2011年06月21日

親の幸せ 子の幸せ

だるまちゃんとてんぐちゃん(こどものとも絵本)だるまちゃんとてんぐちゃん(こどものとも絵本)
加古 里子

福音館書店 1967-11-20

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気がつけば私の親業歴も早や13年目。
普通、10年以上も同じ仕事をしていれば多少は経験値も上がり、一般企業ならば中堅社員と呼ばれても良い頃だろう。
しかし、育児という仕事に限っては、10年やそこらの経験なんぞペーペーのヒヨっ子らしい。
むしろ年々こちらの体力の衰えと反比例して行動範囲を広げていく子ども達に、日を追う毎に難易度の上がる問題を投げかけられ、経験者の余裕など微塵もない。
まさに育児は育自。そんなわけで私は今日も試行錯誤と反省と学びの日々である。

学生時代に何ら育児や教育に関する専門的な勉強をしてこなかった自分にとっては、仕事の参考書と言えば、いわゆる育児書と呼ばれる書籍であった。
もともと読書好きで好奇心旺盛な自分は、それこそ図書館の関連コーナーの棚を端から制覇する勢いで、ありとあらゆる育児書を読みまくったものだ。

その中で、私のお気に入りとなったのはこの二つ。
松田道雄先生の「育児の百科」と佐々木正美先生の「子どもへのまなざし」シリーズである。
前者は読み物としても面白い総合的な育児書。子どもの発育に沿って時系列に記述された内容がとても詳しくて面白い。また索引機能が素晴らしく、特に子どもが意思疎通の出来ない乳児の頃には大変お世話になった。出産祝いに何冊贈ったことか。
後者は、もう少し後になって、言葉で自己主張をするようになった子どもとのコミュニケーションに悩み出してから出会い、その内容に感動して以来私の育児の指針となってきた本だ。

佐々木式育児(?)の基本はずばり、過保護のススメである。(その名の通りの著書もある。)
赤ちゃんが泣いたら即、おむつだおっぱいだと要求を察して満たしてやるのと同じように、できれば2歳ぐらいまでは、子どもが望んだことを、ひたすら何でも望んだとおりにかなえてあげることを勧めている。
そんなことしたらとんでもなく我が儘な子どもになってしまいそうな気がするが、それは逆だという。子どもが望んでいないことを親が勝手に押しつける過干渉は良くないが、子どもが本当に望んでいることだったら何をどれだけしてやっても大丈夫。むしろ、そうやって乳幼児期にしっかりたっぷり依存経験をさせてやることで、子供自身が親に愛されていることを実感でき、時が来ればかえってすんなりと自立していくものだと説いている。

この素晴らしく愛にあふれた教えに感動して、さっそく我が家の育児でも実践しようとした私だったが、これがもう信じられないぐらい大変なのである(爆)。
そもそも私自身が幼い頃から親に甘えを拒絶されていたこともあり、子どものちょっとした甘えが、どうしても我が儘に思えてしまって全面的に受け入れることができない。
つまり、子ども甘える→一部叶えてあとは却下→子ども怒る・反発する→結局叱る→子ども拗ねる→親落ち込む、とまあ、だいたいこんな感じでループするのが常であった。

佐々木先生の教えは素晴らしいが、果たしてそれを本当に実践できる親なんているんだろうか?
と思っていたら、いたのだ。絵本の中に(笑)。
今日の絵本「だるまちゃんとてんぐちゃん」の中で、愛息だるまちゃんの我が儘な要求をひたすら叶えてあげようと奔走しまくる父親。彼こそが佐々木式育児の理想的なロールモデルである。

何しろこの父親だるまどんは、「友達の持っているものと同じ物が欲しい」などという、わかりやすい子どもの我が儘にとことんつきあってやる激甘オヤジである。
そんな父親の精一杯の提案に対し、「こんなんじゃヤダ」とあっさり却下するという暴挙に出るだるまちゃん!
ここで私なら早々にテメエいい加減にしろよ!とキレること間違いなしだ。
ところがだるま父はだるまだけあって七転び八起きの精神で愛する息子の笑顔の為に手を尽くす。
息子の笑顔、それこそが我が喜び!とばかり、嫌な顔ひとつせず再提案を繰り返すのだ。

やがて父親の労の甲斐あって、だるまちゃんはようやく「これならアイツに勝てる!」という逸品をゲットし、てんぐちゃんにドヤ顔で披露しにいく。
そして夢に見た友達からの「きみのがいちばん」の言葉を得て大満足、めでたしめでたし。
恐らくこの時だるま父も、息子の満面の笑みを取り戻した達成感に心酔しているはず。
子どもの幸せこそが親の幸せ、という理想的な親子関係が伺える完成度の高い絵本である。

ちなみに自分は一読して無理。と思ったクチだが、それでもこの眩しいほどの親の愛と、幸せ一杯のエンディングに、早々に挫折した佐々木式育児の成功例を見た気がして感慨深かった。

親であることの幸福は、子どもを幸せに出来る幸福にあるとおっしゃる佐々木先生。
条件付きでない愛を、と先生は言うが、多分私はそれを全うできるほど出来た親ではない。
それでも私はその後も、自分の中の鬼母と葛藤しつつ毎日の親業を続けている。
だるま父の境地には程遠くても、子どもの笑顔は私にとっても何よりの宝物だからだ。


お気に召しましたら・・
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posted by えほんうるふ at 01:18 | Comment(10) | TrackBack(0) | 目からウロコが落ちる絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私の育児のバイブルは、河合隼雄先生の
『Q&Aこころの子育て―誕生から思春期までの48章』です。
一番難しいと思われた子離れ・母離れは物理的には完了してしまったので、
これからいかに関わっていくかが課題だな〜。
たまに会うと、つい買い与えるおばあちゃん状態になりかねないのね。(汗)

それにしても懐かしいだるまちゃん、ワガママは子どもの特権かな。(笑)
Posted by ☆かめちゃん☆ at 2011年06月21日 07:38
こんちは。
仕事中に読みふけってしまいましたw
うるふさん、筆力ありすぎw

うちの夫クン、暗い部屋に帰るのは嫌な子どもだけど、わが子に対してはだるまパパかも。
それだけでもありがたいと思った方がいいねえ。
(厳しく育てられた私には甘やかしにしか見えないけど)

ちなみに私が好きな子育て本は
『ダドゾン博士の子育て百科』です。
あっさりとしているけど、大事なことは書いてあるって感じ。
同じく何度も出産祝いに送りました。

それから、『魂の殺人』(著者名忘れた)は、読む鬱のクスリ。親にされたことがいかに間違っていたか、大人になった自分が子どもの頃の自分を「あなたは悪い子じゃなかったのよ」と弁護できる本。
でも、ホントに鬱に入ったら読めない字の細かさw
Posted by ことのん at 2011年06月21日 10:57
期待どおりの内容です!大納得!そして、大好きな本の話をきけてうれしい!

親子の葛藤スパイラルを繰り返している私。今朝も幼稚園に送る前に、ブチ切れして、最悪な別れ方をしてしまいました・・・・。
だって、時間きてるのに、「このテレビ終わったらいくわ」って言う5歳・・・・。
オマエ〜、誰が送っていくおもてんじゃ!ドアホ!ってなわけでした・・・・・。

「親業」は、ほんま何年たってもうまくいきません。難易度が高くなるっていうの、よくわかります。これからどうなることやら・・・ですが、『親であることの幸福は、子どもを幸せに出来る幸福にある』この素敵な言葉を胸に、これからもがんばろうと思います。ありがとうございます!


私もブログで熱く語っているので、よろしければ読んでみてくださいね。
Posted by Kaz at 2011年06月21日 12:33
はじめまして。ツイッターからきました。
えほんウルフさんの文章、すごく好きでした。
こういう書き方を私も理想としていますが、
ついつい甘くなってしまう。
もともと男性の書くものが好きなので、
簡潔でわかりやすい文章に、さらっとはいれました。

過保護、知らないうちに、これがいいだろうと推進してきました。
とくに赤ちゃんの頃は、仕事もしているので、久しぶりに合うわが子が不憫でなんでも望みを叶えました。抱きグセなんてつきっぱなしw
11歳になる今も同じ。それでもうちの子はなんの問題もなく育っているし、間違ってはいなかったかもしれないと、少し自信がつきました。

父親だるまの愛情がどんなだったか、もう一度この絵本、読み返してみます。
Posted by フラニー at 2011年06月21日 14:55
>かめちゃん

お久しぶりね。
河合隼雄氏の本は、絵本関連の本ばかり読んで育児書をちゃんと読んでいません。今度読んでみるね。

ちなみに最近、息子の育児に関しては発達障害関連の解説本が素晴らしく役に立っています。
当てはまる!というより、その前提で接すると自分がすごく楽なのです。
煮詰まったときの新しい視点は何であれありがたいので、ちゃんと診断も受けてみようと思っています。
Posted by えほんうるふ at 2011年06月22日 00:00
>ことのんさん

ダドゾン博士は未読です。あっさりしているのは私向きかも。取り寄せてみます。
「魂の殺人」はかすかに読んだ記憶が。育児関係なく自分自身のことで悩んでいた頃に読みあさった本の一冊だったように思います。

だるまパパは一家に一人いれば充分かと思います^^
Posted by えほんうるふ at 2011年06月22日 00:02
>kazさん

佐々木先生の言葉は一つ一つがうんうんうんと頷けることばかりなのですが、いかんせん鬼母にはハードルが高い教えが多く、考え込むことの多い毎日です。
まあぼちぼち行きますわ〜^^
Posted by えほんうるふ at 2011年06月22日 00:02
>フラニーさん

ツイッターからようこそ♪
えーと、私の文章が偉そうなせいか、よく男性に間違われます(笑)

知らないうちに過保護、というのは佐々木先生仰るところの理想的な親子関係のように思えます。
これからもお子さんとどうぞ仲良く♪
Posted by えほんうるふ at 2011年06月22日 00:03
私ね、子ども達から、勤務先の特別支援学級の支援員の中でも厳しい先生、っていう位置づけみたいでね。私以外の支援員には甘える子って結構いるんですよね。

そんな私は、多分、厳しい育児をしてきたのだと思います。

でも、今のところ、上の子は高1だけど、問題ないみたいよ。全面的に受け入れることはしなかったけれど、大丈夫です。そんなもんだよね。
Posted by きーちゃん at 2011年07月02日 06:00
きーちゃんは、「厳しさの中に愛がある」ってタイプのお母さんだろうなぁ。何となく想像出来ます^^

うちは、(下の子の場合)無制限に受け入れたりしたらどこまでも調子に乗るのが容易に想像できるので、日々加減に悩んでます(笑)
Posted by えほんうるふ at 2011年07月03日 10:36
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