2012年09月17日

その愛の先にあるもの

あくたれラルフあくたれラルフ
ジャック・ガントス作 ニコール・ルーベル絵
いしい ももこ訳

童話館出版 1995-01

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時々、ネットの掲示板などで
「こんな彼氏とは別れた方がいいでしょうか・・?」という相談を見かける。
詳しい内容を読むと、相手の男はきまって金や女にだらしなかったり、
高確率で兼ね備える要素がモラハラだのDVだのストーカーじみた束縛だの、
別れる別れないを悩む以前に「いったいこの男のどこが良いんだ?」と思えてならない
どうしようもないダメンズだったりする。
当然ながら、相談者に対する読者からのコメントは一様に「別れろ」であり、
そのまま「そもそもどこがいいんだ?」といった疑問を投げかける人も少なくない。

そしてまた、これに対する相談者の返答がまた、一様に
「でもいいところもある」「でもやさしい人なんです」と相手の男を庇うのである。
「○○の問題さえなければ、とてもいい人なんです」というのもよくあるパターン。
たとえその○○が人の道を外れることだとしても、その矛盾に彼女は気付かない。
そして、どんなに親身なアドバイスをもらっても、結局なかなか別れない。

私は冷たい人なので、こういうイバラの道が趣味の女性は、
好きなだけ悲劇のヒロインになりきって浸っていただき、
気が済むまでとことん地獄を味わえばいいんじゃないかと思う。
(ただし、その女性に子どもがいる場合は、共依存の親の下で育つ面倒を知っているだけに、
ダメモトで全力で別れをお勧めするが・・。)

その一方で私は、ダメンズを愛して自らボロボロになっていく女性たちの、
「愛こそが人生」とでもいうような、愛と情に流されまくりの生き様に
一種の憧れが捨てきれずにいる。
つい浮かんでくる、
「ここまで人を愛する才能のある者だけが到達できる、凄まじく甘美な世界があるのでは?!」
といったしょーもない妄想は、この歳になっても、いや、年を重ねるほどに止まらない。


てなわけで、今日の絵本は「だめんずラルフ」もとい「あくたれラルフ」。
不惑の私の妄想を募らせる、地味にヤバイ絵本である。

主人公のラルフは、飼い主のセイラに溺愛されている飼い猫である。
人のペットの趣味に文句を付ける気はないが、セイラの趣味は相当変わっている。
そもそも彼女の愛猫ラルフは見た目からして全然可愛くない。

最近「ブス可愛い」という表現がペットや女性アイドルに用いられることがあるが、
「ブス可愛いさ」を売りにする場合、やはり「見た目の残念感を凌駕する可愛げ」
という要素が不可欠であるように思える。
ところがこちらのラルフの場合、見た目以上に行動に難がありすぎで、
ベストオブ可愛げのない猫絵本というランキングがあれば、間違いなく一位になれそうだ。

そんなラルフのひどい悪戯に日々振り回される憐れなセイラ。
どんなにひどい目にあってもラルフを許し愛し続けるセイラはまさしく天使のようだが、
実は私はこの絵本を読む度に、ラルフよりセイラの懲りない言動にイラッとしてしまう。
「お前がそーやって甘やかすからこのバカ猫は平気で他人に迷惑かけ続けるんだろーが!」
と大人げなく絵本にツッコミをいれてしまったことも一度や二度ではない。

ところが後半、ラルフはセイラと離ればなれになって痛い目に遭うのである。
この絵本を初めて読んだ小学生の頃から、このラルフの転落シーンをちょっと憐れに思う反面、
密かに胸のすくような思いに心を躍らせていた腹黒い子どもだった私は、
後に「カタルシス」という言葉を知ったとき、真っ先にこの絵本のことを思い出したのだった。

そしてラストで再び私はイラッとさせられる。
ここで屈託無くクスッと笑える人は、きっと素晴らしく人間が出来ているか、
愛情深い家庭で人を信じる気持ちを健全に育んでもらった人なのだろうと想像している。

ちなみに私は「だからオメーはよー!!」と、ここでももれなく心の中で毒づくのである。

にも関わらず、私がこの絵本と未だ訣別できない理由はやはり、
それでもラルフへの愛が揺らがないセイラの強さと、その先にあるはずの
強い絆で結ばれた至上の愛の世界に憧れる気持ちが捨てきれずにいるからに違いない。

お気に召しましたら・・
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posted by えほんうるふ at 14:52 | Comment(3) | TrackBack(0) | 危なっかしい絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
みわみわと言います。
記事の数々、大変興味深く読ませて頂きました。
私にとって 絵本=読み聞かせ という図式が成り立ちつつあるのですが、自分自身の教養を高めるためのオトナ読みぜひしてみたくなりました。

私のブログでは子供向けの絵本を厳選して、お母さんたちに紹介するという形をとっています。
えほんうるふさんのお眼鏡にかなうか分かりませんが、もしよろしかったら相互リンクをしていただけないでしょうか?
今回は突然のぶしつけなコメント申し訳ありません。
お返事お待ちしております。
Posted by みわみわ at 2012年10月10日 15:35
>みわみわさん

はじめまして、こんにちは。
よくぞこんな辺鄙なところへ…
よかったら、ゆっくりしていってください。

私のブログは子ども向けとされている絵本を扱っていますが、
子どもへの読み聞かせガイドとしては
「まったく」役に立たない物を目指しています(笑)
なので、みわみわさんとは同じ絵本ブログでもスタンスが大違いですが、
どうぞよろしくお願いします。

あ、リンクはご自由にどうぞ〜。
うちのリンクリストにも入れておきますね。
(左下の「絵本とその周辺」カテゴリーに追加しておきます。更新順に10件まで表示されます)
Posted by えほんうるふ at 2012年10月15日 09:45
えほんうるふさん

お返事くださりありがとうございました。
相互リンクも大変感謝です!
私のブログでは子供向けのレビューしかカバーできてなく、大人自身が絵本を求めてるという人にぜひえほんうるふさんのブログを読んでいただきたく、今回はリンクのお願いをさせて頂きました。

これからもどうぞよろしくお願いいたします(_^_)
Posted by みわみわ at 2012年10月15日 11:23
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