2013年03月04日

おおかみが泣いた日

やっぱりおおかみ (こどものとも傑作集)やっぱりおおかみ (こどものとも傑作集)
佐々木 マキ

福音館書店 1977-04-01

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


私は泣いたことがない。
いや、私も人並みに映画や本に涙を流したことはいくらでもあるのだが、
卒業式だとかお葬式だとか、周りの人がガンガン嗚咽しまくっているような場に限って
何故か妙に落ち着いてしまい、涙が出てこなくなるのである。
泣くに泣けないクールな自分を持てあましては、しおらしく嘘泣きを目論見、
目頭をハンカチで押さえてごまかしたことは数知れず・・。

そんな私が昨日、その場の誰もが泣くどころかむしろニコニコと笑っている状況で、
ただ一人、号泣しながら積年の想いを語るということを経験してしまった。
自分でも想定外の事態で正直焦ったが、流れ落ちる涙はどうにも止まらなかった。


いったい何があったのかというと、
私が3年前に始めたtwitterの大人絵本会つながりのご縁で、
元福音館書店の編集者である関口展さんにお会いできたのである。
正確には、関口さんの講演会を企画された茅野市の今井書店の高村店長が、
「関口さんに、是非えほんうるふを紹介したい」と直々にお声掛け下さったのである。

なんということだろうか。
関口展さんは、「えほんうるふ」と「オトナノトモ」が生まれるきっかけとなった
私にとって人生で一番大切な絵本、「やっぱりおおかみ」を担当した名編集者さんなのだ。
しかも、講演のタイトルが「僕が好きな評判の悪かった絵本」とは心憎い。
もうそれだけでドキドキワクワクで、すっかり舞いあがり指折り数えて楽しみにしてきた。


そして待ちに待った当日。
関口展さんは、軽快な語り口で、かつて福音館書店において「母の友」「おおきなポケット」
「こどものとも」等、数々の月刊誌の編集長としてご自身が携わった作品をご紹介くださり、
その楽しくもシビアなプロの世界のエピソードにぐいぐい引き込まれた。
「わにわに」シリーズや、「ごろごろにゃーん」「あな」など、関口さん仰るところの
「大好きなのに何故か評判の悪かった絵本」は、やはり私も大好きな名作ばかり。
これをみんな関口さんが手がけていらしたとは、何かのご縁を感じずにはいられない。

そしていよいよ、「やっぱり おおかみ」である。
それまで穏やかな笑顔を浮かべ、いたって冷静に関口さんの話を聞いていた私は、
やおら姿勢を正し、不用意に取り乱さないようにと警戒態勢に入った。
それなのに、ああそれなのに。
関口さんが絵本を手に取り、ほんの数頁読み聞かせてくれただけでもう涙が溢れてきた。


「け」

「おれに にたこは いないかな」

「おれに にたこは いないんだ」



「おれににたこ」を探し続けた日々。
部屋の片隅で絵本を抱きしめて、何度も何度も「け」と声に出して自分に言い聞かせた日々。
自意識過剰で孤独でワガママでいきがっていた私を、ずっとずっと支えてくれた本だった。

今現在の、マイペースで厚かましくて物事に動じない顔をした私しか知らない人には
想像つかない姿かもしれないが、私にも確かにそんな頃があったのだ。
そしてあの頃があったから、今の私がある。

この絵本があったからこそ、絵本について語りたい思いがあふれ、このブログが出来た。
この絵本への想いも、ブログで改めて文章にしてみたら、何だかすごく勇気がわいてきた。
そして心に溜まった気持ちを吐き出すように、どんどん記事を書いていたら、
あんなに必死に探しても見つからなかった「おれににたこ」たちが、
ひとりふたりと現れ、びっくりしながらも、とてもとても嬉しくなった。

その後も細々とブログを更新し続けたことが、ツイッターを始めることにもつながった。
そしてツイッターで呟いてみたら・・・

そこには広い空があった。
ちょうど、あのおおかみのこが気球を放ったあの空のように、広い広い空が。


だからもう私には、おれににたこ探しは必要なくなった。
私は私のままでいいし、こんな私もこんな世界も、けっこう好きだと気がついたから。



・・・そんな想いがぐるぐるといっぺんに溢れてきて、瞳の端からぽたりぽたりと膝に落ちた。
慌ててタオルを取り出して、客席でそっと涙をぬぐっていたら、
いつの間にか質疑応答の時間になってしまった。
ふと視線を感じて顔を上げると、司会の高村店長が真っ直ぐに私に見て
ニコニコと笑いつつ意味深な視線を送ってくるではないか!
ヤバイ、これはヤバイ、ダメ、ゼッタイ!!と焦る私の必死の視線を笑顔でスルーして、
ここぞとばかりに私を指名する店長・・
グチャグチャの顔と気持ちのまま、立ち上がって皆さんに挨拶をすることになってしまった。

・・・正直、もう胸がいっぱいいっぱいで、何を話したのか良く覚えていない。
ただただ、この絵本を、恐らく万人ウケしないことを重々承知の上でこの世に送り出し、
私に出逢わせて下さったことに、とにかくお礼を言いたかった。
絶対に私だけでは無い、この絵本に支えられてどうにか大人になれた子ども達を代表して、
この想いを伝えたかった。

佐々木マキさん。関口展さん。

今井書店の高村志保さん。

この絵本に関わった全ての方々。

本当に、本当に感謝しています。愛してます。

ありがとうございます!!




こんなふうに、自分が号泣した話をことさら感傷的にブログに書き残すなんて、
タダでさえ思いこみの激しい人間が、思い切り自分に酔ってる残念な様を晒しているようで
よく考えれば人前で泣くことよりもっと赤っ恥もいいところだ。
でも、おばさんになって良かったことの一つは、恥をかくのが怖くなくなるのだ。
誰に笑われてもいい。私は私のためにこの話をここに残したい。

ちなみに、この文章を書く間も、やっぱり涙が止まらなくて、
もう私の顔は涙と鼻水ですごいことになっている。
かくして私は、涙は飾りじゃないということを改めて思い知るのであった・・。


↓お気に召しましたら、クリックで更新励ましの一票を・・↓
人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 絵本・児童書へ にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
posted by えほんうるふ at 11:48 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日々のつぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは^^
あの絵本は…言葉で語るのは難しいですね。
私が「やっぱりおおかみ」を知ったのは佐々木マキさんの絵本をあらかた読んだあとでして…しかもほんの数年前と言う新参者なので本来ならエラソーには語れないのですが…ああ語りたい(笑)
あの絵本は読んだ者の仮面を剥がすって思います。
そして、あの本を読んで仮面がはがれそうになって慌てる人は仲間と感じます。
でも同じ種類の仲間じゃないんです。
それぞれがそれぞれの「け」を持った仲間。
おれににたこ、でもおなじじゃないこ。
私もその中に入れたらいいなあ。
Posted by あるちゃ at 2013年03月04日 12:05
ウルフさん、ありがとう。そして愛してるよ。
Posted by 高村 志保 at 2013年03月04日 13:28
>あるちゃさん

こんにちは^^
こちらへコメント頂けて、とても嬉しいです。

なるほどねー。確かにあの絵本はある意味「踏み絵」かも知れないw
私なんて思いっきり踏んでしまって大変なことになりましたが、
それを見た誰かに、私が「あなたににたこ」だってことが伝わればいいな、
そんな風に思っています。

Posted by えほんうるふ at 2013年03月04日 22:16
>高村さん

相思相愛ですね。幸せです^^

大丈夫、この先のアンタの人生、
なかなか捨てたもんじゃないよ、って、

あの頃の自分に囁いてあげたいくらい。




Posted by えほんうるふ at 2013年03月04日 22:21
この記事読んで泣きました。
絵本、読んでいないんですが^^;
自分、自分らしさ、自分の居場所。
生きて行くのは楽ではないですが、
生きているからこその出会いや発見。
ココロのおすそ分けをありがとうございます。
Posted by ぴあきち at 2013年03月06日 19:37
>ぴあきちさん

わざわざこちらにコメントありがとうございます。
共感していただけて、とても嬉しいです。
絵本読んでなくても伝わるなんて
ぴあきちさんはきっととても共感力の高い優しい方なんですね。

私は最近なんだか涙もろくて、頂いたコメント読んでまた泣きそうになりました。
歳でしょうか(^^;)

Posted by えほんうるふ at 2013年03月06日 20:50
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック