2011年09月20日

人生で大切なことは全て図書館で教わった

としょかんライオン (海外秀作絵本 17)としょかんライオン (海外秀作絵本 17)
ミシェル・ヌードセン 作 ケビン・ホークス 絵
福本 友美子 訳

岩崎書店 2007-04-20

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物心ついて以来、少なくとも週に一度は図書館に通う生活を続けている。
そんな私にとって、もはや図書館は第2の家と言っても過言ではない。
実際、私はたぶん、人生で大切なことは全て図書館で教わったのだと思う。

幼い頃、両親は家業に忙しく私は一人で遊ぶことが多かった。
兄弟と遊ぶより、一人で図書館へ行く方が好きだった。
騒がしい家よりも、シーンと静まりかえった図書館の方がよほど心地よく過ごせた。
特に、館内の一角の、カーペット敷きで一段高くなっていて、大人の腰の高さほどの書架でぐるりと囲まれた絵本コーナーは、どんな場所よりも心安らぐ安全地帯だった。
そのささやかな囲いが、現実世界の面倒や悲しみや怒りから私を守ってくれる気がして、
私は来る日も来る日も通いつめては、お気に入りの絵本を抱えて片隅に陣取っていた。

その図書館では週に一度、「おはなしのじかん」という読み聞かせの企画をやっていた。
私はその曜日だけは、できるだけ図書館に行かないようにしていた。
「おはなしのじかん」には、たくさんの親子が参加していたが、子どもだけで聞きに来ている子はほとんどいなかったのだ。
お気に入りの絵本が読まれると知って、勇気を出して一人で「おはなしのへや」に入ってみたことがあったが、周りを見回すと仲良く始まりの時間を待つ幸せそうな親子ばかりで、ひとりぼっちの自分には何とも居心地の悪い空間だった。
人一倍自意識過剰なコドモだった自分には、絵本を読み聞かせながら、こちらに笑顔を向けてくれる司書のお姉さんの気遣いすら、何だか申し訳ないようで、居たたまれない気がしたものだ。
大好きな絵本コーナーも、その日は決まって読み聞かせ目当ての親子に占領され、居場所を失った私は恐る恐る大人の本の書架の迷路を探検して過ごした。
その頃に出会った「大人の本」のおかげで、私の人生は格段に味わい深くなったような気もする。


さて、図書館を扱った絵本は多く出版されているが、私にとって一番のお気に入りはこの絵本だ。
最初に読んだとき、真っ先に心に浮かんだのは、
「ああ、あの時、あの『おはなしのへや』にこのライオンがいてくれたら!」
そうすれば、私もひとりぼっちではなかったのに・・・。

この絵本は、設定は思い切りファンタジーなのだが、描かれたテーマは普遍的で、私たちの日常生活でいくらでも起こり得る「ルールを守れない時」がテーマになっている。

皆さんご存じの通り、(公共)図書館という場所は、あらゆる公共事業の中でもダントツと言ってもいいぐらい、素晴らしく太っ腹なサービスを提供してくれる施設である。
何しろ、誰でも入館自由で好きなだけ本が読めて、望めば無料で貸し出しまでしてくれるのだ。
その寛大なサービスを維持するため、図書館には数多くの決まりがある。
利用者がそれを守ればこそ、サービスを享受する自由と権利は保障され、その恩恵を被ることが出来るが、守らない人がいれば、それだけ決まりや制約が増え、利用者の自由は減っていく。
自由と制約は相反するものではなく、相関するものであるという、分かりやすい例だ。

子どもはそのままでは野生動物と同じなので(すいません私見です)、まずは社会のルールを教えて守らせることで、独り立ちできるだけの社会性を身につけさせるのが大人の役目だと思う。
しかし、どんなルールでも、守れない時はある。その時そのルールを守るか守らないかの判断は、本人のモラル意識にかかっている。
その時正しい判断ができるモラル意識を育てることは、ただ単にルールを教えてそれを守らせるよりも、ずっとずっと難しいことだろう。
その難しいことを、この絵本は温かく粋な語り口で、子どもにも大人にもやさしく教えてくれる。

何のルールも存在しないカオス状態から、共同生活のためのルールを作り、社会としての機能を発展させてきたからこそ、世の中は便利になり私たちの衣食住は豊かになった。
しかし、ただ決まりを作る・守るという段階で私たちが止まるならば、それは統率者とよく統制された動物の群れに過ぎないのではないだろうか。
一人一人がただ闇雲に決められたルールに従うのではなく、時にはルールよりもモラルに基づいた行動を選択する心の余裕を持つことが出来たら、単なるコンビニエントな社会ではなく、そこから一歩進んだ、もっとしなやかな成熟社会に近づけるような気がする。

お気に召しましたら・・
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posted by えほんうるふ at 15:23 | Comment(6) | TrackBack(0) | 大事なことを教わる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
図書館のアウトソーシングの仕事をしているものにとって、今回のお題本は・・・いろんな示唆を与えてくれるものでした。

本来、図書館はえほんうるふさんのような子ども達にとっても過ごしやすい居場所であるべきですよね。

私もひとりで書架の間に座って、日がな一日過ごせる子どもでしたから^^

親子連れの多いおはなし会の日に、疎外感を感じている子がいることも・・・スタッフは気にしなくちゃいけないですね。

「としょかんライオン」には、図書館の持ってる機能すべてが余すことなく描かれていて、優れた絵本です♪
この絵本を選書したえほんうるふさん、あっぱれ♪

今、図書館に関わるものも『知の広場―図書館と自由』みすず書房や『デンマークのにぎやかな公共図書館』新評論などを読んで、居心地のよい図書館空間を創造できるように、学んでいきたいなって思ってます。

そのためにも市民の声が自治体に届けてほしいw民間がこうしたい!と提案しても、自治体で否定されることも多いのです・・・市民の要望が直接届けば、私たちもサービスの質を変えることをしやすいと思うのです。
Posted by greenkako at 2011年09月21日 10:27
考えさせられました。なかなかコメントできませんでした。

自慢っぽくなってしまいますが、うちの子たちに関しては、多分モラルが守られていたと思うので、気になるようなことはありませんでした。

ただ、勤務先の特別支援学級では月に一度図書館へ行って本を借りる、という時間があるので、とても気を使います。借りてきた本に対しても気をつけてはいます。

大方の子はまあ大丈夫なんですよね。

でも、

というのが曲者なんです。
わずかであっても、図書館のルールという面で問題を起こす子が1人でもいると、出入り禁止になるようなことはまだありませんが、信頼面で厳しいものがあるだろうことは予想がつきます。
実際に制限されてしまったものがあるからです。

その通りだな〜、と思って読んでいた次第です。
Posted by きーちゃん at 2011年09月25日 07:03
ブログに初めてお邪魔します〜♪

ツイッターでは、いつもお話を伺っていますので
とても身近な感じがします。

「大人絵本会」初参加が「としょかんライオン」だったことは

子どもの頃からの「図書館好き」としては、大変に嬉しいです♪

絵本や本や図書館が、これからも身近な存在であって欲しいなぁと
つよく思いました。

また、いろいろなお話をお聴かせ下さい♪

よろしくお願いいたします。

Posted by 風待人(またはLittleRing) at 2011年09月25日 11:01
>greenkakoさん

こんにちは。こちらにもコメント下さって光栄です♪
別に幼い日の恨み言を書いたつもりはなかったのですが、何だか考え込ませてしまったようですみません。
個人的には、あれはあれで良い経験ができたと思っています。
こういった「悪意を感じない疎外感」なら、幼いうちから多少経験したほうが、のちのち孤独に強くなれるような気がするのです。
むしろ、下手に大人に気を遣われると子どもなりに罪悪感を感じたりして、余計来づらくなる場合もあるかと…。
なかなか難しいですね。
私も何か気付くことがあれば、臆せず意見箱などを利用して「声」を届けていこうと思います。

先日の大人絵本会もとても盛況でしたね。
(気がつけば、私のフォロワーさんには図書館や書店・出版関連従事の方が相当数いるようです(^^;))
本の内容からどんどん話が脱線するのは当会ではいつものことですが、今回は色々な角度からの図書館談義が盛り上がって、楽しかったです。
図書館が実は苦手、という方の意見も貴重でしたね。
こんな話がポンポン飛び出すのもツイッターならではで、良い意味で何でもありな感じが居心地の良さにつながっているのかも知れません。
これも参加者の皆様のおかげです♪
Posted by えほんうるふ at 2011年09月25日 16:02
>きーちゃん

きーちゃん宅の子ども達が、公共の場での振る舞いに問題がある状況なんて想像できません。
むしろ、他の子ども達のお手本になってきたんじゃないかしら。

実際その通り・・というのは、自由と制約、の一節のことかな。
特別な配慮が必要な子ども達の場合、一概に一般の利用者と同じには語れないよね。
誰でも同じように受け入れるということが、かえって酷になる場合もあるのではないかしら。
「お察しください」と言いたいところだけど、それだと結局肩身が狭いのは変わらない・・・
差別ではなく、利用者の事情に合わせた利用形態の区別を求めて、予め運営者側と利用者側で要望のすり合わせをすれば回避できる問題もあると思います。
と言っても、なかなかそこまで手が回らないのが現実でしょうから、日々の現場は大変でしょうね。

きーちゃん、毎日のお勤め、本当にお疲れ様!
Posted by えほんうるふ at 2011年09月25日 16:03
>風待人さん

Little Ringさん、素敵なハンドルネームですね♪
先日は大人絵本会に初参加いただきありがとうございました。
時々こうして、ツイッターで知り合ってからブログに遊びに来て下さる方がいるのですが、
ご縁の不思議さにいつも何か小さな感動を感じます。

私も図書館大好き人間なので、あのお題で思いっきり図書館談義が出来て嬉しかったです。
図書館がずっと身近な生活だったので、もはや図書館のない町には住めません(^^;)
今住んでいるところは厳選しただけあって、徒歩圏内に区立が2館、大学図書館もたくさんあり、
自転車に乗れば大きな拠点館にも、バスに乗れば国際こども図書館もすぐです♪
気がつけば我が家の子ども達も図書館に毎週通うのが当たり前の生活になりました^^

P.S.先日は大人遠足に私が行きそびれてお会いできませんでしたが、いつかお目にかかれる日を楽しみにしています!
Posted by えほんうるふ at 2011年09月25日 16:04
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