![]() | ねえ、どれがいい? (評論社の児童図書館・絵本の部屋) ジョン・バーニンガム作 まつかわ まゆみ訳 評論社 2010-02 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人はその生涯で何回ぐらい究極の選択を迫られるのだろうか。
いや、実際に究極の選択というドラマを我が身で経験できる人がどれほどいるのだろうか。
かくいう私も、恐らくとっくに人生折り返し地点を通過しているはずだろうに、
未だかつてそのような重大な選択にリアルに頭を悩ませた覚えがないのだ。
そもそも究極の選択というのは、名画「ソフィーの選択」にもあるように、
「どっちも良いので選べなくて悩む」というより
「どっちも辛いけどどちらかを選ばざるを得ないので悩む」
という局面を指す場合が多いような気がする。
つまり、そういうシビアな状況に陥らずに生きて来られたということで、
要するに自分のこれまでの人生は案外平和なものだったのだろうか。
単純に、深く考えず済し崩し的にその場その場で楽な方を選んできただけのような気もするが、
結果的に今現在自分が置かれている状況に大きな不満を持たずに過ごせているのだから、
やはり恵まれていたのだろう。
それほどシビアな選択ではなくても、いくつかの選択肢の中からどれかを選ぶということは、
何かを得て何かを失うことだと、私たちは経験的に知っている。
だからこそ、もともと優柔不断な人は齢を重ねる毎にさらに慎重にもなり、
私のようにもともと行き当たりばったりな人間は、(よほど痛い目に遭わない限り、)
失っても何とかなるという根拠の無い自信の元にどんどん大胆に突き進むようになる…のかも。
逆に、経験値の低い人間=子どもは、先々のことまで考えが及ばない分、何かと決断が早い。
今日の絵本「ねえ、どれがいい?」には、まさに背水の陣といった状況での究極の選択が
これでもかと列挙されていて、大人にとっては非常に悩ましい。
ところが、これを幼稚園や小学校(低学年クラス)で読み聞かせすると、
読んでいるそばからじゃんじゃん即断即決の合いの手が入り、大いに盛り上がるのだ。
そして彼らの清々しいほど無邪気な即断っぷりに、こっちまでワケもなく気分がアガる(笑)
おそらく、大人がこれと同じように無邪気な「究極の選択」妄想を楽しむのなら、
婚活市場に出回る候補者リストなどは、悩み甲斐があって面白いのではないだろうか。
というのも、実際にそういうサービスを利用している知人の話では、
「ねえ、どれがいい?」と示される候補のどれをみても、
悩む以前にどれも却下、という場合が残念ながら少なくないそうで…orz。
リアルに選択を迫られている人にとっては笑い事ではないだろうが、
この絵本を楽しんでいる時の子ども達のように、
「げーっ、やだー!!でも意外と面白いかも!?」
という前向きな心でひとつ、限られた人生をめいっぱいエンジョイしたいものである。
お気に召しましたら・・



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