと思います。いいなあ。

本で読むと、昔の日本の家って、ほんとに何もなかったようですね。だからせまいけど、のびのびと暮らせたのかしら。自分の子どもの頃と比べても今の家には物があふれています。私も便利につられて物を増やすことのないようにしていかなくっちゃ。
Posted by ぱいぽ at 2007年03月02日 21:30
こんばんは。
ご自宅のリフォーム、完成が楽しみですね。
間取り図フェチというより、うちは大工なので、
「世界あちこちゆかいな家めぐり」は興味あります。読んでみたいですね。
プライバシーや目的別に部屋を仕切ってつかう間取りというのは便利なようでいて限られた使い方しかできなくなってしまいますよね。
家族の人数や生活スタイルは変わっていくので、フレキシブルに対応できるような間取りがいいですよね。
ところで話題の本の説は、我が家にも当てはまりそうにないなと苦笑してしまいました。
子供部屋で勉強させると、勉強しないで本を読んでしまうという親のDNAをそのまま受け継いでいるのでうちの子も居間で勉強させているのですが、成績は全然良くないです。
環境より集中力ですよね〜。
Posted by ちゃちゃまる at 2007年03月03日 22:01
年明けに言っていた えほんうるふさんワクワクの原因、もしくは原因のひとつがリフォームなんですね。うらやましい。我が家はかれこれ築20年になりあちこち痛んできてますが、お金ないし自分で壁紙でも張り替えようか・・・なんておもっていたところです。楽しみですね。

 間取り図見るの私も好きです。間取り図に限らず地図や洋裁のパターン見るのも好きなんですよ。空想が広がりますよね。
Posted by ぴぐもん at 2007年03月03日 23:13
>kmyさん

本当に面白い絵本なのでぜひ一度ご覧になってみて下さい。日本人の常識を覆す住居の数々に目からウロコですよ。

リフォームは面白いですよ。凝ったことをやろうとするとそれなりに準備が大変ですが、頭の中で考えたことが形になる楽しさがあります。今回は経験豊富で提案力のある"匠”との出会いがあり、色々と勉強にもなりました。
当面は書斎とは名ばかりのお絵かきルーム(?)になりそうですが、楽しみです。
Posted by えほんうるふ at 2007年03月04日 01:18
>ぱいぽさん

そうそう、昔の家って相当ガラーンとしてたんでしょうね。それで空間にも、人の気持ちにも余裕があって。
現代の日本人は便利貧乏(?)というか、快適生活を目指すあまり、結局自分の住環境をどんどん貧しくしているのかもしれません(^^;)

Posted by えほんうるふ at 2007年03月04日 01:18
>ちゃちゃまるさん

おお、プロでいらっしゃいましたか。
これまで多くの設計士さんやインテリアコーディネーターさんとお話するのも楽しかったのですが、これからお会いすることを楽しみにしているのが実際に施工をしてくださる職人さんたちです。プロフェッショナルの実務経験から出るお話というのは本当に面白くてためになるし、聞いていて飽きないんですよね〜。

そういえば、私も個室に勉強机があるのに居間で勉強してました。個室に入るとつい好きなコトして遊んじゃうのでダメでした(^^;)
Posted by えほんうるふ at 2007年03月04日 01:21
>ぴぐもんさん

はい、確かにワクワク&ドキドキの一因であります。まあ一生に何回もないチャンスかと思うのでめいっぱい過程を楽しもうと思ってます。

私は不器用なのでDIYには自信がないんです(^^;)せいぜい、障子の張り替えぐらいしかできません(汗)。
ちなみにミシンも雑巾か袋物が精一杯・・・ぴぐもんさんが洋裁のパターンを見るのが好きと伺って、目からウロコです。確かにあれも立体の展開図ですね!
Posted by えほんうるふ at 2007年03月04日 01:22
こんにちわ
頭が良くなる家?かどうかはわかりませんが
子供が本好きになった我が家は
リビングの床に常に図書館から借りてきた
本や絵本や雑誌が30冊程度いつも散らかっています、
子供はめしを食う、外で遊ぶ、
などと明確な目的がない残りの時間はいやがおうでも、
本と過ごさざるを得ない環境に追いやられています。
いましんのすけが食いついている図書館の本は、
西原理恵子の「毎日かあさん」(かに編)です。
Posted by 絵本おじさん at 2007年03月16日 12:56
はじめまして
うーん、凄い!!!
<オトナノトモ>面白くて夢中で拝見しました。
何からコメントしようかな・・・と迷うほど
いろんな事を感じました。
文章が上手いですね。思わず引き込まれました。
私、数ヶ月前にブログを始めたけど (>_<)
自分の不甲斐無さに早くも辞めようかナンテ
だって、こんな良質なブログは無理だわ私には。
Posted by noa at 2007年03月16日 18:10
>絵本おじさん
こんにちは。
我が家のリビングの本散乱状態もすごいですよ。
図書館の本だけでも一人20冊×家族4人分、それ以外に蔵書の絵本やビジネス書、買ってきたばかりの雑誌などが十数冊は常にそこここにあるという・・とにかく家中本だらけです。
この状況を新居で継承しないよう色々と画策しておりますが・・・もはや収納の問題というより何か根本的に間違っているのかも知れません(爆)
Posted by えほんうるふ at 2007年03月18日 02:07
>noaさん

はじめまして、オトナノトモへようこそ。
お褒めいただきありがとうございます(^^)
でも、本当に文章力のある人ならもっと簡潔に論旨をまとめられるはずで、私のように頑張っても常にダラダラと長文になってしまう輩はまだまだ修行が足らんのでしょう。
それに、数ヶ月に1回の更新では、とても良質なブログとは言い難い(恥)

何はともあれ、ご縁に感謝です。過去記事へのコメント・トラックバック大歓迎ですので、どうぞまた遊びにいらしてくださいね。
Posted by えほんうるふ at 2007年03月18日 02:09
おひさしぶりです。
間取り、楽しいですよね。
私も商家に興味があって、
造り酒屋の間取りを実際に見させて頂いたことがあります。
職住一体の建物ですから、仕事場、家庭、職人の生活場が、
中庭を囲んで上手に配列されてるんですよ。
ホームオフィスにも繋がるところがあるかもしれませんね。
でも、一番よかったのは一番絞りの美味しいお酒を頂いたことかな(笑)

理想の家を目指してリホームがんばってください!
Posted by J.T. at 2007年03月24日 00:28
>J.T.さん

ご無沙汰しています。
引越3日目でパンダ印の段ボールの壁に囲まれてこれを書いています(^^;)

なるほど、商家は元祖ホームオフィスですよね。
かくいう私の実家も商売をやっていたんですが、全然そんな格好いいもんじゃなく、職場と生活の場が入り乱れて混然としている中で育ちました。だからこんな逞しい(?)人間になったのかしらん。
Posted by えほんうるふ at 2007年03月27日 22:46
私も子供のころ、インテリア雑誌に載っていた見取り図を本がボロボロになるまで飽きずに眺めた口です。その後、平面では飽き足らず、劇的ビフォーアフターに出てくるみたいな家の模型をボール紙で作り、壁紙やじゅうたん、果ては便器まで設置していました。
そうやって理想の家を夢想した子供は大人になって、なんてことない分譲マンションに暮らすことになったわけですが…。

間取り図は、二次元から三次元に起こす楽しさというのもありますが実はその先にある、においだったり、あたたかさだったり、生活そのものを起こす楽しさなのだと思います。

えほんうるふさんのブログは、生活語り、人生語りのようなところがある一方で絵本もきっちり紹介されていて読みでがあります。これを機会にときどき遊びにやってきますね。

Posted by かおるん at 2010年06月03日 23:58
>かおるんさん

模型まで作ってしまうとはさすが芸術家。やはり小さい頃から工作もお得意だったんですね。

ドールハウス作家のオリジナリティあふれる意匠を眺めるのも楽しいですが、現実にある家を模型化・図面化した時の、住人それぞれの生活感を確かめる感じが好きです。

こちらはツイッターと違って私の偏屈ぶり全開なのですが、よろしかったらまた立ち寄ってください^^
あ、ブログリンクさせていただきますね♪
Posted by えほんうるふ at 2010年06月04日 10:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/34779296

この記事へのトラックバック

『きょうはなんのひ?』瀬田貞二作/林明子絵
Excerpt: 家の中に娘の隠した手紙をお母さんがつぎつぎと探しまわる楽しい仕掛けと やさしくきめ細やかなタッチの絵が心をあたためてくれる絵本 『きょうはなんのひ?』 このすべてのページから、想定される間取りを..
Weblog: おきらくブックレビュー かつまに。
Tracked: 2010-06-03 23:27