2005年04月10日

オトナ向け絵本について。

私は「大人向けの絵本」が苦手な人間の一人である。
あるいは、大人向けとして売られている絵本の作られ方・売られ方が嫌いなのかも知れない。

私が思うにそれは、子ども向けの絵本でいうところの、知育絵本のようなものだ。
「これを読めばお子さんにこんな心(知能)が育ちますよ」的な作りの絵本では、読み手となる子どもは単なるマーケティング上のターゲットとして捉えられていて、子どもがもともと持っている感性や洞察力、成長力が無視されているように感じられ腹が立つ。
同じように、「これさえ読めばあなたの疲れた心も傷ついたハートもバッチリ癒されますよ」という、読み手の感性を無視した押しつけがましさが、大人向けと銘打った絵本からは感じられる。

書店で児童書コーナーではない場所に平積みにしてある絵本。
美しい装丁に目をひかれて手に取ると、腰巻きに「癒し」だの「いのち」だの、胡散臭い(説教臭い?)文字がチラホラ。
この「ほら、癒すぞ〜」という売り手の意気込みを感じるたびに、私自身が経験した某誌編集部での企画会議の情景が思い出され、「作品」というより入念に企画された「商品」に見えてきてしまう。
そして天の邪鬼な私はじっくり読みもしないウチに、絶対にこんな企画モノなんかに癒されてやるもんか、と思ってしまうのだ。(笑)
だから、苦手と言うより読まず嫌いに近い。もったいないことだ。

あとは、単なる私の趣味の問題だ。
子ども向けの絵本をオトナ読みして楽しんでいる自分には、大人向けの絵本の多くはあまりにも狙いが分かりやすく面白みを感じない。文章に無駄がなさ過ぎてツッコミようがなかったり、逆に説明が多すぎて興ざめだったり。
まして、読み手の受け止め方に「模範解答」が想定されている文章を読まされるほどつまらないことはない。学校の道徳の時間で読まされるテキストがうんざりするほど退屈だったのを思い出す。
(だから、大上段に構えてこちらの感情操作をしようとしないイラストレーター系作家の絵本は、私にとっては作品集のようなもので、趣味さえ合えば素直に愛せるのだった)

現代の大人の生活はとかく忙しすぎて、心がほころんだときにじっくり時間をかけて修復する余裕がない。だからこそ「大人向け絵本」の即効性が受けているのかも知れない。読むサプリメントみたいなものか。
サプリに頼りすぎて本来の食事の楽しさを忘れないようにしたいものだ。


※こんな理由で読まず嫌いの私に是非読ませたい!という大人向け絵本をご存じの方はぜひコメント・トラックバックよろしくお願いします。

posted by えほんうるふ at 01:32 | Comment(11) | TrackBack(2) | 日々のつぶやき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。「あけるな」でコメントいただいたソラです。

オトナ絵本、以前私もネタにしたことがあるのですが、思っていることが上手く言葉にできず、数々のオトナの方から反発が…(泣)。えほんうるふさんの書かれた文章を見て、そうそう!そうなんですよ!と大きくうなずいてしまいましたよ。上手く書けなかったことをえほんうるふさんがちゃんと文章にして下さっている感じで、すごくすっきりしました。ありがとうございます*

> サプリメントに頼りすぎて本来の食事の楽しさを忘れないようにしたいものだ。

↑ほんと、そうですよね。
Posted by ソラ at 2005年04月13日 11:28
ソラさんのブログで紹介してあるので読ませていただきました。


自分が大人絵本に対して感じる「言葉では表現できない違和感」を同じように感じている人がいるんだということ、とてもうれしく感じました


僕の仕事がプロモーション関係のため、大人絵本にもマーケティング戦略のような数字をあげるためだけの仕掛けが見えて、絵本を商品として扱ってほしくない僕としては嫌悪感を感じてしまうのでしょう


ブログができたことで個人が大手の媒体と同じだけの発言権を持てるようになりました

これからは本当に愛情を持って作っているモノ(絵本)だけが残るいい時代がやってくると思います。

大きなビルで制作、営業と分業され、数字のためだけに走り回っている大企業のサラリーマンには受難の時代だとは思いますが(笑)
Posted by 絵本おじさん at 2005年04月13日 14:36
ソラさん、コメントどーもです。
そう!オトナ絵本を論じるのは、結構勇気がいります。マーケティングが成功しているからこそ、これだけもてはやされているんですものね。
でも、私のブログのテーマ自体が「オトナが楽しむコドモの絵本」ですから、あえてコドモの絵本、と明言している理由がここにあるわけで、この際自分の中の積年のひっかかりを整理しておこうと思ったのです。
そんな独り言に共感してくださる方がいて嬉しいです。ちなみにソラさんのオトナ絵本に関するエントリーって、今でも読めますか?良かったらトラックバックしてくださいね。
 
Posted by えほんうるふ at 2005年04月14日 01:24
絵本おじさん、オトナノトモへようこそ!
ヘタに業界の裏事情を知っているとせっかくの作品が商品に見えてきてしまう哀しさがありますよね(^^;) 自分の場合、それで読まず嫌いになって出会えていない名作もきっとあると思うのです。もったいないなーと思っています。
でもこんな一個人の独り言にもちゃんと共感のレスポンスが得られるブログって本当にありがたいです。作ってよかったな〜。(^o^)
Posted by えほんうるふ at 2005年04月14日 01:42
>絵本おじさん
大人向けであろうと子ども向けであろうと絵に文章が付いてたら絵本でしょう!と言われたら確かに否定は出来ないんですが、でもやっぱり大人向けは「絵本」というくくりに入れて欲しくない…と思っていました。
確かに、「商品」として扱われている感じが違和感につながっているのかもしれません。売れそうだから作ったんだよね、という感じで。

>えほんうるふさん
私の書いたエントリーは既に締めてしまったblogに書いていたので、今は封印してしまいました。すみません。
大人向け絵本を、子どもの頃に絵本をあまり手にしてこなかった人たちが「これが絵本!」と思ってしまい、自分の子どもにもそういうのを「感動するお話だから」と安易に与えてしまったら嫌だなぁ…という感じのことを(もっと乱暴で中途半端でしたが)書いていました。
もっともっと考え抜いた上で書けば良かったと今では思います(苦笑)。
Posted by ソラ at 2005年04月14日 22:49
大人向け絵本を「これが絵本!」と思って「感動するお話だから」と安易に子どもに与えてしまう人がいたら・・・それは私も嫌だなぁ。それって子どもを絵本嫌いにする近道じゃないかしら。
絵本によっては、適齢期のあるものもあると思うんです。本人の興味を無視して自分の趣味の絵本を押しつけてもきっと彼らにはつまらない。一度つまんない印象を持ってしまったら、多分大きくなって再び手にはしないでしょう?それはもったいないなーと思うので、自分の子どもに選ぶ絵本には「まだ後のお楽しみ」にとっておいてあるものもたくさんあります。
Posted by えほんうるふ at 2005年04月15日 19:40
こんにちは

絵本おじさんのところからとんできました。
おとなむけ絵本
というか、あの癒しを前面に出しているのは
わたしもどうもいけません。
でも、
「絵本に下限はあるが上限はない」
といわれているように、ある程度の年齢でなければ理解できない絵本があるのではないかなと、思います。
エンデの
「オフィーリアと影の仲間たち」
という絵本など、ある程度の年齢でなければ
理解できないような気がします。
Posted by パイポ at 2005年05月15日 16:53
ごめんなさい
「オフェリアと影の一座」でした。
Posted by パイポ at 2005年05月15日 20:04
パイポさん、こんばんは。オトナノトモへようこそ!
「絵本に下限はあるが上限はない」
いい言葉ですね。私もそう思います。
エンデのその本はちゃんと読んでいないので、また改めてチェックしてみます。
 
Posted by えほんうるふ at 2005年05月16日 00:03
はじめまして、大人向け絵本を検索していて気になる文章でしたので、かなり古い記事でしたがコメントさせていただきます。

模範解答がある問題提起には意味がない。まさにその通りですね。いろいろなものを読んでいて面白くないと思うのは、きっとそこに理由があったんだなと考えさせられました。


私はいわゆる”大人向け絵本”を描いています。特に癒しやそういった類のことを狙って描いているわけではありません。子供に向けたものでもなく、今は単に表現の方法として”絵本”のような作品を作りたいから作成し続けています。
絵本はもともと子供のためのものなので、絵本という括りにはかなりの違和感を持っています。私の作品は絵本ではないと、そうも思います。
それでも、絵があり文章が付いている作品形態なのでそれ以上に言い方がなく、知ってもらうためにはそのように言うしかないというのが現状です。

世の中には僕のような人間も少なからずいると思います。絵本でない何か新しい表現の方法のようなものが確立出来るようになれば、絵本が好きな方の”絵本”というものも汚さずに済むし、もっといい方向に進めるんじゃないかとも感じました。


Posted by ツギ at 2010年01月25日 14:07
>ツギさん

初めまして!
古い記事にコメント頂くのはとりわけ嬉しいものです。ありがとうございます。
お返事が遅くなり申し訳ありませんでした。が、いつもこんな調子なのでよろしければ今後も気長におつきあいください。

「表現方法としての絵本」そうですね、そういう作品も確かにありますね。私がこの記事で言及しているイラストレーター系作家の絵本というのも、まさにそのくくりに入るかと思います。
そういう絵本の中に、私の好みのど真ん中に刺さる作品が見つかることもあります。やっぱり読まず嫌いは良くないですね(^^;)

ちなみにツギさんの作風、かなり私好みです。後ほどゆっくり拝見させてくださいね。
Posted by えほんうるふ at 2010年01月31日 23:38
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