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わりと最近になって、キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」を改めて観る機会があった。
若い頃に観たときは、淡々と進む話に眠気を誘われ、半分も観ないうちにうとうとと眠りこけた。
今改めて観てみると、60年代の撮影技術でいったいどうやって撮ったんだ?と思うような映像がてんこ盛りで、公開当時に映画館で観た人の衝撃いかばかりか想像に難くない。まるでだまし絵を見ているような楽しい140分間で、寝るどころかあっという間に終わってしまった。
一般に、映像はすごいが話は抽象的で難解とも言われているようだが、若い頃クラークやディックに傾倒していた自分にはこの重さがむしろ懐かしく、心地よかった。
そしてこの映画を見終わって、真っ先に心に浮かんだ絵本が谷川俊太郎と安野光雅という最強コンビによる名作「あけるな」だった。
もしかすると、鑑賞中に私が感じた懐かしさはこの絵本のことを思い出したせいかも知れない。
なんのことはない、「2001年宇宙の旅」は、私にとっては幼い頃繰り返し読んだこの絵本の映像化だったのだ。
「あけるな」という言葉の通り、厳重に封印してある扉。映画の方も、冒頭は観る者を拒絶するかのように、ひたすら真っ暗な画面に重厚な交響曲が流れる。これはまさしく「あけるな」の警告に等しく、こちらに「みるな。やめておけ。おまえなんかに分かるわけがない」と警告しているかのようだ(笑)。
こうまで執拗に警告されると、かえって何が何でも見たくなるという観客の心理を計算されていると知りながら、私たちはまんまとそれに引っかかるわけだ。
破滅の予感はひしひしと感じるのに、開けずにはいられない。そして、目の前の扉を開ける毎に、耳をつんざくような静寂や極彩色の音色と共に広がる眼福。これこそ、まさしくこの2作品に共通する魅力なのだ。
なぜあけてはいけないのか。知ってはいけないのか。
それは、知らない方が幸せだからという大いなるものの慈悲のあらわれではなかったか。
広い宇宙の、ほんの一部である太陽系の、そのまた一部の地球上の、ごく矮小な存在である人間。
そんな生き物が幸せに暮らすなら、分相応の世界に収まっていた方が幸せなのかもしれない。
「あけるな」の表紙の扉は、重厚な煉瓦の建物についている。
私たちはその扉を一枚また一枚と開いて中へ入っていくように思えるが、ひょっとして、この扉は中に入る扉ではなく、外へ向かって出て行く扉なのではないだろうか。
だとしたら、この扉をあけてはいけない理由がうすうす分かる。
外に出るのは危険なのだ。今までいた居心地の良い空間が、閉じられた空間だったことを知ってしまうから。
閉じこめられていると感じたら、そこから逃げ出したくなるのが人情だ。
でも、外へ出たところで、結局は中でしか生きられないことを思い知るだけかも知れない。
そうして戻ってきた部屋の中は、果たして今まで通りの幸せな安住の地と思えるだろうか。
知らなければ幸せでいられたかも知れないのに…。
それにしても、「2001年宇宙の旅」ほど意味不明、理解不能と言われつつも絶賛されている映画も珍しい。
「あけるな」の書評もまた然り。お話の解釈に正解なんてないし、そんなものを求めずともこの作品の魅力は読めば分かるのだ。その証拠に、もともと1976年に発行されたこの絵本は、一度は廃刊になりながらも、その強烈な印象を忘れられなかったファンの声によって30年後に復刊したという経緯がある。私もその復刊リクエスト投票をした一人だが、投票者のコメントに物語の解釈に触れているものが一つもないのがすごい。
小説のように文章の場合はとりあえず話の流れを理解できないと読む作業自体が楽しめないが、絵本や映画のようなヴィジュアル作品の場合は「分からなさを楽しむ自由」が許されているぶん、凡人にも寛容な芸術なのだと思う。
ところで、先日より実施している「人気者になる実験」にご協力頂いた皆さん、ありがとうございました。
オトナノトモを長らくご愛読いただいている方はとっくにお気づきでしょうが、実験の成果はご覧の通り、バッチリ現れております(笑)
一応6月いっぱい経過を見てみて、私なりの結果報告(?)をするつもりですので、よろしければ引き続きご協力くださいませm(_ _)m



「分からなさを楽しむ自由」がある絵本は、しばらくしてまた読み返したくなります。
分からなさでいうと…私は疲れると長新太さんが読みたくなります(笑)。
世の中意味を見出そうとすることばかりが多いから、こういう「自由」に助けられるんです。
〜これからも、よろしくおつきあいください〜
どうもどうも。いらっしゃいませ♪
ちょっと毛色の変わった絵本ブログですがゆっくりしてって下さいね(*^_^*)
ああ、長新太さんの世界もいいですよねー!
まさに「わたしのすきなおじさん」なんですよ。
疲れたらとりあえず「つみつみニャー」と唱えてみるとか、効きそう(笑)
こちらこそ、どうぞよろしくです♪
ついでに、アシモフなんてのは?(^_^)
私はこちらの映画館が一つ閉館になる際に
いくつか昔の映画が上映されたのですが、その中の一つが
「2001年宇宙の旅」でした。
友達はものの五分で熟睡。私は映画館で見るのが楽しみで見た覚えがあります。それは度迫力でしたよ〜〜。
この「あけるな」の絵本は確かに気になるし、
拒絶や否定をされると関心が高まる絶妙な心理をついてますね。私も気になった一人ですが‥(笑)
アシモフは、何故かあんまりご縁がなかったですねー。多分、図書館でちょっと棚が離れていたからでしょう(笑)
2001年を映画館で見たのは楽しかったでしょうねー。
映画好きなのにあまり映画館へは行かない私ですが、この作品は大画面向きですね。
トリップできそう♪
こっそり訪問派でした・・・
ところで この『あけるな』気になっていたのです。
読んでみようかしら〜。
「分からなさを楽しむ自由」を ゆったり楽しみたいと思います。
お気に入りにブログに入れていただき ありがとうございました。嬉しいです。
これはようこそいらっしゃいました。
こっそりでも光栄です(*^_^*)
あけるな、いいですよ。
当ブログをお読みになって自分が読もうと思って買ってみたら、お子さんが夢中になってしまったという方もいました。
解釈の自由は万人に等しく与えられた幸せです♪
オトナノトモへようこそ。
コメントありがとうございます。
うっかり頂いたコメントを見逃していたようで、今頃気がついたので
もうごんたろうさんがこの返事をご覧になることもないかもしれませんが・・
ごんたろうさんの解釈も、なるほどすんなりはまりますね。
この作品に限らず、人によって解釈が全然違ってくる自由さのある絵本が私は大好きです。
面白い作品を見つけたら是非教えてくださいね。