2011年05月31日

突発的ノマドワーキング

やまのかいしゃやまのかいしゃ
スズキ コージ 片山 健

架空社 1991-04
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東京を東西につなぐJR中央線とほぼ並行して走る私鉄京王線。
そのほぼ中間地点からやや西よりの多摩地区に生まれ育った私にとって、
電車の行き先とは「街行き」か「山行き」のどちらかであった。
街とはつまり新宿で、それは幼い私にとって憧れの都会であった。
山とはつまり高尾山で、小中学校時代、登山と言えばこの山に登ることだった。

やがて成長して社会人となった私は、その京王線に乗って街の会社に通勤するようになった。
最寄り駅のホームは線路を挟んで行き先別に向かい合っていた。
春先や秋の行楽シーズンになると、向かいのホームに到着する列車の車内に、
リュックを背負った小学生や中高年の団体のご機嫌な様子が見えることがあった。
慢性的に睡眠不足だった当時の私には、登山は少々ヘビーなレジャーに思えたが、
それでも車窓越しに見える彼らの浮き足だった様子を羨ましく思ったものだ。

今日の絵本は、あの時の私の気持ちをそのままお話に描いたような内容だ。
会社に向かう通勤電車に乗ったはずが、何故か反対方向の電車に乗ってしまったほげたさん。
そもそも遅刻常習犯らしい彼はやたらと諦めがよく、焦る様子もなく成り行き任せに終点へ。
山奥の駅に辿り着き、偶然出会った同僚のほいさくんも道連れに、当たり前のような顔をして
「やまのかいしゃ」に出勤してしまうのだ。
もちろん仕事にならないが、お構いなしに社長まで呼びつける。
さすがそんな彼を雇っているだけあって変わり者なのか、無断欠勤ならぬ無断異動をしたヒラ社員に呼ばれるまま、社長もほいほいと部下を引き連れて街から山へやってくるのだった。
そして社員もろとも郊外社屋生活を満喫する様子が描かれるものの、当然ながら全然儲からない!
ということに賢い社長が気がつく(笑)。
そこであっさり撤退するかと思いきや、何故か「やまのかいしゃ」事業部は営業続行。
おまけにどう見ても仕事の出来そうもない例のおとぼけコンビに全運営を任せてしまうという、
まさかの展開。
大物過ぎる社長の仰天経営に、この先の社運やいかに・・??


ああ、なんて楽しい絵本だろう。これぞ大人のためのファンタジーだ。
何といっても、アホアホ社員のほげたくんが大失敗で失業するどころか、ちゃっかりサテライトオフィスの長に収まるというハッピーエンドにつながっているのが何とも嬉しい。

あの頃、もし私がこの絵本に出会っていたら、きっと一度は向かいのホームに立って、
スーツのまま登山客に混じって下り電車に乗り、子供じみた冒険をしていたかもしれない。
どうせ会社を辞める覚悟があるなら、一度ぐらいやってみれば良かったと今でも思う。
近いうちに子ども達と一緒に高尾山に登ってみようと思っているのだが、
向かいのホームから車内の楽しげな私たちを見て、スーツ姿の通勤客の誰かが思い切った
(血迷った?)冒険に出るかもしれない・・・そんな想像をするのも楽しいものだ。

全体のストーリー展開もさることながら、所々に散りばめられた小ネタの一つ一つがまた面白く、
まさに突っ込みどころ満載のこの絵本。
残念ながら現在は絶版中だが来年復刊されるという情報もあるので、
図書館でも入手できなかった未読の方はどうぞお楽しみに。


お気に召しましたら・・
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posted by えほんうるふ at 19:11 | Comment(2) | TrackBack(0) | 笑える絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本、絶版になっちゃうんですよね。
すっかり忘れていました。

この本って、テレビ絵本で放映していたのを見ていたのがきっかけで知りました。
ありえない展開に、いいな〜、と思ったことを覚えています。
Posted by きーちゃん at 2011年07月02日 05:54
>きーちゃん

久しぶり!元気にしてたかな?
そうそう、テレビ絵本やってたんですってね。
誰が朗読したんだろう・・

そうそう絶版で、大人絵本会開催前にはアマゾンの中古が売れまくっていたというw
良い絵本があっという間に絶版になってしまう時代なので、出会いで即断して買わなくちゃいけないのかも。トホホ。

Posted by えほんうるふ at 2011年07月03日 10:31
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