2012年07月24日

シワが増えませんように

おこだでませんようにおこだでませんように
くすのき しげのり・作 石井 聖岳・絵

小学館 2008-06

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この絵本のレビューを書くにあたり、どのカテゴリーにいれようかはたと迷った。
「大事なことを教わる絵本」なのは確かだろう。
でも、この絵本が説く「大事なこと」は、おそらく子を愛する母親ならば誰でも、
わざわざ教わるまでもなく本能的に知っていることだ。
分かっているのになかなか実践できないからこそ、親も子も苦しいのだ。

ということは、「切ない絵本」か?
いやいや、切ながってる場合でもない。そんな感傷にいちいち浸っているようでは、
それこそ待った無しの日々の育児が成り立たない。

それではやはりアレか。「泣ける絵本」か。
号泣絵本は?と聞かれてこの絵本を挙げる人も少なくないらしい。
確かに泣こうと思えば泣ける。
いや、泣こうと思わなくても、日頃ある種の子どもと接する機会があり、
ツボに入るシチュエーションに縁があるなら、タイミング次第で号泣必至だと思う。

だがしかし。
絵本のオトナ読みを提唱する私の中の要らぬプライドが、
この作品を「泣ける絵本」認定することをどこかで拒んでいる。
その理由はズバリ、ベタすぎるの一言に尽きる。
書き出しといい、展開といい、クライマックスの間といい、絶妙にたどたどしい決め台詞といい
とにかく演出が上手すぎるのだ。
そして、ダメ押しのごとく壁に貼られた満面の笑みの「おかあさん」の絵。
これはいけません(笑)。もうね、反則です、反則!

そもそも最初に私がこの絵本を読んだときの感想は「け。」だった。
天の邪鬼な性格が祟って、明らかに読み手を泣かせにかかっていると感じてしまうと、
何か鼻白んでしまって、妙に冷静になってしまい泣けないのだ。
(ちなみに絵本のように視覚依存の大きい紙媒体であれば、私もかなり強気でいられるが、
これが視覚と聴覚のダブル攻撃をされる映像作品なんかだと割とあっけなく落ちる。)

だから、過去ログに書いた通り、私は「大人による大人のための絵本」が苦手なんである。
私にとってこの「おこだでませんように」は、長らくまさにそう言う範疇の作品だった。
ところが先日、たまたま小学校の読み聞かせで手持ちの本が足りず、
小学5年生にこの絵本を読んで紹介したところ、
いつも落ち着き無く騒いでいる男子達がじわじわと食い入るように話にのってきた。
ヤンチャ坊主が多いクラスだったので、人ごとではなかったのだろうか。
ラストの数頁を読んでいる時にチラ見した、彼らのニヤニヤと嬉しそうな表情が忘れられず、
私も認識を大いに改め、大人絵本会のお題にまでとりあげたという訳である。


話を戻そう。
そんなこんなで結局この作品にピッタリはまるカテゴリーが見つからず、
私はこの絵本の為に「身につまされる絵本」というカテゴリーを新設した。
この先、他にもこのカテゴリーにピッタリな絵本との出会いがあるかと思うと
嬉しいような嬉しくないような、複雑な気持ちになるが・・・。


お気に召しましたら・・
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【身につまされる絵本の過去ログ】
posted by えほんうるふ at 02:57 | Comment(2) | TrackBack(0) | 身につまされる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たしかに身につまされる・・・かもしれないですね。
この本を書いたくすのきさんは小学校の先生でした。つい最近まで。
で、今話題の発達障害のある子たちを実際に教育の現場で教えてきた先生。
この絵本は、2011年のIBBYのバリアフリー絵本としてJBBYが推薦し、「障害」が描かれている図書として認定を受け、世界中に紹介されることになっています。
この先生のように、あるいはお母さんのように、そのある種のできなさを認めてまるごと受け入れてくれるチャンスが全ての子にあるようにと祈らずには居られません。
かつて私の息子もレッテルを貼られ、なにかあると暴力的と言われていたから・・・この子の気持ちが痛いほどよくわかる。
だけどわかるだけに私も「け。」っていう反応しかできなかった!
身につまされるから手に取りたくない本でもあります。
これって子ども向けではなく、大人向けの子どもを理解するための本なのかなぁ・・・
Posted by kako at 2012年07月24日 14:56
>kakoさん

ようやくまとめをアップして、ホッとしたところですが、いやー今回は重かった!
kakoさんが教えてくださったバリアフリー絵本認定の話に反響が大きくて、その分思っても見なかった方向へ話が深まり、本当に有意義な回になりました。

kakoさんご自身にとっては改めて対峙するのが辛い絵本だったのに、こうして参加してたくさんの情報と気づきを提供していただき、いつもながら本当にありがとうございます。

ただ、大人絵本会は勉強会ではなく、あくまでも絵本をネタに楽しみながら価値観の相違を語り合おうという趣旨のものですので、辛い思いをしてまで参加してくださる方がいるということに、主催者として心苦しく思う面もありました。
万人に愛される完璧な絵本なんてありえないので、きっと毎回誰かしらにそういう思いをさせてしまっているのかも知れませんが、個人的にあまりにも深読みが辛い絵本がお題の時は無理に参加せず、どうぞスルーして心の安息を優先していただき、また好きな絵本がお題に上がったときに気軽にご参加いただければと思います。

今後もどうぞよろしくお願いします♪
Posted by えほんうるふ at 2012年07月28日 08:23
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