2011年02月21日

ヤラセは人の為ならず

泣いた赤おに (日本の童話名作選)泣いた赤おに (日本の童話名作選)
浜田 広介 梶山 俊夫

偕成社 1992-12

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おっと、タイトルで言いたいことを8割方言い尽くしてしまった。
ま、そういうことです。
おわり。


・・さすがにこれではあんまりに投げやりすぎるので、もうちょっとちゃんと書こう。
今回のテーマはオトナノトモ名物(?)の名作絵本にモノ申すシリーズである。
ああこれでまた、なけなしの読者が離れるのね。哀しいような清々しいような。

東ニ難病ノ子アレバ
即座ニワンクリック募金デ応援シ
西ニツカレタ母アレバ
苦難ノ人生ノ再現ドラマニ涙ヲナガシ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行カズニメールデ死ナナクテモイゝトイヒ
北ニケンクワヤソショウガアレバ
オモシロイカラドンドンヤレトアオリ・・

かように今の時代、ネットとマスコミの発達のおかげで、自宅にいながらにして美談も醜聞もよりどりみどりに手に入る。
しかしその情報の奔流に無防備に近づいたばかりに、うっかり足を滑らせて刻一刻と様相を変える情報の波に翻弄される者、釣り師に釣られる者が後を絶たない。
かく言う私もこれまでに何度もガセネタにひっかかって馬鹿を見てきた。それどころか、未だによく釣られては、己の学習能力の無さを嘆いている。

こうした情報化社会を生き抜くための日々の鍛錬のおかげで、今やすっかり汚れっちまった私の心には、「美談と聞けばヤラセと思え」だの「醜聞の裏に陰謀在り」などと、いちいち囁く悪魔が住み着いてしまった。

そうなのだ。信じて欲しい、私だって子供の頃、初めてこの「泣いた赤おに」を国語の授業で読まされた時は感動にむせび泣いた。いやそれは嘘だ、本当はちょっと涙ぐんだ。

親友の為に自らに汚名を着せ、日陰者の人生を選んで姿を消した青おに。
その自己犠牲精神の美しさと哀しさに子供の私はクラクラしたのだった。
私にも将来、こんな友ができるだろうか。いや、私は友の為に青おにになれるだろうか。
絶対無理だと思った。
交換日記をしていた仲良しの女の子に聞いてみたら、彼女も「ムリムリ〜!」と笑っていた。
ちょっとホッとした。そしてちょっと寂しくなった。
それでも、まだ純粋さが残る時分にそんな心の揺れを経験できたのは良かったと思っている。

嗚呼、それなのに、大人って、オトナって・・・
大人になってこの絵本を再読したとき、私の心にはどす黒いモヤモヤが広がった。
なんてこった。青おには、本当にいい奴だったのか?
青おによりもずっと重い十字架を背負わされたのは、赤おにの方ではないのか?

鬼達は2人とも、もともと孤独だった。
村を捨て長い旅に出た青おには確かに孤独だろうが、今までと状況が変わったわけではない。
むしろ心の中は己を犠牲にして友を幸せにしてやったことへの達成感と満足感でいっぱいで、
足取りも軽く鼻歌もでる気分で身軽な旅を楽しんでいるかも知れない。

一方の赤おにはどうだろう。唯一の仲間を失った喪失感はもちろんだが、それ以上にこの先の彼を苦しめるのは、己の無謀な望みのために、村人を騙し親友に濡れ衣をかぶせてしまった罪悪感に違いない。
この先どんなに村人達に慕われようとも、赤おにの心が晴れることは二度とないだろう。そして誰にも言えない秘密を心に秘めたまま、己を責め続ける日々が続くのだ。
ただ人間と仲良くしたかっただけの赤おににとって、なんと酷な余生であろう。

もっと黒い深読みをするなら、青おにがこの自作自演劇を赤おににもちかけた本当の目的は、赤おにの積極性とホスピタリティを妬んだ青おにが、自分への罪悪感を植え付けることで赤おにの未来の幸せを永遠に阻もうと企んだのだ、なーんてことも考えられる。
ひえー。まさにヤラセは人のためならず、自分のため?!

いやいや、さすがにそれはないだろう。私もそこはやはり青おにの善意を信じたい。
誰かのために良かれと思ってしたことが思わぬ裏目に出てしまうことは、現実の人間社会でもよくあることだ。
結果がどうあれ、その行動の是非は、当事者たちにしか分からないことだろう。
つまりこの絵本は、何が正しいか正しくないか、どちらが良いとか悪いとかではなく、鬼の世界にも通じる人の世の不条理を描いたものなのだと私は思う。

ちなみにこの話は偕成社以外にも数社から絵本化されて出版されているそうだ。
たまたま私は偕成社の梶山敏夫の作画のものに馴染みがあるのだが、この絵本では、文章が語り尽くされた後に、見開きで1ページ、絵が追加されている。
そこには、村へは帰らずさらに遠くへと、一人で山道をどこへともなく歩いていく赤おにの姿が描かれている。

山があり、鬼が居て村人が居て・・・こってこての日本昔話風の設定でありながら、まるでフランス映画のような深い余韻の残る、この読後感。
いやー、これだから絵本の深読みはやめられませんなー。

この続きを共に語って楽しみたい方は、2/22(火)夜10時からのオンライン読書会、大人絵本会へどうぞ。誰でも気軽に参加できます。
※詳しくはこちらを参照→第19回大人絵本会「泣いた赤おに」


お気に召しましたら・・
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【世の不条理を思い知る絵本の過去ログ】
posted by えほんうるふ at 21:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 世の不条理を思い知る絵本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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