2006年09月02日

遊び力がコドモの財産


家で子どもとトランプをすると、結局ババ抜きと神経衰弱ばかりになってしまう。しかも真剣勝負するとあっさり大人が勝ってしまい、親も子も何だかつまらない。そこでネタを増やそうと「新しいトランプの遊び方」なる本を図書館で借りてみたら、意外にも幼児でも大人と対等に遊べるゲーム法がいくつも載っていた。
しかし、
 ・帽子などを的にして自分の持ち札を順番に投げ、誰が一番たくさん入るかを競う。
 ・床のスタート地点にカードを並べ、一斉に息を吹きかけてゴールまでの早さを競う。
 ・テーブルの端を崖に見立て、それぞれの持ち札を加減して弾いて誰が一番端ギリギリに止められるかを競う。落としたら負け。

…これってトランプゲームと言えるのだろうか(^^;)?
 
要するに、トランプを遊び方の決まっているゲームの道具ではなく、単なる遊びの素材(=大きさ・形が同じで滑りが良い丈夫な紙片のセット)だと思えばいくらでもシンプルな遊びができるのだった。はっきり言ってトランプの本来の用途は無視されているが、こういう身体を使う単純な遊びは断然コドモの食いつきがいい。今までになく場が盛り上がり、それから毎晩のように我が家の居間ではカードが飛び交っている。

もっとも今ほど既成の玩具が巷に溢れていなかった時代には、子どもたちは皆当たり前に、限られた素材をあらゆる遊びに活用したのだろう。それで思い出した絵本が、「びゅんびゅんごまがまわったら」。

子どものケガをきっかけに閉鎖されてしまった校庭脇の自然の遊び場。これを何とか開放してもらおうと子ども達が校長に直訴しに行く。ところがアマノジャクな校長はいきなり得意のびゅんびゅんごまを披露して見せ、
「まわせるようになったら、たのみも きこうじゃあないか。」
と、不敵に笑うのだった。必死で練習を重ね、ようやく技をマスターした子ども達が勇んで校長室をたずねると・・・

作中には豊かな自然を素材にした昔ながらの素朴な遊びがたくさん出てくる。そうだ、私たちはもともと誰もが生まれつき遊びの天才で、身の回りの全てを玩具にしてしまうクリエイティブな生き物だったのだ。整地され安全な遊具の揃った校庭に比べ、雑木林にほんの少し手を加えただけの遊び場は危険と隣り合わせだが、それだけに刺激と発見に満ち、子ども達の豊かな遊び力が存分に発揮できる。遊び場を駆け回る子ども達の絵からは歓声が聞こえるようで、一人一人の生き生きとした表情を見ているとこっちまでわくわくと嬉しくなってくるのだ。
また、この絵本の魅力はなんと言ってもこの校長先生のキャラクターだ。一見頑固な意地悪じいさんかと思いきや、実は素知らぬ顔で憎まれ役を引き受けつつしっかりと子どもの持てる力を引き出す名コーチなのだ。特に私のお気に入りは、嬉しさをこらえた憮然とした表情で柿の実の首飾りをして朝礼台に立つ校長の姿。本当は子どもが好きでたまらないくせに、つい憎まれ口を叩いてしまう校長の分かりやすい偏屈ジジイっぷりがたまらない。
子どもの絵に定評のある林明子さんが描く主役級の大人は珍しいが、オトナならではの人間的魅力がばっちり伝わる表現力はさすがである。


モノがあふれる今の時代に親をやっていると忘れがちなことがある。それは、必要が発明の母ならばその逆もまた真なり、ということだ。つまり、遊びへの情熱から生まれる発想の豊かさは、与えられる物質の豊かさに反比例してしまうらしいのだ。私がそれを実感として分かるのは、自分がかつて無分別に玩具を買い与えて子どもの豊かな遊び力をスポイルしてきた張本人だからだ。

きっかけは8年前。初めての子に舞い上がって玩具を買い込むうちに、親の自分が玩具の世界にはまってしまった。特に木製玩具や輸入玩具に関しては周囲にオタクと呼ばれるほどで、しまいには内外からオトナ買いで取り寄せあっという間に家中が玩具だらけになった。もちろんとても遊びきれず、一軍二軍三軍と分けて時々入れ替えながら子ども部屋に置いたりもしたが、子ども達の興味は散漫になるばかり。そんなある日、色とりどりの玩具の山を前に子どもが言った。
「あーあ、たいくつ!」
平手を食らったようなショックと共にようやく目が覚めた私は、その日からさっそく玩具のリストラに着手。子どもたちと相談しつつ、片っ端から売ったりあげたり寄付したりで処分した。残ったものは、ごくシンプルな積み木とブロック、文房具一式、折り紙・ビー玉・布・紐などの素材系、厳しい審査をクリアしたぬいぐるみオールスターズ、ジグソーパズル、ルールの単純なボードゲームとカードゲーム、楽器類とボールや乗り物などの遊具類が少し。ああ、こうして書き出すとまだまだ多い…(^^;)

玩具がごっそり減った我が家で子どもたちが退屈しているかというとむしろ逆で、毎日とても楽しそうに遊んでいる。最近は家で遊ぶ時間のほとんどを工作とごっこ遊びに費やしているようだ。工作では、家中の不要品をかき集めては競うように謎の物体を作りまくる。おかげで激化した空き箱争奪戦の飛び火がくるわ、せっかく玩具が減ってスッキリしたはずの部屋が余計散らかるわで親は泣けてくる。一方ごっこ遊びの方は最近読んだ絵本と映画にインスパイアされるらしく、「親を亡くしたベジタリアンのあざらしと、その飼い主となる心やさしい鮭の出会い」など、端で聞いているとそのまま絵本になりそうなシュールな世界が展開されていて面白い。
これが8歳と5歳になる子どもの遊びかというと何だか幼稚な気もするが、衰えた遊び力のリハビリとしては上々だろうと、ヒソカに母はホッとしているのだった。
posted by えほんうるふ at 16:45 | Comment(12) | TrackBack(1) | 嬉しくなる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トランプ遊びは昔、父がカードを切る手腕の自慢のし過ぎで
皆くにゃっと曲がってしまった記憶があります・・・。

私が子供の頃は、丁度色んなゲーム機が発売された時期でした。
母によれば、これで遊んでいると不機嫌になることが多く
注意しなくても長時間遊ばなかったそうです。

いまの時代のお子さん方は、一体どんな時間を過ごしているんでしょうね。


それと、残念ながら食べ物の本、正体がわかりません(;O;)
どう探しても・・・、多分図書館で手にとって1度読んだだけで
その場で返した本だったのではないかと思います。
いまなら、奥付も確かめるんですが・・・orz|||
急に見つかることがあったら、ご報告します。
Posted by きくちか at 2006年09月03日 11:58
えほんうるふさん、お久しぶりです!
ようやく夏休みも終わりましたね〜。

子どもが強いトランプ遊びと言えば、やっぱり「スピード」かな? カードがダメになることを覚悟して遊ばなければならないのが難点ですが(笑)

がらくたの工作作品と描き散らかされたお絵描き、えほんうるふ家ではどうしていますか? 何年も前の工作が、あとから見ると意外と良い出来だったりして、捨て時期の見極めが難しいんですよね(^^;) 家は散らかるばかりです〜
Posted by miyaco at 2006年09月03日 12:29
この本、たぶん私の記憶が間違ってなければ(かなり自信がない)国語の教科書で読みました。小学校一年生の時。なもんで、びゅんびゅんごま、流行りました。

そういえば、私、まわりの友達に比べるとおもちゃは買ってもらえなかったです。ファミコンは持ってたけど、ソフトは数個しか買ってもらえなかったり。(工作の材料は山ほどありましたが。)
反動で、20代過ぎてからタガが外れたようにガチャポンやったり、レゴ集めたりしました。
与えなすぎるのも問題かも?!
Posted by hyo-tan at 2006年09月03日 14:36
どうも、はじめまして。"ちゃき"と申します。サラリーマンしながら、絵本作家を目指しています。
子供と会話をしているような絵本は無いものかと、物色中に、ここへたどり着きました。えほんうるふさんの解釈の視点が、とても魅力的に感じながら読ませて頂きました。

僕は子供と接する機会がないので、子供の遊びの風景を目の当たりにできるなんてものは、とっても素敵に感じます。特に「親を亡くしたベジタリアンのあざらし...」。どんな風に遊んでいるのか気になって仕方ありません。面白い遊びを見られた際には、また教えてください^-^*

長々と失礼しました。またコメントさせて頂きますね。
Posted by ちゃき at 2006年09月04日 00:36
>きくちかさん

おお、御尊父はあの技がお得意でいらっしゃったのですね。私は何度やってもカードが四方八方に飛び散り情けない思いをしたものです…。

「ゲームで遊んでいると不機嫌になることが多い」それは私です!機械に対してはつい物言いがケンカ腰になってしまうせいか、カーナビとも相性が悪くすぐケンカになるのでウチの車には付けていません。

例の本の情報は気長に待ってますのでどうぞお気になさらず。突如何かのきっかけで分かる日をお互い楽しみにしましょう。
Posted by えほんうるふ at 2006年09月04日 01:29
>miyacoさん

お久しぶりです!長いことご無沙汰しておりましたのに、早速コメントを頂き恐縮です。

はい、スピードは確かにカードが痛みますね。ババ抜きや神経衰弱には使えなくなります(笑)。

ガラクタの山、もとい、ミニ芸術家の作品群の処遇については基本的に作者の意向に従うことにしています。異様に多作のせいか案外個々の作品に執着は無いらしく、「これ捨てて良い?」「いいよ!」とあっさりしていますので、私の独断と偏見で選んだ傑作のみ残して飾ったりしています。でも上の娘は芸術家肌(?)なのか、ちょっとでも気にくわないと即破壊してゴミ箱に突っ込むので油断がなりません。ゴミ捨ての際には傑作が混じっていないかの確認作業が欠かせないのです。
Posted by えほんうるふ at 2006年09月04日 01:30
>hyo-tanさん

教科書に載っていたんですか。いい話ですもんね。実は「新しい校長先生」ってところにオトナの事情が隠されていたりしますが小1なら気がつきませんしね(笑)。

ああ、私の実家もオモチャの少ない家でした。私が子どもを持ってからオモチャに狂ったのも、まさに反動だったのかも知れません。まさに自制のきかないガキに金持たせたらこうなる!状態でした(恥)。
Posted by えほんうるふ at 2006年09月04日 01:31
>ちゃきさん

初めまして、ようこそオトナノトモへ。こんな辺鄙なところを見つけてくださってありがとうございます。

子どもの発想の豊かさってオトナの想定をはるかに超えているので、彼らが遊んでいるところを観察するのは本当に面白いですよ。その意味でごっこ遊びは最高ですね。

このブログを初めてから何人もの絵本作家志望さんとの出会いがありました。そういう時代なのだなぁと感慨深いです。ちゃきさんの夢がかなうことを祈っています。
Posted by えほんうるふ at 2006年09月04日 01:32
はじめてコメントさせていただきます。
【Enjoy!読み聞かせ@えほん】のわかな
と申します。

あまりの面白さに、気づけば1時間以上お邪魔中です。
以前に伺った時は時間がなかったので、今日はチャ〜〜ンス♪とばかりに。

おもちゃのお話は特に興味深く、耳も痛かったです。
我が家、絵本もありとあらゆるおもちゃも
子どものお絵かき・折り紙といった紙類も
めちゃめちゃごちゃごちゃありまして(^^;)

おかげで長男は一人遊びの鬼!
友だちと大人の手を煩わせず遊べるようになるまで、なが〜〜〜く感じました。

長くなりましたが、これからも伺わせてください。
過去記事にも遡って読ませていただきます☆

Posted by わかな at 2006年09月08日 21:42
>わかなさん

はじめまして、初のコメントありがとうございます。
息子さんが「一人遊びの鬼」になるまでのご苦労はお察しいたします。オトナにとってはコドモに与える玩具の全ては「週7日間24時間遊び相手」の苦役から解放されるための貴重なツールだったりもしますものね。だからこそ、見向きもされないとそのまんま不良資産に(^^;)

しばらく更新をサボリ気味だったのですが、ここのところまた復活しつつあります。きまぐれな管理人ですがどうか気長におつきあい下さい。
過去記事へのコメント・トラックバック大歓迎ですので、お気軽にどうぞ♪
Posted by えほんうるふ at 2006年09月09日 07:54
えほんうるふさん、こんばんは!
拙ブログへのご訪問&コメントをありがとうございました!
ウチの長男の場合〜一人遊びの鬼になるまでは全く苦労はなかったんですよ(笑)
彼の興味に合わせたおもちゃを見繕うのが夫婦揃っての「趣味」で、彼は面白いくらいにおもちゃには食いついてくれて、自然に「一人あそびの鬼」に育ちました。
苦労はそれからで^^
満2歳で保育園児になったものの、他の子や保育士さん達を無視するかのごとく、一人でしかあそばない(笑)
園のビデオでは毎回“遠くに映る我が子の背中”を観ていました。
ものすごく楽しい遊びを提供してくれる保育園で、友だちと遊べるまでに3年かかったんですよ〜。
その代わり。
「お母さん、遊んで〜〜」と纏わりつかれるという苦労を私は知りません。
今でも一人で遊びを作り出し、工夫し、一人で何役もこなして遊んでいます。
極端なんですよね。次男が生まれて思い知りました。でも、彼の個性を愛しています。

すみません。おもちゃを語らせると長いです(汗)
それでは過去記事へと飛びます!
Posted by わかな at 2006年09月10日 22:20
>わかなさん

なるほど、息子さんは生まれついての一人遊びの鬼(?)だったのですね。きっと集中力のあるお子さんなんでしょうね。うちはオモチャのあるなしに関わらず昔から「一緒に遊ぼう」攻撃が激しいのでちと羨ましい。まあそれもせいぜいあと数年のことだと思うと愛おしい貴重な時間でもありますが…。
Posted by えほんうるふ at 2006年09月11日 21:20
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